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トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST11. 往古の証人と黎明の遺産
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梟雄不明

 ニャンフンルルを発ってから二日経ち、あなたたちは南の町・メンネフェルに到着した。

 メンネフェルは、かの魔王の時代、勇者たちに知恵と軍略を授けた軍師・マグネスの生誕地として知られている。

 目的がなければ過去の偉人の足跡を辿り、想いを()せるのもいいだろう。だが、あなたたちは逃げた外道の行方を追っている。

 あなたたちはさっそく聞き込みを開始した。奴はナンナ教を説いて回った黒衣の美男子だ。もしも目にすれば必ずや印象に残るだろう。


「え? 若い男の僧侶? うーん、ちょっと見てないなぁ」

「ああ、あの可愛い顔した僧侶さんね。以前はよく見かけたんだけどねぇ」

「ここ最近は見てないな。それにしてもあんたら、よくフェネックをこんなに狩れたな」


 しかし有力な情報は得られなかった。

 あなたたちは街の人々に、奴を見ていないか尋ねた。だが街の人々は、口を揃えて「その僧侶の事は知っているが、ここ最近は見かけていない」と答えるばかりだった。

 なお、あなたたちは聞き込みの傍ら、倒したキツネの毛皮を売った。スイープフェネックの毛皮は柔らかく、その手の商人に売れば高値で買い取ってくれ、あなたたちは多少の路銀を得た。


「ここには来ていないみたいだな、アンタ」


 そして夕方。向かい合って座るジュリアがあなたに訊いた。

 テーブルを囲むあなたたち。Paradise Lostの時とは違ってワラビとシスイも同席している。

 目撃情報は得られなかった。しかし、半日にも満たない聞き込みで「いない」と断じるのは早計でなかろうか。

 わざわざ二日掛けて赴いたのだ。いない事を確信するまで捜すべきではないだろうか。中途半端な調査で逃しては悔やんでも悔やみきれず、明日も捜すべきでは、といった旨をあなたがジュリアに伝える。


「だよなー、もうちょっと捜すべきだよなぁ。実を言うとあたし、今ニャンフンルルに戻りたくないし」


 ジュリアがテーブルに突っ伏した体勢でぼやいた。

 このぼやきにあなたも僅かに同意した。今あなたたちはニャンフンルルへの帰還に、気が進まないでいる。

 理由は娼婦ローザの弟と妹に責められたことだ。悪くないのに悪者にされ、あなたたちは逃げるようにしてこの町に訪れている。


「でも、ぐずぐずはしていられない。あの腐れ外道、一刻も早く見つけて仕留めないと」

「分かってるよ姐さん。でも、……うーん、参った」


 シスイの言葉に、ジュリアが溜め息を吐いた。

 奴がもしこの街にいないとすれば、その足で更に遠くへ逃げてしまう。時間との勝負、シスイが言うとおり早く見つけるべきである。

 また、奴自身の力も危うい。変身した奴は電撃を吐き、それにあなたは苦しめられている。

 あなたたちは三度、あなたに至っては四度獣に変貌する者と出遭っている。が、エザナーンを始めとする大多数がそんな者に遭った事なく、奴が姿を変えたら、たとえ闇夜のエザナーンがいても無事では済まないだろう。

 戻るべきか。それともここでまだ捜すべきか。正解の見い出せない二択にあなたが迷っていると、

「ねえキミ、ジュリア」

 あなたの左隣に座るワラビが、俯きながら言った。


「私、帰った方がいいのかも……」

「はあ? ワラビ、何言ってんだおまえ」

「だって私、何の役に立ってないし……」


 先のキツネとの戦い。ワラビは足が(すく)み、戦うことができなかった。

 それをワラビは気にしていた。戦いの後もワラビは落ち込み、とても口数が少なかった。

 いかがしたものか、などとあなたが悩む。ワラビの復調は(いま)だ兆しが見えない。


「このままじゃジュリアとキミの足を引っ張るだけ。私、もうダメだよ。ごめんジュリア、私、ヒルダガル一緒に行けそうもない……」

「……ワラビ、あのな」


 テーブルから体を起こしたジュリアが、隣に座る親友の両肩を掴み、自身に向かせたワラビの瞳を真っ直ぐに見つめて言う。


「自信を持て。おまえは誰よりも強い女なんだ」

「ジュリア」

「心配すんな。おまえの分くらいあたしがカバーしてやる。何度も言うけどよ、あたしにはおまえが必要なんだ。勇者の子孫にしてチビでばっつんで、無駄にもみが長くて、そんでズカズカとヒトの心に平気で踏み込んでくるおまえがさ」

「……ジュリアぁ」

「だからくよくよすんな。あんな野郎の薄汚え魔法なんかに負けんじゃねえ。おまえなら立ち直れるさ、ゼッタイ」


 ジュリアは親友の復帰を、誰よりも信じていた。

 この二人を見てシスイが、「ふっ」と嬉しそうに微笑する。


「ま、これはあたしが一度女王様に言われたことだけどさ」

「……ふふっ、ジュリア、ますますお姉様じみてきたね」

「は? やめてくれよ。姐さんならここにいるじゃんか、あたしそんなキャラじゃねえし」

「ふふっ。でもチビって言うな。デリカシーないのは分かってるけど」

「おまえ”殺助(ころすけ)”みたいな成りしてることまだ気にしてんのか」

「“()()(れつ)(さい)”さま~、なんて誰が言うかナリ! このギャル! (トン)ガリ、ブタジュリア!」


 ワラビが笑った。多少元気を取り戻したようである。


「ジュリア女王様にそんなこと言われたっけ?」

「ああ。おまえがカタリナでムラートさんと戦ってるときだったな」

「やっぱ頼もしいねあのヒト。そういえば元気かな? 司直のみんなとペルカララ島へ行っちゃったもんね」

「ま、あのヒト強いから心配は要らないだろうけど、でも従ってるアリのみんな、気を()み過ぎててすこし可哀そうだよなー」

「自覚ないもんね。戦うの好きだし、男のヒト直ぐに誘惑するし。結局のところ女王様っていくつなんだろ?」

「訊いたら口ふさがれるぞ」


 二人の会話の間隙を縫うように、

「……提案」

 シスイがぼそりと告げた。

 あなたたちが顔を向ける。特にジュリアは懐いている分、直ぐさまシスイに振り向く。


「明日、マグネスの墓に行かない?」

「え? 姐さん、マグネスって、この国じゃ“(ちゅう)(しん)(こう)”っても言われてる、あの軍師マグネスですか?」

「うん」


 訊き返したジュリアに、シスイがこくりと頷いた。


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