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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
一章
16/46

第六話 嫁と嫁の嫁


「ここが隣の村ですよ」


 今は夕方より少し早い時間、私とミケは隣の村の入り口の前に立っていた。


 入り口とは言っても、村の周りは木の柵で囲まれているだけ。その木の柵すらも、私なら、跨ぐだけで超えられそうだった。


「村っていうか……集落?」


 反対側の入り口がすぐそこに見えてるし、家とかお店ぽいのとか、全部合わせても10軒ぐらいしかなさそうだし。


「なんて事を言うんですか! 失礼ですよ! そもそも、この村が出来たのは…………」


 なんかミケのやる気スイッチを押してしまった様で、有難そうな話を熱く語り始めてしまった。


 うん。今は聞く気分じゃない。


 そんなミケをよそ目に、私は村の中心あたりを見ていた。

 まあ、家が少ないおかげで目的地っぽいのが、よく見えてるから良いんだけどね。


 その中心地から向かって左側に目をやると、そこには、神殿?というよりは、お寺っぽい大きな建物が立っているのが見える。


 まあ、大きいというより、あれが私の知ってる大きさなんだけど。

 こっちの世界の家、私の背丈よりちょっと大きいぐらいのサイズだしなぁ……


「ってみゃーこ様! 聞いてましたか!?」


 そうこう考えてる内に、ミケの有難いお話は終わった様だ。


「うんうん! 聞いてた! 聞いてた!」


 聞いていなかった私はミケの方に視線を戻しながらミケに笑顔を見せた。


「本当ですか??」


「うん! 聞いてたよ! よし! じゃあ早速、目的地に行こう! 私に任せて!」


 ぶっちゃけ、聞いてませんでした!


 とは言えないチキンな私。

 ミケをその場に置いて、お寺みたいな建物に向かって走り出した。


「って、みゃーこ様! 待ってください!」


 待ったら怒られるから待てないよ! と心の中で返事しながら、走っていた。


 ただ、規模が小さい集落に、猫足での全速力、あっという間に目的地の目の前まで到着した。


 そして、私は石段の下からその建物を見上げていた。


 朱色に塗られた丸い柱に、私が手を伸ばしても届かないぐらい高い天井。その天井に使われている木まで赤く朱色に塗られている。


 なんだろう。この既視感は……


 そして、ふと視界の隅に目をやると、猫の石像が石で出来た台座の上に置かれていた。

 それだけだと「まあ、猫神殿だし」で終わっていただろうが、そうは行かなかった。ボロボロになってはいたが、その石の猫は左手を上げていたから。


 あれってもしかして……そう思って近づこうとした時、後ろからはミケの声が遠くから聞こえてきていた。


 あ、ミケが来るまでにさっさと交渉を始めなきゃ! 面倒くさいことになる!


 そう考えた私は、歩く向きを階段の方に戻し、階段を昇って、建物の屋根の下に入った。

 扉代わりの障子は空いていて、薄暗く中が見える。

 奥には一匹の巫女服ぽい物を着た白い猫、その手前には白い猫を取り囲む様に6匹の猫が座っていた。


 そういえば、なんて言えば良いんだろう…………まあいいか、時間ないし。


 作戦名、後は野となれ山となれ!


 そう意を決した私は、建物の中に入って叫ぶ様な大きな声を出した。


「すみません! 純白の玉をください!!」


 …………


 静まり返る猫たち……

 一番奥にいる猫が見据えるかの様に、じっと私の目を見ている。


 そして見つめ合う私と一匹の猫。


 右目が黄色、左目が水色のオッドアイ。それに、あの手足が短い感じはマンチカンかな? 可愛いなぁ。


 そんな事を考えて私は少しニヤついてしまっていた。

 おっと、いけない、いけない!っと表情を戻した瞬間


「分かりました。では、こちらにどうぞ」


 そう言うと立ち上がり、私を別の部屋に案内しようとするマンチカン。


「みゃーこ様! 置いてくなんてひどいですよ!!!」


 そんな時、大声を出して激おこミケさんが現れた。


 8つの視線がミケに集中する。


「え? あ……ごめんなさい……」


「では、こちらです」


 視線に耐えきれなくなったミケと、何事もなかったかの様に再度、歩き始めるマンチカン。

 私もその後に続いて歩いた。


(いったい、どう言う事なんですか!?)


