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トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST11. 往古の証人と黎明の遺産
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ユレルココロ

「ジュリア、私と一緒にマグネスが秘した財宝を見つけましょう」

「ジュリア、私の友達なんだから、墓荒らしなんてバカなことしないよね?」


 シスイとワラビに挟まれ、ジュリアが悩んでいた。


「ジュリア、貴方、私に助けられた事を忘れてないよね?」

「は、はい、もちろん」

「ちょっと! なに恩着せがましいこと言ってんの! ジュリア、このドロボーの言うことに耳を傾けちゃダメ! このドロボーはジュリアを悪の道に引き()り込もうとしてる、言うこと聞いちゃったら、悪の道から引き返せなくなるよ!」

「はは……」


 詰め寄る姉妹に、ジュリアは苦笑するしかなかった。

 シスイはジュリアをとても気に入り、当てにもしている。頼られると弱いのがジュリアである。

 親友と、その姉であって窮地を助けられた恩人。どちらに付くべきかジュリアが迷う。そして、

「アンタ―、助けてくれー」

 結局は決められずにあなたの元へ逃げる。


「あっ」

「逃げた」


 すかさず姉妹が、実に息の合った様子であなたの元へ駆け寄る。

 ジュリアがあなたの後ろに隠れ、姉妹の矛先があなたに向く。


「キミ、軍師マグネスの墓にはまだまだ隠された蔵物が眠っていると聞く。発掘できれば富も名声も思いのまま、さあ、私と共に探しましょう」

「キミ。キミのことだから大丈夫だと思うけど、お姉ちゃんの言う事みんなデタラメだからね」

「デタラメじゃない。理由は知らないけど、マグネスの墓は発掘が進んでいない。この考古学者の間で(ささや)かれている真実を、貴方如きがデタラメなどと言えるの?」

「何が考古学者よ、お姉ちゃん只のドロボーじゃない。私、お姉ちゃんがお菓子を買ってあげる、なんていって樹海に引き摺り込んだこと忘れてないんだから」

「ふっ、過ぎたことをうじうじと。遠出してる時点で気付くべきでしょう」

「うっさい! このヘンジン、ドロボー!」


 やいのやいの、と言い合う姉妹に、あなたも苦笑せざるを得なかった。

 それから、くすんだ色の草を僅かに生やす、乾いたオレンジ色の大地を、あなたたちが半刻ほど歩いた所で、

「……うん? なんだあの穴?」

 ジュリアが見つけた。すり鉢状の大きな穴を、あなたたちは認めた。


「アリジゴクの穴みたいだね」

「にしては大き過ぎないか……?」


 ぽっかりと空いた穴を前に、ワラビとジュリアが疑問をつぶやいた。

 穴は一見アリジゴクの(わな)のよう。しかし、それにしてはあまりにも大きい。

 人ひとりがすっぽりと収まるくらいだ。いずれにしろ近付かないのが得策と、あなたたちが大きく()(かい)して穴を避けるのだが――。


「……違う。思い出した。この穴、アリジゴクじゃない」


 不意に告げたシスイに、ジュリアが「えっ?」と訊き返すと、

「気を付けて。モンスター」

「えっ、なに、モンスター? ……わあっ!」

 突如として穴から現れた生物に、あなたたちが驚いた。

 あなたたちが身構える。穴から()い上がるその生物は、ヒトに匹敵する大きさを持ち、その短い両腕の先には、鉄すらも切り裂きそうな爪を携えている。

 突き出た先の赤い鼻をひくひくと動かし、その小さな両眼はあなたたちを認めている。


 『グラトニー』。暴食(グラトニー)の名を冠する、この地方に現れる獰猛(どうもう)なモグラである。

 このモグラは非常に危険なモンスターであり、縄張りには絶対に近付かないよう人々には呼びかけられている。

 何が危険かと言うと、名が示す通りの暴食ぶりが挙げられる。そもそもモグラという生物は、胃袋が半日空っぽであると餓死すると言われており、このモグラはその食欲を満たすためにヒトですら襲う。

 獲物を見つければ、両手の鋭利な爪で息絶えるまで切り刻む。下手なクマより(はる)かに恐ろしいモンスターで、このモグラの餌食になったヒトは数知れない。

 なお、このモグラはモグラではあるが、穴掘りがあまり得意ではない。トンネルを形成するなどモグラらしいことはせず、むしろ地上に出て積極的に狩りを行う特徴を持つ。

 そのためか、通常モグラは目が利かないが、このモグラの目は機能している。


「ジュリア、ワラビ、下がって。このモグラは、私とこのヒトで倒す」


 既に仮面を被り、臨戦態勢に入っているシスイが、妹とその親友を下がらせてあなたを指名した。

 盾を構えるあなた。傍らにはシスイが立ち、さて、彼女が握る勝算とは。


「キミ、少しの間でいい。前に出てモグラを引き付けて」


 常人なら尻込みする危険な指示だが、守ることを役目とするあなたが前に踏み込んだ。

 どしっ、と腰を落として盾を構え、この盾に寝そべる格好のモグラが、あなたに突進して右手を叩きつけた。

 鋭き爪に、鉄の削られる音が響き、この重い衝撃をあなたが踏ん張って耐える。すると、立ち上がったモグラが両手を振り上げ、あなたが構える盾を力ずくで()けようとするが――。


――“親愛なる(ちち)(とも)なる子、聖霊は信仰(なげう)ち尊ばん”

  “()(あが)める神は(まこと)の神か。イデアと相反す、確かなれど不確かな存在”

  “何を()う。届かぬ(しるべ)(まばゆ)きこそ神。たとえ偽りとも我らを照らせ”――


「――“(ハレルヤ)”」


 盾を構えるあなたの後ろから強烈な光が放たれた。

 光を浴びてモグラが怯む。この隙にあなたが剣を抜き、モグラの頭を叩き斬る。それから後ろを見やると、シスイは手を組んでいた。

 手を組むシスイは魔法を唱えた。彼女が唱えた魔法「(ハレルヤ)」とは、目が(くら)む程の閃光(せんこう)を放つ護身魔法である。

 シスイの手の組み方はワラビと似ている。だが少しだけ異なり、妹のワラビが両手を組んで人差し指を立てるのに対し、姉のシスイは、握る右手から立てた親指を左手で握り、左手の人差し指を立てている。


「キミ―」

「姐さーん」


 モグラが倒れ、ワラビとジュリアがあなたとシスイに駆け寄った。

 快勝に喜ぶ二人。あなたも危険と喚起されているこのモグラに、ここまで楽に勝てるとは思ってもいなかった。

 シスイが仮面を外す。そして、

「キミ、お疲れ様。造作もなかったね」

 笑顔を初めてあなたに見せた。


「キミとなら安心できる。さあ、先に行きましょう」


 汗を払うようにシスイがかぶりを振った。

 にへっとした柔らかい笑みで、この笑顔は妹と似ていた。なによりも、笑うんだ、などとあなたは感じた。


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