第十話 謎の影
ーーーとある場所
赤い絨毯の敷かれた廊下の様な所に、3つの影。
一つは、人間に昆虫が混ざった様な姿の大柄の男。
もう一つは……
「生き残りを何で殺してこなかったのさ!!」
そう怒りを露わにしてヒステリックに叫ぶのは、背中に半透明の4枚の羽を持ち、顔にはまだあどけなさの残る蜂の様な少女……
「生き残りとは決まった訳ではない。
それに……殺すにはまだ惜しい。」
そう、無表情のまま、ぶっきらぼうに言い放った男。
「はぁ、これだから筋肉バカは……」
「だったら、貴女が殺してくればいいじゃないですか」
今まで黙っていた、最後の影ーー6本の腕を持つ、細身で長身、長髪で顔立ちの整ったの男ーーが少女に向かってそう言い放った。
「おっ! それ良いねぇ♪
最近、殺し足りなくて退屈してたんだよ。
筋肉バカの尻拭いは嫌だけど、優しい私が殺してきてあげるよ♪」
そう言って、意気揚々と窓の外へ飛び出そうとする少女。
「貴女も十分、馬鹿ですけどね」
そんな聞こえるか聞こえないかのギリギリの大きさで呟かれた言葉は、少女を引き止めるには十分だった。
「ん? 何か言った?」
少女は窓枠に掴まりながら、細身の男の方へ振り返った。
その時、糸を伝って降りてきた蜘蛛が、少女の背中ーー羽と羽の間ーーに引っ付いた。
「いえ、何も」
眉一つ動かさずに、平然とした顔で、そう言ってのける細身の男。
「? まあいいや」
そう言うと、蜘蛛を付けたままの少女は外に向けて飛び出して行く。
それを見送った細身の男は、ほんの一瞬だけ口角を上げると、元の澄ました顔で大柄の男の方へ向き直る。
「所で……装置の方はどうでしたか?」
「見つけはしたが、使われた形跡があったので破壊しておいた」
「となると、やはり生き残りではなく…………」
そう呟きながら、顎に手を当てて考える素ぶり見せる細身の男。
「おっと、私も用が出来たのでこの辺で……
では、主への報告は任せてましたよ」
そう言うと細身の男は足早に廊下を歩き始める。
そして、大柄の男は何も言わずに、細身の男とは反対方向に歩を進めた。
ーーーそして、星のよく見える丘
タマ色に染まることが出来た私は引き続き、神楽さんの師事を仰いでいた。
「それでは、次はその力を使う訓練じゃのぉ」
訓練と言われても、何の実感も無いから、何すれば良いのか分からないなぁ……
とりあえず、聞いてみよう。
「何から始めればい「ふっかーつ!!」
突然、私の声を遮る様に雄叫びが聞こえる。“復活!”とか言いながら復活する猫、初めて見たよ。
そんな事を考えながら、私は声の主ーーミケの方に体を向けようとした。
「みゃーこ様!! さあ、愛し合いましょう!!」
「ひゃっ!」
突然、ミケに抱きつけれて変な声を出してしまった私。
元気が良いのは良いけど……ミケさん、心臓に悪からやめて下さい。
それに、流石に愛し合うのは無理ですよ……
まあ、でもさっきは少し可哀相な事になってたからなぁ……
そう思い、頭を優しく撫でてあげる。
「流石に今はできないで「アッーーーーー!!!」
そんな好意を無にする様に、私の声を遮って又しても変な雄叫び
前にもあった気がするんだけど、デジャヴかな? かな?
「みゃーこ様の目の色! 赤くなってます!!」
突然目が赤いなんて言われたら寝不足か花粉症か……そんな想像をしてしまう所。
原因はピンときたけどね。
「へぇー、タマ色に染まったことで、そんな変化があったんだね」
そんな、私が何気なく言ってしまった言葉。ミケが聞き逃す筈もなく、私の胸の辺りまで“バッ!”とジャンプして掴まって来た。
「なっ?! 私と言うものがありながらっ!!
浮気ですか?! 浮気なんですか?!」
私の顔の目の前で目を見開いて、必死の形相でそんな事を言ってくるミケ。
目がすごく怖いです……
「近い近い!!」
「私じゃダメなんですか?!
今からでも遅くはないです!!」
「でも、ミケ色に染まったら、猫になっ成っちゃうし……
またタマに怒られるよ……?」
その言葉を聞いたミケは、一瞬ハッとした顔をしたと思ったら
次の瞬間には手の力が抜けて、地面の方にジリジリ落ちて行ってしまった。
「ミケ……?」
落ちたミケにそう声をかけたが、ミケは小さい声で、“熱いの怖い……熱いの怖い……”
そんな事をブツブツと呟きながら頭を抱えて丸く縮こまって居た。
そんなにタマが怖いのか……
そう思ってタマの方を見たが、苦笑いを浮かべながら呆れている。
これで、訓練できるし、まあ良いか。
ミケはちょっと可哀想な気もするけど……
私は 、そんな事を考えながら、カタカナ震えるミケを瞥見すると、タマと同じく苦笑いしている神楽さんの方に体を向けた。
「神楽さん、騒がしくて、すみません……
訓練の続きをお願いしても良いですか?」
「勿論じゃ。とは言え、後は桜お嬢さん次第だがのぉ」
そう答えながら少し困った顔を見せる神楽さん。
そんな言葉に私の頭にはハテナマークが浮かんできていた。
「私次第……?」
「まずは、邪念を捨てて自分の気を、感じる事じゃ。一度やって見るとよい」
邪念を捨てて……?
よく分からないけど、取り敢えず、剣道の前後にいつもやってる黙想をすれば良いのかな……
そう考えた私は小慣れた感じで、草の上に胡座をかいて座ると、体の前で手を重ね、目を閉じる。
………………
………………
……うーん……自分も気……
……何も………感じない……
………………
………………
……某漫画の………
……スカウター……
……欲しいな………
………………
………………
……それに……しても………
……黙想って……暇……なんだよね……
普段から黙想をやり慣れてるせいで、そんな余計なことばかり考えてしまう。
……早く……黙想終わらないかな……
……って、これは……私が出来るまで……
……終わらないのか…………
「カーーーーーツ!!!!」
バシッーーーーーーー!!!
そんな大きな声と気持ちの良い叩く音、そして頭に軽い痛みが走った。
「ふぇ?!」
突然の事に驚いて、変な声を上げてしまった私。目を開けるとそこには……
「みゃーこはん! 雑念多すぎや!!」
そんな事を言う、ハリセンを持ったタマが居た。
ってハリセン!!!
ハリセンを見て、すぐにハッとなり
鼻の下のあたり、髭のあった場所を触ると……
「みゃーはん……心配せんでも、これは普通のハリセンやで!」
完全に私の心を見透かしたタマの絶望的な一言……
「ですよねー」
肩を落としながら、そんな感情の篭ってない言葉が出てしまう。
「みゃーこはん!
そんな事は良いから、さっさと黙想再開しいな!」
私を睨む様な眼つきをした怖いタマさん、そう促され、再度黙想を始めるが……
“喝!!”は座禅で、黙想には必要無いんだけどなぁ……
などと無駄な事を考えたり
途中で膝の上にミケが乗ってきたり
それに怒ったタマがミケを脅したり
何だかんだあって、その日は最後まで自分の気を感じる事は無かったそうな。
めでたしめでたし。
「って、めでたく無い!!」
「カーーーーーツ!!!!」
バシッーーーーーーー!!!
次回更新は土日に出来ると思います。