 小走りで追いついて来たミケが小声で抗議の声を上げてきた。


(どうもこうも、純白の玉を貰いに来たんだけど?)

(へ? そんなわ「着きましたよ」


 強制的に話を中断されて、着いた所は、天井が高く、床が無垢材で出来た、広い部屋。


 なんか、部活で使ってた道場にそっくり。


 そんな事を考えていると、マンチカンがロウソクと形代を持って何かの準備を始めていた。


 え、あれって……


 と思った瞬間


「限精霊術 火式(ひしき) 焔纒姿(ほのおのてんし)


 そう唱えるとマンチカンの体に炎が(まと)わっていた。


 なんか変な流れになってる気が……


「ただでは渡せんで! 欲しいなら力尽くで奪ってみ!」


 そして突然の関西弁……


「えっ? さっきまで普通に話してたのに……」


「猫被ってたに決まってるやん。何言ってんねん、自分」


 猫でも猫被るのか…………


 まあいいか。

 いや、今回は良くない。

 熱そうだし近づきたくない……

 そもそも猫を殴るとか無理だから……


 そんな事を考えていたら……


「なんや! そっちから来んのなら、こっちから行くで! 何なら二人掛かりで来てもええで!」


 そう言うや否や、既に私の懐近くまで来ていた燃える猫。

「早っ!」と言う暇もなく、繰り出される猫パンチ!


 パンチ自体の威力は大した事なさそうだが炎を(まと)った猫パンチは私には十二分に脅威だった。

 

 私は竹刀をまともに構える暇もなく、竹刀を逆手に持ってガードした。それだけでも熱気が伝わってくる。


「いきなりすぎるでしょ!」


「先手必勝! でも自分、なかなかやるやん!」


 そう言いながらも、回し蹴りを繰り出してくる。


 それを私は、バックステップで避け、竹刀を構える。


 構えた所で猫は殴れないんだよねぇ……何か方法があればいいんだけど……


 そんな気配を察知したのか、間合いを離し、私を警戒していたマンチカンは再度攻撃に出た。


 左右上下から繰り出される燃える猫パンチと猫キック。

 それを私は竹刀でそらしたり、足捌きで避けたりしながら応戦していた。


「やっぱり、あなたを殴れない!」


「何や! 手加減なんかしてたら、やってまうで!」


 さらにスピード上げる炎のマンチカン。


 でも、スピードが上がっただけで、さっきと変わらない!

 そう思い、左からの猫パンチを竹刀でそらそうとしたが、それはフェイントだった。


 えっ……と思った瞬間、燃える回し蹴りが私の利き手の手首に命中した。


 キックに威力自体は大した事は無かったが、思わぬ熱さに手の力が緩んでしまった。

 しまった! と思った瞬間には、竹刀を弾き飛ばされていた。


 床に落ちた竹刀の音が無情にも部屋の中に響く。


 数メートの距離で見つめ合う、私と燃える猫。


 そして、その燃える猫は一瞬笑みを浮かべ、


「これで、(しま)いや!」


 そう言いながらこっちに駆け出そうとしていたが、その瞬間


「起精霊術 水式(みしき) 水掛(みずかけ)!!」


 ミケの声が聞こえた瞬間、燃える猫の上からバケツをひっくり返した様な水が降り注いだ。

 唖然としている、私と鎮火した猫。


「みゃーこ様! 今です!!」


 その声と共に二人とも活動を再開する。


 普通の猫なら怖くない!


 私は、大きく手を広げながら素早く懐に飛び込む。身構えるマンチカン。


 そして私は、全力で叩いた。マンチカンの顔

 ……の目の前で、両手を。


 そう、相撲の技、猫騙し。


 相撲でも相手の隙を作るだけの、決して決まり手になることの無い、この技。


 今回もマンチカンに一瞬の隙ができた。


 いける!


