表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
二章
22/46

第一話 虫の国


今回から二章開始です。




 何も無く、音すら聞こえない

 そんな真っ暗な場所に私はいた。


「ここはどこだろう……」


 辺りを見回して見ても何もない。

 私は目を瞑り、少し記憶を遡っていた。


「あ、そうだ……私、負けたんだ」


 負けたと言うのも烏滸(おこ)がましさを感じる程の敗北。

 今思い出しても悔しさすら感じない、圧倒的な力量差。


「あんなの私に勝てるわけがないじゃん……」


 私の心は完全に折れてしまっていた。


「幸せだと思った世界。夢だった世界……

 でも、ここも違ったんだ……」


 そう頭の中で、自分の心に呟く様に


「あの後、私、死んじゃったんだろうな。

 それなら、もういいか。

 もう……考えなくて……済む……」


 そんな諦めの言葉を呟いた


(貴方はいつもそうね)


 そんな時、突然、頭の中に響く女性の声


「誰っ?」


(いつも、周りのせいにして

 いつも、諦めて

 いつも、都合の良い方に逃げて

 いつも、それの繰り返し)


「うるさい!! 貴方に分かるわけないじゃん!!」


(元の世界からも逃げ

 そして、この世界からも逃げる)


「うるさい! うるさい!」


(ミケはどうするの?

 タマはどうするの?

 本当にそれで良いの?)


「黙って! 黙れ! 黙れ!!」


 もう……嫌だ……なんで私ばかり……


(逃げてるから。自分に、全てに、諦めてるから)


「うるさい! 黙って!!

 貴方は誰なの!!

 私の何を分かるっていうのよ!!」


(何でも分かるわよ)


「何で! そんなわけないじゃん!!」


(本当は色々したい事だってある。

 可愛い服だって着たい。

 後輩に慕われる先輩になりたい。

 誰かに愛されたい。

 もっと強くなりたい。

 今だって、アイツを倒したい。

 でも、自分に……全てに……諦めてる)


「私には無理だもん!!!」


(じゃあ、終わりにする?)


「終わりにする」という言葉は私の胸に強く突き刺さる。

 嫌だ……考えたくない……そんな事考えたくない……


「誰なの!!

 貴方は誰なの!!!

 もう消えてよ!!!

 私に嫌なことを考えさせないで!!!」


(本当は分かってるんでしょ?)


「知らない! 知らない!!!」


(ふふっ、もう少しお話していたいけど

 そろそろ、終わりの時間ね。

 じゃあ、最後に一つ)


「どっか行って!!

 さっさと行け!!!!!」


(本当に、要らなくなった時は……)



(私が貰うからね)



 「えっ?!」


 そこで私は目が覚めた。初めに見えたのはゴツゴツとした岩の天井。前に見た遺跡とは違う、洞窟のような場所だった。


「お嬢さん、目が覚めたのかのぉ」


 突然、洞窟内に低い声が木霊した。


 私は状況を確認する為に体を起こしたが、お腹の辺りから鈍い痛みが私を襲ってきた。


「イツッ……」


「あまり無理しない方が良い。応急処置はしたが、骨が折れてるからのぉ」


 低い声で優しく、そう語りかけながら、私の方に歩いてくる謎の人物。


「貴方が助けてくれたんですね。ありがとうございま……すぅ?」


 お礼を言いながら、声の主を見て思わず変な声が出てしまった。

 全身灰色の短い毛に覆われた、2メートルほどもあろうかと言う程の大きく丸い体格。

 ただ尻尾が長く細く、顔は鼻先が長く、ヒゲが何本か横に伸びている、ネズミの様な……


「どうかしましたかのぉ?」


 変な声を出した後、顔や体をマジマジと見ていたからか

 不思議そうな顔をして私の事を見ている熊鼠さん(仮)。

 

「い、いえ、何でもありません……所でここは何処でしょうか?」


「ここはワシの家じゃよ。猫の町に買い出しに行ったら、門の近くにお嬢さんが倒れておったから連れて帰って来たんじゃよ」


 町はあんな状態じゃったしな。と付け加えながらそう教えてくれた熊鼠さん。


「それはありがとうございました。えっと……」


 熊鼠さんじゃ失礼だし……なんて思いながら名前を聞こうと思っていると


「ワシの名は神楽(かぐら)じゃよ」


 熊鼠さん改め、神楽さんの方から教えて来てくれた。


「私は桜 都子です。

 神楽さん、助けていただいて、ありがとうございました」


「桜お嬢さんじゃな」


 苗字で呼ばれるのもなんか久しぶりな気がするなぁ……なんて考えていたが

 私はそこで、重要な事を思い出した。


「ミケとタマは?! 

