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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
一章
12/46

第三話 遺跡と嫁と


 私は今、2匹の蟻型と対峙していた。


 いや、正確に言えば3匹。ただ、1匹は既に片側の足を全て失っており、置物も同然だった。


「さっきから、本当に鬱陶しいなぁもう!」


 そう言いながら1匹に向かって走り出した。

 近づいてくる私に、前脚を大きく振り上げる蟻型。


 直前で小さく左に飛び、回避。そのまま駆け抜けざまに蟻型の足を2本へし折る。


 さらに後ろからの気配に、振り向く事もなく、地面を大きく蹴ってバク転。もう1匹の蟻型の背後を取る。


「はい! 残念でした!」


 そう叫んで足の付け根に竹刀を振り下ろし、足を纏めて叩き壊す。2本は折れたが、一本曲がっただけの様だ。


「一本仕留め損なった……まあいいか。」


 これで、3匹ともまともに動けないしね。


 そして間合を離しながら、ミケの隠れている方をチラッと見る。余裕なのがわかってるのか、私の視線に気がついて、手まで振ってる……


 はぁ……っとため息を吐いた後、再度駆け出した。


 今度は蟻型とは反対方向、ミケの方に向かって……


 ミケは、いきなり近くに来た私を見てキョトンとしていたが、そのままミケを抱えあげてる獣道を走り抜ける。


「さあ! 逃げるよ!」

「倒さないんですか?」

「時間の無駄!!」


 あの状態の蟻型を倒した所で、ゲームと違って経験を積めるわけでもないし!


 獣道をどんどん走っていく。猫足のお陰でいつもより早い速度、移りゆく景色が結構楽しかったりする。

 こっちの森も日本とあんまり変わらないんだね。木とか見たことある気もするし。


 そして、やや上を見上げると木々の間から赤く染まりだした空が見えた。既に時刻は夕方に差し掛かっている様だ。


 ここに来るまでに何度もあった蟻型との戦闘。初めは丁寧に足6本→首と狙っていたが、途中から面倒くさくなって、かなりお座なりになっていた。


 さっきのは15匹目だっけ? まあ、どうでも良いけど。


 そんな事を考えたり、景色を楽しんだりしながら、五分ぐらい走っただろうか。前方に見えたのは小さな川。


 私は走るのを止め、ミケを下に下ろそうとしたら、ミケは……


 涎を垂らして寝ていた。


「こら!! 起きなさい!!」

「ふぁっい! ごちそうさまでした!!」


 しかも、ベタな夢まで見ていた。


 そんな寝坊助ミケさんは辺りをキョロキョロしていたが、すぐにハッとなって、申し訳なさそうに謝って来た。


「ごめんなさい……寝てました……」

「知ってる。でも、良くあんな時に寝れるね?」


 一応、逃げてる最中だったんだけど……


「みゃーこ様に抱きしめられてたら、気持ちよくて……つい……」


 ミケは恥ずかしそうにしながらそう言っていた。


「まあ、いいか……お仕置きは後にして、先に寝床を探そうか。もう夕方だし」


「えっ……あ! そういえば、ここから川を少し上流に行った所に遺跡があるので、そこで休みましょうか?」


「遺跡? まあ、安全ならそこで良いよ」


 話逸らしても覚えてるから意味ないよ? とは言わないで置いてあげた。私は優しいからね!


「みゃーこ様、どうかしました?」


 おっと、顔に出ちゃってたみたい。気をつけないと。


「いや、なんでも、ないよ!」


 若干カタコトになった私にミケは不思議そうな顔をしていたが、バレてないっぽい。


「? じゃあ、みゃーこ様こっちですよ」


 今度はミケの案内の元歩き始めた。



 10分程歩いた所に遺跡はあった。


 いや、ミケがそう言っているだけで、私には岩と岩との隙間にしか見えない。


「入り口狭くない?」


 これ、私でも這いつくばって入れるかどうかって所なんだけど…

 大人の男の人とか絶対に通れないじゃん……


「そうですか? 余裕で通れますよ?」


 そりゃ、あなたは余裕で通れるでしょうけど!


