第四話 闇の中の光
「み…………さ……!おき……ださい………こさま!!」
とおくで、こえが、きこえる……
「ん……う…………うるさい……」
「朝……すよ! おき……ださい!!」
「………………いや」
「わかりました」
………………
やっと、しずかに、なった……
「起精霊術 水式 水掛!!」
「ひゃっ!! 冷たっ!!!!」
「みゃーこ様! おはようございます!」
いきなり顔に水をぶっかけられて目がさめると目の前にはミケがいた。
笑顔だけど目が笑ってない……
「お、おはよう? ミケさん……?」
「やっと起きましたね! ご飯できてますよ!!」
ミケさんは激おこです。後ろに般若の様な物が見える。
しかし、こちらにも言い分はある!
恐怖になど負けてはならない!
何故なら、私は猫耳に選ばれし勇者だから!
「でも……ね? 流石に水を掛けるのは酷くない……かな?」
「え?!! 何ですか?!!!」
うん。無理だ、これ。
早々と諦めた私は、ミケが用意してくれたご飯を食べる事にした。
今日は白米にお漬物。ミケもまだ食べてないらしく、隣にミケの分も置かれていた。
待たせちゃってたのか。悪いことをした。
「「いただきます」」
そう言って、一口。うん、冷えてるのが有難い。例の件で熱いものがちょっと怖いんだよね。
でも、このご飯どうしたんだろう?昨日、家から持ってきたにしては固くないし……
「このご飯どうしたの?」
「? あれを炊いたんですが?」
そう言ってミケが指差した先には小さな土鍋。
炊飯器でしかご飯を炊いたことがない私には無理だ。私の嫁は中々スペックが高い。
そんなことを考えて、何時もの様に、ミケの頭を撫でる。ミケはさっきの怒りも忘れてご機嫌な様子。撫でられてニコニコしていた。
「冷ますの時間かかったでしょ?」
「精霊使ったらすぐですよ?」
また、そんな使い方をして。さっきも目覚ましに使ってたし……
そんな取り留めのない会話をしながらご飯を食べて、少し身支度をしたら出発の準備完了。私は、寝る前に色々準備してたからね。
ミケの準備も終わったので、出発しようと入り口に置いた石を観ると少し隙間が出来ていた。
「あれ? ミケ、外に出た?」
「昨日の夜、みゃーこ様がお手洗いとか言って外に出てたじゃないですか?」
「えっ???」
お手洗い? 行ったっけ? 記憶にな……いや、出た気もしてきた。寝ぼけてたのかな、私。
「ごめん、寝ぼけてたっぽい。」
そう言って、余り気にせずに、石を退けて外に出る。
もう、シンデレラバストで良かったなんて言わないよ!
「みゃーこ様? 何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」
何このデジャブ。うちの嫁は超能力者かな?
四つん這いの体勢で蟻型に出会ったらヤバかったけど、何事もなく外へ。
「次どっち行くの?」
「村への道自体は元来た道の川の対岸です。でも、川を渡るために、もう少し上流まで行く必要がありますね」
この辺の川幅は2メートルぐらいかな?
確かにミケだと渡るのは難しそう。
浅そうだし流れも急じゃないから私なら渡れそうだけど……猫って水に濡れるのを嫌がるんだよねぇ……
って、よく考えたら悩む必要ないじゃん。
「よし、行くよ!」
そういうと、私はミケを背負う様な感じで、抱えた。
「えっ? 歩けますよ?」
「ううん。飛ぶ!」
ミケの返事を待たずに、川に向かって全力疾走。そして地面を蹴ってジャンプ!
気分はまるでライト兄弟。2メートルの川を軽々と越えて、対岸に着手した。
私凄い! 今なら、オリンピック出れそう! これドーピングにあたるのかな?
いや、それよりも猫足を付けた女子高生が世界新記録! で、この姿が世界中にさらされると……それは、無理。
そんな妄想を色々してると、ミケも興奮したようで
「凄いジャンプでした! 猫界のアイドルになれますよ!」
とかなんとか言ってる。いや、アイドルも遠慮するよ。
「ここから後どれぐらいかかるの?」
「今からだと夕方にはつけると思いますよ。それよりそろそろ下ろしてください!」
夕方か……戦闘避けたいし……よし!
「よし! ちょっと走るよ!」
「えっ、いや、ちょっと! ちょっと、待ってください!」
「いや、待たない!」
そうとだけ言って私は走り出した。部活やってるから、そこそこ体力はあるんだよね!
ミケがなんか言ってる気がするが、気にせずに私はジョギングをするぐらいの感覚で走る。
猫足のお陰で自転車に乗るより速い速度が出ている。
ミケと一緒に見る移りゆく景色……
それだけでも、こっちの世界なら私は楽しめる。
そういえば、こっちの世界に来て楽しい事ばかりだなぁ……
大切な可愛い家族とも出会えて……
大勢の猫もいて……
少し酷い目にも有ったけど……
それでも、この数日、毎日が本当に楽しい。
ずっと、こっちに住んでいたい……
そう、例えるなら……
こっちの世界は鮮やかな色の付いた世界
それに比べて……元の世界は……
その考えに私の胸がチクリと痛んで、悪いスイッチが入った気がした。
今まで考えないようにしていた。
いや、考えるのが嫌だっただけ。
この依頼を達成したら、ここに居る大義名分、いや元の世界に帰らない「言い訳」が無くなる。
でも……私は……
あんな世界に、帰りたくない……
恐ろしい顔をした男の様な生き物
何も言わずにじっとしている女の様な生き物
ごめんなさい。と謝り続けている少女
他人事の様に見える光景
でも、それは……
幼少の頃の記憶
自分以外の誰も信じられない
いや、信じちゃいけない
そんな……この世界とは違う……
酷く残酷で、救いのない……灰色の世界
でも、いつ間にか、その生き物達は居なくなっていて、今の母親が居た。
今となっては、良く思い出せない。
ううん、思い出す度に、頭が酷く痛くなる。
今も……頭が痛い……
深く考えると、何時もこうなってしまう。
だから、悩むのが……私は考えるのが嫌い。
悩みすぎると、いつもマイナス側に落ちてしまう。
「まあいいか」は自分を守る言葉
ほら、今回だって、凄く頭が痛い……
なんか、凄く痛くなって来た……
何故か……首まで痛くなって来た……
これは……血が出てそう……
えっ? 血……?!
そこでハッとなって意識が現実に帰ってきた。良く見ると、ミケが首を引っ掻いている。
「痛いっ! 何っ?! どうしたの?!」
「下ろして! お手洗い! お手洗い!」
ミケは必死に私の首を引っ掻きジタバタして居た。
「待ってって言った! 待ってって言ったのに! 早くっ! 早く!!!」
「ご、ごめん!!」
そう言って私は慌てて下ろすと、ミケが凄い勢いで草むらの方に走っていくのを見送った。
まったく、あのお姫様は……って今回は私がせいだね。後で謝らないと。
そう言いながら、笑みが浮かんでしまう。
でも、今回はミケが居てくれて本当に良かった。
私を好いてくれる人がいるだけでも、忘れて居られるし
ミケのドタバタも、私には元気の素
何時もあの状態になると…………
「にゃーーーーーーーー!!!!」
突然、あたりに響き渡ったミケの叫び声
私は一瞬「えっ!?」となりながらも、次の瞬間にはミケの方を向けて走り始めて居た。
次回更新は、週末(土日)になると思います
2018/02/01 誤字修正
2018/02/03 一部にルビ追加
2018/02/28 一部修正
2018/03/14 消し忘れ修正




