第九話 家族deお風呂
「本当、どこに行ったんだあの暴走娘は……」
ミケの走り去って行った方向へと歩いていた私とタマ。
「全く、人の家をなんやと「にゃぁぁぁぁーーーーーー!」
そんな時、ミケのものらしき悲鳴が響き渡る。凄く嫌な予感がする……
「行こう! 手遅れになる前に! 家が……」
そう言いながら声が聞こえた方に走り出す私。
「はぁ……」
タマも大きなため息を吐いた後、私に付いてきた。
そのまま声のした方向に歩くと大きな声が聞こえてきた。中庭で誰かが争っているようだ。
「鯉の分際で! 猫様に逆らうとは何という狼藉者ですか!! 切り捨てますよ!」
中庭に着いて見えたのは、そう言いながら魚類と本気で喧嘩しているミケの姿。
人の家の鯉を切り捨てて刺身にでもする気なのか……
あ、尾びれで往復ビンタされた。
「2度もぶった! 親父にもぶたれた事無いのに!!」
なんでミケがそのネタを……まあ気にしないでおこう。
「何やってんの……あれ……」
「鯉をいじめるんちゃうかな……」
そんな格闘を唖然とした顔で見守って居た私達。ミケは鯉との熱いバトルの末なんとか勝てた様だ。
「あ、みゃーこ様! 私! 勝ちましたよ!!」
私たちに気が付いたミケは、鯉を口に咥えたまま片手を天高く上げ、勝利報告。
猫が魚に負けてどうするんだ……そもそも、水に濡れるの平気なのか……
「目的見失ってるよね……あれ……」
「せやな」
「止めようか……」
「せやな」
タマは呆れて「せやな」しか言えなくなっている様子。
仕方ない……私が止めるか……
「ミケ!! それ風呂やない! 池や!」
「へ……?」
驚いた表情で、辺りを見渡すミケ。
「だから、早くこっちに戻っ「ごめんなさい! 間違えました!! 次こそ大丈夫です!!!!」
人のセリフを遮り、鯉を放置したまま、家の中に走り去って行ったミケ……
「………………」
「ミケはんは、人ん家の鯉をなんやと思ってんねんやろ…………」
「「はぁ」」
疲れ果てて、ため息が止まらない二人。
「にゃーーーーー!」
そんな時、早速次の事件の合図が辺りに木霊した。
「またか……次は何をやらかしたのか……」
「正直、ウチの家では勘弁して欲しいんやけど……」
重い足取りで、嫌々ながらも悲鳴の聞こえた方に再度歩き出す私達。
次の事件が起こったのは可愛いデコレーションが施された障子の向こう側様だ。中ではバタバタと大きな音が聞こえている。
正直みるのが嫌だけど仕方ない。
そう、意を決した私が障子を恐る恐る開けると、そこには
「お姉ちゃん遊んで!遊んで!」
「尻尾噛んでいい?」
「お腹トランポリンみたい!」
真っ白な子猫が三匹と、一匹には髭を引っ張られ、もう一匹には尻尾をガジガジされ、最後の一匹にはお腹の上で飛び跳ねられているミケの姿。
「誰?」
「こやき、このみ、くしか、ウチの妹やで」
「放置でいいかな?」
「ええよ」
ミケへの対処は決まった。私たちは何も見なかった。あれは子猫に囲まれて幸せなんだ。
そういう事にして障子をゆっくり締め始めた。
「待って下さい! 助けてください!」
泣きそうな顔で私たちに助けを求めるミケ。
ちっ、気付かれたか……
なら仕方ないと、一旦閉めるのを辞めて、ミケに言い放った。
「自業自得だし」
私はそう言い終わると閉めるのを再開する。
「待って! 待って!」
「何?」
「助けてくださいよ!」
「ごめん。無理。って言うか、そもそも何でここが風呂だと思ったのか……」
「私の風呂アンテナがここだと告げたのです!」
「役に立たないアンテナ……」
そんな会話している間も子猫に虐められるミケ。既に髭は蝶々結び、尻尾は丸結びになって居た。
しかし良く見ると、いや良く見なくてもこの子猫たちは可愛い。
猫ってだけでも可愛いのに、子供って付加価値を付けたら、それは既にチートだ。世界を征服することすらできる。
そう確信した私は、子猫と遊ぶ……いや、私の可愛いミケを助けるために一肌脱ぐことにした。
ゆっくりしゃがみながら、優しい頬笑みを子猫達に見せる。
「ねぇ、お姉ちゃんと遊ぶ?」
「「「あ、いや。結構です」」」
「敬語で即答?!」
「はいはい!終わり終わり!!ええ加減に寝えや!!」
「化け猫が怒った!!」
「誰が化け猫やねん!!」