 猫が二人いませんでしたか?! イツツッ……」


 そう自分の体の事を忘れてつい声を荒げてしまう私。声が響いたのか、お腹のあたりーー鳩尾がズキズキと痛みを訴えて居た。


「ほれほれ、言わんこっちゃない。それにワシは猫を見ておらんよ」


「そう……ですか……」


 それは私の望む回答ではなく、今すぐここを出て確認に行きたい。


 そんな気持ちに囚われたが、体を起こす事も満足に出来ないこの体。

 そして思い出すあの時の恐怖。


 私は伏せ目がちに俯く事しか出来なかった。



「所で、桜お嬢さんは何であんな所で倒れておったのかのぉ?」


 私が俯いたまま黙ってしまっただろうか。

 今度は神楽さんの方から私にそう投げかけてきた。


「それは……」


 私は、今までの事を要約して話をした。


 ミケの父親からの依頼の事

 純白の玉を取りに行った事

 戻って来たら町があの状態だった事


 そして、現れた男の事


 私が全て話し終えると、静かに、時折目を瞑って考え込んだりして聞いていた。


「色々と聞きたいことはあるが……」


 そう前置きした後で神楽さんは急に立ち上がり、

 機械?の様な物が色々置かれている棚の方へと向かい、一本の茶色をした刀の様な物を手に取った。


「勇者の剣というのは、これの事かの?」


「えっと……盗んだ犯人……ですか……?」


 突然、目の前に当初の目的の物がそこにあり、かなり間抜けな質問をしてしまった。


「猫の方から ”どうぞお納めください“ と

 半ば無理矢理、渡されたんだがのぉ」


 そう言いながら、苦笑いを浮かべる熊鼠さん。


「………………」


 聞いてる話と違いすぎて、言葉も出ず頭が痛くなって来た私。


「これは、桜お嬢さんが持っておくと良い」


 そう言って手渡された、茶色い勇者の剣。

 刃はない様だが凄く軽く、柄の部分は手に吸い付く様に持ちやすい。


 ただ、何故かお腹が空いてくる様な、とても良い香りがする……


「もしかして……これって鰹節じゃ……」


「その様じゃの。渡される時、出汁にでもして下さいとか言っておったからのぉ」


 まあ、使わんかったがの。と付け加え、再度苦笑いをする神楽さん。

 私は呆れて何も言えず、釣られて苦笑いをするのが精一杯だった。


「まあ、それはどうでも良いが……」


 そう話の流れをぶった斬って真剣な表情を浮かべる神楽さん。私もつられて真剣な表情になる。


「その男は、ここからずっと東、海を越えた先の大陸にある

 虫が支配する国の者じゃろうな」


「虫……の支配する国……」


 初めて聞く単語にそれ以外何も言えなかった。

 知らなかった。いや、都合の良い部分だけを見ていて、知ろうとしていなかっただけだ。


 この世界に来て、楽しい事ーー目先の事ばかり見ていて、何もしようと、何も知ろうとしなかったのだから。


 そう考えながらも、逃げたい。戦いたくない。と思っている自分も居る。

 あの男が最後に言っていた、


 次会うのを楽しみにしているぞ


 と言うセリフ……とても怖く……押しつぶされそうになる。


 ベチャッ!


 そんな時、不意に何かが落ちて来た音が聞こえ、私は音のする方を見た。


 座った状態では良く見えないがそこには、台の様な物の上にお皿があり

 その上の天井には穴が開いているのが見えた。


 穴から何かが落ちた音なのだろうか?

 そう考えていると


「ふむ……誰か来た様じゃな。

 ちょっと行ってくるので、桜お嬢さんは待っていてくれるかのぉ」


 そう言うと神楽さんは立ち上がり、洞窟の入り口?の方に向かって歩いて行った。


 その背中を見送り、一人残されてしまった私。


 一人になり心細くなったからか、私の頭の中を

 今置かれている現状、今後の事、虫の国、そして……あの男の存在……

 私にとって絶望にも等しい事が()ぎる。


 こんな時にミケにいて欲しかった……


 気が付けば私は、ため息を()いていた。






次回更新は3連休中を予定しています。


2018/02/10 誤字脱字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