表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST11. 往古の証人と黎明の遺産
182/237

誤解の果て

 あなたたちはこの街で出会った少年ライフとポミオに、昼食を奢るつもりでいた。

 だが二人は、「女のヒトに金出させるなんてカッコ悪い真似できかっよ」と抵抗し、自分たちが食べた分くらい自分たちで払う、と金を支払おうとした。

 あなたたちはこの少年二人に苦労を掛けている。麻薬中毒者、すなわちヤク中の二人は暴れたりし、戦士会まで運ぶのに手こずった。ライフなんかは引っ()き傷を付けられ、そんな少年たちに格好付けられては気が済まなかった。

 それなので、ジュリアが「お姉さま」の権限を使って諭し、少年二人を納得させた。こうしてあなたたちは昼食代を奢り、別れ際に二人は「ヤク中を見つけたら捕まえるぜ」とあなたたちに一肌脱いだ。


 それからあなたたちは奴の捜索を再開した。

 しかし見つからなかった。難民街を(くま)なく探し、匿われていそうな所もあたったが、外道の姿を発見することはできなかった。

 日が暮れてあなたたちが本日の捜索を打ち切る。そして、

「ごめんください」

 ジュリアが尋ねた。最後にあなたたちは、昨日ローザを届けた病院に再び訪れた。


「あら、昨日の」


 ちょうどロビーにいた、昨日も会った年配の看護婦があなたたちを認めた。

 ロビーには診察を待つヒトのための椅子が並べられている。病院の規模は大きくなく、診療所と言った方が適当かもしれない。

 奴はジュリアに左手を射られ、シスイに首を斬られた。重症であり、治療が不可欠だろう。

 昨日訪れたことにより、あなたたちはこの病院を後回しにしていた。だが、一日経った今なら現れたかもしれない、と思って今に至る。

 なおこの町には、他にも数軒病院があるが、それらは既に訪問している。尋ねたが、現れなかった、との回答を得ていた。


「看護婦さん。あのモートって僧侶、来ませんでしたか?」

「ああ、来てないわね」

「そうですか。すいません、ありがとうございます」

「しっかし本当かいあんたたち。あの僧侶さんが犯人だ、なんて」


 看護婦が反問し、口をへの字に曲げた。


「あの僧侶さん若いのに立派じゃないか。それを悪く言うなんて、わたしゃ信じられないね。それに一体どうしたらあんな血を吸い取られたようになるんだい? 悪いモンスターに襲われた、って方が自然に見えるんだけど」


 腕を組む看護婦。あなたたちは昨日、ローザを重体に陥れた犯人はモートだ、と答えている。

 しかし医者と看護婦は信じようとしなかった。奴は表向きは立派な聖職者である。かなり前からナンナ教の布教に努めていたらしい。

 しかも顔が良い。それにローザの症状だ。失血した彼女だが、目立った外傷はなく、そんな彼女の血を失った容態に医者と看護婦は疑問を抱いた。

 あなたたちは魔法による失血の旨を説いたが、奴が唱えたのは過去に存在を抹消された魔法である。医者看護婦ともに魔法に明るくないこともあり、あなたたちの主張は認められなかった。

 奴は信用を得ていた。エザナーンですら半信半疑であり、いくら説いても奴の非道が明るみに出ない限りは無理だろう。


「……信じてください。本当なんです」

「そうかい。ま、もしウチに来たら知らせるよ。Paradise Lostに知らせりゃいいのかい?」

「はい、お願いします」


 ジュリアが頭を下げ、奴を見つけたら知らせるように頼んだ。

 しかし、あなたたちはこの後に思い知る。慕われている人物を非難するのが、いかに困難かであることを。

 ローザから話を聴きたかった。ジュリアが続けて尋ねる。


「看護婦さん、ローザさんに会いたいんですが」

「……彼女、まだ寝てるわよ。意識が回復しないから、会ったって無駄だと思うけど」


 看護婦は邪険な目をして言った。

 やはり、とあなたが肩を落とす。回復を願ったが昨日の今日である。しかし、

「じゃあ、見るだけでも出来ませんか?」

 食い下がるジュリア。奴の本性を知っているのはあなたたちと彼女だけ。無駄と言われても一目見ておきたく、あなたたちが面会を申し出た。

 一度は断った看護婦。だが熱心に頼むジュリアに折れたか、決して起こさず安静にさせておくことを条件に、あなたたちは面会を許された。

 病院の最も奥、ローザが眠る病室にあなたたちが静かに向かう。すると、

「うっ、う……ローザねえちゃん」

「おい泣くな、泣くんじゃねえ」

 彼女の妹と弟と(おぼ)しき二人の子供が、病室の前で悲しんでいた。


「……えっ、だれ?」

「だ、誰だお前ら!」


 あなたたちが現れたため、弟が気色ばんだ。

 弟と妹は幼かった。年齢にして十にも満たないだろう。

 弟が、怯える妹を庇いながらあなたたちを睨んでいる。


「ごめん、怪しいもんじゃない。あたしらはお姉さんとお話ししたかったんだけど、……また日を改めるよ」


 幼き敵愾心(てきがいしん)を前にし、ジュリアが息を吐いて答えた。

 この二人がいては見るのも(かな)わぬだろう。子供を脅かす訳にもいかず、あなたたちが振り返り、この場を後にしようとする。

 しかし昨日、奴は倒れたローザに向かって、この二人を奴隷として売る、と確かに吐いた。

 子供を魔の手から守らなければ、とジュリアが、子供二人と視線を合わせるべくしゃがみ込み、 

「なあ君たち、モートって僧侶知ってる?」

「う、うん」

「ああ」

「いいか? あたしがこれから言うこと、絶対に守ってくれ。……あの僧侶の言う事は聞くな。あいつは一見正しそうに振るまってるけど、本当はすごく悪い奴なんだ」

 騙されないようにと、モートの本性を説く、が――。


「はあ!? ふざけんなこのブス! あのヒトすげえいいヒトだぞ!」

「そうだよ! ローザねえちゃんと仲良いし!」


 幼い二人にとっては余計な狭匙(せっかい)であり、ジュリアの忠告は聞き届けられなかった。

 反撃を浴びたジュリアが言い返す。ただこの二人が、奴に騙されて欲しくなくて。


「頼む、聞いてくれよ! 君たちのお姉さんをあんな目に遭わせたのはあいつなんだ!」

「嘘つけ! あのヒトがそんなことするもんか!」

「あのヒトを悪く言うなんて許せない! 帰って!」

「そうだ帰れ! 姉ちゃんが目を覚まさないのはお前らの所為だろ!」


 これ以上はいられない。看護婦に言われたこともあり、あなたがジュリアを無理やり引っ張った。

 大人しく従ったジュリア。子供二人に非難され、あなたたちが逃げ出すように立ち去る。


「なあ、間違ったこと言ってないのに、……悔しいよ」


 病院から出て涙ぐむジュリアの右肩を、シスイが励ますように手を置いた。


 こうして夜が更け、あなたたちがParadise Lostに戻った。

 見つからなかった旨を報告した。するとエザナーンから「南の“メンネフェル”に行ってみたらどうだ?」と提案された。

 メンネフェルはここから二日ほど歩いた所に建つ町である。モートはこの町でも布教活動を行っていたらしい。

 あなたたちはこの提案に従った。エザナーンには、もし奴を見つけたら絶対に油断するな、と注意を促し、あなたたちは翌朝、南へ旅立った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