キャー!!とか言いながら、蜘蛛の子を散らす様に離れて行ったタマシスターズ。
「遊びたかったのに……子猫に囲まれて幸せに暮らしたかったのに……」
そんな中、私は子猫に即答にショックから立ち直れないで居た。
「みゃーはん……猫ってそんなもんや」
そんな様子を見ていたタマの慰め?の一言。
まあ、猫ってそんなもんか……少し気を取り戻した私はミケの方を見た。
「って、あれっ? ミケは?」
「はぁ……勘弁してや……」
大分どうでも良くなってきたが、ここはタマの家……仕方ないので、ミケを捕獲するべく外に出て探すことにした。
「みゃーこ様!! 遂に見つけました! こっちです! こっち!」
部屋の外に出て直ぐ、ミケの声が木霊した。
「人の家で何を大声出しているんだ……行きたくないけど…………行く?」
「…………せやな」
やっと事件が終わるのか……いや、これは事件の始まりか……そんな事を考えながら、私達はミケの方へと向かった。
満面の笑みをしたミケは裏庭に居た。
その隣に置かれているのは……鏡割りとかでみる酒樽っぽい物。
「みゃーこ様! 私やりましたよ」
ミケは久々のドヤ顔をしながら私に酒樽を見せてくる。
私が入るには、若干いや、かなり小さいね……
「うーん……それじゃ無いんじゃな「それや、それ。やっと見つけたんか……もうこれ以上、家を荒さんといてな……」
ミケに否定しかけた言葉は、タマの衝撃の一言に遮られた……
「えっ? これなの?!」
「せやで。これならみゃーこはんでも足湯できるやろ?」
「えっ……? お風呂って足湯……?」
なにそれ? 女子高生のサービスショット的な何かじゃ無いの……?
そう混乱して意味のわからない事を頭の中がグルグル回っている私。
「せやで? それ以外、なにがあるんや?」
猫は濡れるのが嫌いなはずだからおかしいとは思ったんだけど……まあ仕方ないか……
それに、ミケもタマも私の事思って探してくれたんだし……
そう気持ちを切り替えた私は、背筋を伸ばして、ミケとたまに満面の笑みを見せた。
「二人ともありがとうね!」
「はい! みゃーこ様! じゃあ早速綺麗にしますね!」
そう言うと早速、ミケは形代と水筒を用意し、精霊術を使い始めた。
「限精霊術 水式 水簾!!」
ミケがそう唱えると、樽の上から大量のみずが、滝の様に溢れ出てきた。
水圧でどんどん綺麗になって行く酒樽……でも、ちょっとやり過ぎな気が……
「ミケはん! ストップ! ストップ! それ以上やったら、家が水に沈むわ!!」
慌てて止めに入るタマ。
「あ、みゃーこ様の為だと思うとつい……」
「まったく……まあええわ。さっさとお湯作ってまうで」
その光景を母親の様な気持ちになりながら見守る私。
今度はミケとタマがそれぞれ精霊術の準備をし、お互いに片手を繋いだ。
「じゃあ、行くで」
「はい! 任せてください!」
手を繋ぎながら目を瞑り瞑想を始める二人。
辺りには、水色の光と赤色の光がそれぞれミケとタマから溢れ出て行く……その光景は夕日に照らされた海の様な暖かく、どこか冷たいそんな光景にみえた。
そんな色がだんだんと溶けて混ざり、一つの色になって行く。
「「合精霊術 火水式 温湯!」」
そう唱えられたと同時に、先ほどと同じ様に樽の上から再度、湯気の出ている水が溢れて、樽の中に水が溜まっていった。
「よし! 完了や!」
「みゃーこ様! どうぞ、入ってください!」
ミケは国唯一の水式使いでタマは国一番の火式使い……何と贅沢な足湯……
それにそれだけじゃない。二人が私の事を思って用意してくれたのだ。嬉しくないはずがない。
私はそんな二人を労うために、二人の近くに行き、二人を引き寄せて、ギュッと抱きしめた。
「二人とも、本当にありがとうね」
「みゃーこ様……」
「別に……ええで」
うっとりとしているミケと気恥ずかしそうにしているタマ。やっぱりどっちも大切な家族。
「よし!三人で入ろうか!」
そういうと、私は近くにあった木イスを持って来て、三人で入ることにした。
三人横に並んで足湯浸かる。そんな幸せな時間を過ごしながら、今日も更けていった。
次回更新は一週間以内の予定です。
※前回同様、いつもより期間が空きます。
2018/03/01 誤字脱字修正