 私は、叩いた手を再度広げ、マンチカンに抱きついた。

 そしてそのまま……尻尾を触る。


「じ、自分、いきなり何すんねん!

(くすぐ)ったいって! ほんまに、あかんから!」


「殴れないけど、愛でるのは有り!!」


 そのまま、3分ほど堪能していた所、ミケが


「あれ? もしかして、浮気ですか? これって、浮気ですか?」


 と、目の笑ってない笑顔で近づいて来たので、すっぱり辞めました。

 名残惜しいとか思ってないよ!


 その後、マンチカンさんは「約束したし、しゃーないな。準備してくるからちょっと外で待っててな!」と言って、そのまま奥に引っ込んだ。


 そう言われて、外で待っている私とミケ。


「無事、純白の玉を貰えそうだね」


 そう、ミケに話しかけると、ミケは大きくため息を付いていた。


「はぁ……だから、ここ猫神殿じゃないですよ……? さっき、教えてたじゃないですか……」


 え? さっきって……あ、あの時熱く語ってたやつか……


「え……っと……はははっ……あ、そういえば! あれって何なんだろうね……!」


 そう言って、さっきの見かけた猫の石像を指差す。


「………………それも、さっき教え「これはイザニャミ様やで」


 ミケの会話を遮ったのは、顔を見るまでもなく、さっきのマンチカン。


 でも、これも教えてくれてたのか……流石に悪いことをした。


「ミケ、ごめん。さっきはちゃんと聞けてなかった」


「もう……そうならそうと言ってくれれば良かったのに」


「まあまあ、そない喧嘩せんと、仲良うしようや!」


 無視された形になって、再度会話に割り込んで来たマンチカン。


 仕方なく、私とミケは、声の方を向いた。

 何故か、大きな風呂敷を持っている。


「ん? 何で大きい荷物持ってるの?」


「なんでやねん! あんたが、ウチの誕生日会やってた途中に割り込んで、家族の前でウチの事を欲しい言ったんやないか!」


 意味が分からずに、首を傾げている私。


 あれって誕生日会だったのか……

 まあ、それは置いておいて……


 私あの時なんて言ったっけ……純白の(タマ)くださいだっけ……?


 あ……仕様もない事思いついた……


「えっと、ちなみに、あなたのお名前は……?」


「何言ってんねん! タマに決まってるやん!」


「なんでやねん!!」


 思わず、ツッコミを入れてしまった私。


 いつの間にか娘さんを下さいデビューしてた件について。


「お! なかなかのツッコミやん! これから(つが)いになるんやし、仲良くしような! みゃーこはん!」


「それはダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 今まで静かだと思ったら固まっていたミケ。そして再起動直後に大絶叫していた。


「みゃーこ様は、私のみゃーこ様なんです!! 私が先に(つが)いになったんです!! 私の物なんです!!!」


 そう言いながら、タマに詰め寄るミケ。

 正直、今までで一番怖い。


「ええやん、ウチは気にせえへんで? それにミケはんとウチもこれからは(つが)いやし!」


「「へっ?!」」


 思わぬミケとも(つが)い発言に、変な声がハモるミケと私。


「みゃーこはんとミケはんでウチの事倒したやん? 二人ともウチと(つが)いやん?」


 うーん……筋が通ってる様な通ってない様な……

 まあ、猫だし、可愛いから……私は良いけど……と思い、ミケの方を見ると


「えっ? 私とも(つが)い? それなら家族だし別に……いや、でもタマさんメスだし……」


 肯定しつつも、パニクっていた。

 でも、ミケさん。私も女なんだけどね……


「じゃあ、これから、3(ひき)で仲良うしような! みゃーこはん! ミケはん!」



 こうして、私には2人目の嫁と、嫁の嫁が同時に出来ました。





新キャラ登場会でした。


次の更新は、2、3日中を予定しています。


2018/02/04 脱字修正

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