 そう文句を言おうと思ったら、ミケは四足歩行でピャッと入って行った。

 中から「みゃーこ様も早く来てください」とか言ってるし……


 仕方ない……入るしかないか……


 そう心の中でため息を付きながら、匍匐前進の様にして隙間の中へ。ギリギリ通れそうな感じ。


「生まれて初めて、胸が控えめで良かったと思ったよ」


「みゃーこ様? 何か言いましたか?」


「いや、なんでもない」

 虚しくなるから何度も言いません。


 そんなやり取りをしながら2mぐらい進むと、広い所に出た気がする。しかし真っ暗でよく見えない。


「ミケ、よく見えないから明かりつけてくれるかな?」


「あ、ごめんなさい! すぐにつけますね!」


 そう言うと、ミケはごそごそしながら、何かを用意していた。


「序精霊術 火花」


 そう唱えて火種を作っている様だ。


 明かり点けてから呼んでほしかったんですが……まあ、猫は暗闇でも見えるって言うから仕方ないけど……



 数分後、漸くロウソクに火がついて周りが見える様になった。正直言って体が痛い。


「お待たせしました!」


 まず、上を確認し、高い天井だったので立ち上がる。


「うーん! 辛かった!」

 体を伸ばすと、体がバキバキ言ってるのがわかる。


「お疲れ様でした!」


 そう言ってくれたので、ミケの頭を撫でてあげた。ミケさんはご機嫌な様子。


 そして周囲を見渡すと、結構大きい四角い空間。

 天井は2mぐらいで幅5mぐらい? 奥行きはもっとありそう。


 ミケは入り口横にあった石を押して、入り口を閉めようとしていた。ミケが押すにはちょっと大きい。


「手伝うよ。それにしても結構広いね。何の遺跡なの?」


「調査はしたらしいのですが、古い事以外よくわからなかったらしいです。ただ、こんな所が何箇所か見つかってはいますが……」


 入り口を締め終わった私は「ふーん」っと言いながらまた辺りを見渡す。


 古い事ぐらいなら私でもわかるなぁ、壁とか色んなところで崩れてるし。

 少しの間、辺りを見渡していたが……


 私に分かるわけないし、まあいいか!


 そんな事より!

 私にはやる事があったのだ! 


 そう思いミケの方を向き直る。ニヤニヤしながら。


「えっと……みゃーこ様……? なんで……しょうか……?」

 そう言いながら、後ずさるミケ。


「ん〜? なんもないよ〜? ただ…………ね!」

 そう言って猫足の瞬発力を生かしてミケに一気に近づき、ギュッっと前から抱きしめる。


「あわわっ、みゃーこ様!

 いきなり……何を……?!?!」


 その言葉に私は

 ゆっくり、そして、はっきりと、こう答えた。


「さっき、寝てた、お仕置き!!」


 そして、抱きしめたまま尻尾を優しくムニムニする!


「なっ! や、やめてください! くすぐったい! みゃーこ様! くすぐったいです!!」


 なんか聞こえた気がしたが、聞こえない。


「聞こえない!

 これはお仕置きなので何も聞こえない!」


 そう言いながら、10分程堪能させていただきました。

 嫌がられると思ったから自重してたけど、ずっと触りたかったんだよね。




 堪能し終わった私はホクホクの笑顔。対するミケさんは……


「うぇーん!! もうお嫁に行けません!!」


 泣かせてしまった。うん。お仕置きだったけど、ついやりすぎたかな? 仕方ないなぁ……


「私とは番いなんだし、もう私のお嫁さんでしょ?」


 その言葉にピタッと泣き止むミケ。


「えっ……あ、そうですね……えへへ♪ 私もう、みゃーこ様のお嫁さんでした♪」


 そう言って、モジモジしながら私にもたれ掛かってくるミケ。

 ミケさんがちょろイン属性までゲットしました。いや、それは元々かな?


「それにしても、お腹すいたねぇ」

「はい! お嫁さんの私に! みゃーこ様のお嫁さんの私に任せてください!! すぐに準備しますね!!」


 なんか、いつも以上にやる気満々なマイワイフ。若干、申し訳ない気もするけど、本人は嬉しそうだしいいか……


 そんな楽しそうにご飯の用意をしているミケを眺めていたら、突然、形代を取り出して精霊術の準備を始めた……?!


「ちょっと待って! こんな所で何使うの?!」

「えっ? 飲む為の水を出そうかと……」


 飲み水に使われる四大精霊さん……


「川の水じゃダメなの? 私汲んでく「ダメです!! みゃーこ様には、お嫁さんの私が出した水を飲んで欲しいんです!!」


 即答だし、若干危ない発言だし……


「あ、ハイ。そうですか。」

 私はそうとしかいえなかった。


 そして、今日のご飯は、笹の葉に包まれたおにぎりとお漬物。あと、ミケの出してくれた水。

 おにぎりとお漬物は家から持ってきたそうで、私のお嫁さんは中々優秀でした。


 おにぎりを食べ終わって、自由行動の時間。とは言っても、この部屋には何もない。

 なので私は竹刀の手入れをしていた。ミケは私の膝の上で丸くなっている。


「うーん……流石に竹刀の負担が大きいか……」

 竹刀のつるの部分を見ていると亀裂などはなかったが、ササクレがいくつも出来ていた。


 あれだけ金属を叩いたんだから、当たり前だよねぇ……この竹刀がいつまで持つか分からないし、戦闘は出来る限り避けないと……

 木刀とかあれば良いんだけど、そんなことを考えていると、ある疑問がふと頭に浮かんできた。


「そう言えば、何で途中からあんなに敵が出てきたんだろうね?」


「わかりません。けど、大きい音には敏感と聞いたことはありますが……」


「ふーん…………

 そういえば、誰かが爆音轟かせてたねぇ……」


 私のその発言に、ミケは一瞬ビクッとしたかと思うと、私の膝から逃げる様に降りた。


「わ、私、も、もう、寝ますね! おやすみなさい!」


 そう言って、そそくさとロウソクを挟んで私と反対側に行くと、丸くなって寝始めた。


 あ……逃げられた。お仕置きはさっきしたからもうしないのに……でもまあ、とんだトラブルメーカーなお姫様だこと。


 そんな事を考えながら、寝ているミケをみて微笑んだ。


 さて、さっさと手入れを終わらせて、明日に備えよう。


 こうしてこっちの世界に来て3日目の夜が暮れて行く……



次回更新も一週間以内の予定です。


2018/02/28 一部修正

2018/03/01 誤字脱字修正

2018/03/14 消し忘れ修正

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