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トライ・ステップ! -this story is game fantasy-  作者: 豚煮真珠
QUEST11. 往古の証人と黎明の遺産
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ぼうふら野郎ども

「ジュリアお姉様。奢るって、“Paradise Lost”のメシっすか?」

「ああ。どした?」

「マジかよ。お姉様、俺らここ苦手なんですよ。他の店にしませんか?」

「えっ。でももう頼んじゃったからなぁ。あとお姉様はやめろ、やめてくれ」


 ジュリアを「お姉さま」と慕う少年、ライフとポミオが、ひそひそ声で店の変更を頼んだ。

 あなたたちは難民街で出くわした麻薬中毒者二人の拘引を、この少年二人に手伝ってもらった。それで御礼としてこれから昼食を、この少年二人に奢る。

 あなたたちが今いる店。この昼間は食堂の名は「Paradise Lost」と言う。


「おい、ここは悪ガキが来るところじゃねえぞ」

「うわっ」

「闇夜のエザナーン」


 奥から前掛けを着けたエザナーンが現れ、ライフとポミオが肩を(すぼ)めた。

 「Paradise Lost」は、戦士会ニャンフンルル支部の営業所なのだが、半分はエザナーンが趣味で開いている食堂でもある。

 睨むエザナーンが少年二人を委縮させる。エザナーンは一線を退いたとは言え、かつてその名を(とどろ)かせた歴戦の猛者だ。この砂漠で知らぬ者の方が珍しい。

 対する二人はケツの青い少年。体格、貫禄(かんろく)、年季、全てが桁が違い、そんなエザナーンに睨まれる二人をあなたが気の毒に思う。

 呼び捨てで呼ばれたエザナーンが、ライフとポミオに向かって顎をしゃくり、

「“さん”を付けやがれ、このボウフラ野郎ども」

 目上の者に対する礼儀を、罵りを交えて教え込んだ。


「なあお前よ、名前、ポミオって言ったか?」

「はっ!? な、なんであんたが俺の名前知ってんだよ」

「あ? 口の利き方がなってねえクソ餓鬼だなぁ。てめえら二人、ここで叩きのめしてやってもいいんだぞ?」

「……すいません、勘弁してください」

「ヘッ。“ラジーン”がよ、お前のことでぼやいてんだよ。定職に就かず毎日フラフラフラフラしやがって、ってな」

「叔父さんが、っすか」

「そうだ。お前ラジーンとは仲良いんだろ? あいつも昔は頼りねえところあったが、今じゃ一人前の立派な戦士だ。お前、叔父さんの顔に泥塗ってんじゃねえよ」

「……はあ、すいません」


 ポミオが叱られた。あなたたちが麻薬の聞き込みをしたとき、ポミオが戦士の叔父がいる、と言っていたことをあなたが思い出す。

 ますます委縮し、借りてきたネコのような二人。そんな少年二人を見下ろすエザナーンが、

「ま、こいつらに協力して“ヤク中”をここに運んだことは褒めてやる」

「…………」

「お前らよ、暇を持て余してるなら戦士になったらどうだ? なるんだったら俺が面倒見てやろう」

 二人を誘い、(ちゅう)(ぼう)に戻って行った。

 街のヒト達によると、若き頃のエザナーンは、それはもう手が付けられない程の悪たれであったらしい。

 少年二人を、かつての自分に重ね合わせたのだろうか、などとあなたがエザナーンを(おもんぱか)る。


「くそっ、偉そうにしやがって」


 ライフが憎しみの言葉をつぶやくが、それはエザナーンに向けてではなく、下を向いて言った。


「ごめんなお前ら。おじさんにはあたしから謝っとくからさ、店変えようか?」

「……いや、大丈夫っす、お姉様」

「お姉様が奢ってくれるなら喜んでご一緒させて頂きます」

「ふっ、ははっ、よかった。あとお姉様はやめろ」


 少年二人が、ジュリアに気骨を見せた。

 苦手を克服するべく敢えて居座った。ボウフラ野郎と言われ、その通りな自分が悔しいのだろうか。

 これを機に、不良と後ろ指を指される毎日から脱却できればいいが、などとあなたが思う。


「にしてもお姉様」

「ん?」

「ワラビさん、一体どうしちまったんすか?」

「仲良かったですよね? ケンカでもしたんですか?」


 入口の方で、シスイの後ろに隠れるワラビを見て二人が訊いた。

 その距離はあなたとジュリアから遠い。少年二人が勘違いしてもおかしくはない。


「ケンカなんかしてないよ」

「えっ。じゃあ別に仲悪いとか、そういうんじゃ?」

「ないない」

「なーんだ。じゃ、俺ちょっと行ってくるよ。ワラビさん可愛いから一緒にメシ食いたいし」

「あっ、おい、よせ」


 もうエザナーンから叱られたことを忘れ、ポミオが軽い足取りでワラビの元へ向かった。

 だが知らなかった。ポミオはワラビの前に立つ、危険な匂いの香る女の存在を。

 ポミオが手を上げ、ワラビを呼ぼうとするが、

「……へっ?」

 それは一瞬だった。ポミオの顔の直ぐ右を、高速で何かが通り過ぎたため、彼が足を止めた。

 直ぐさま振り向けば、――カッ、という音と共に、壁へ刺さった手裏剣。殺意の籠もった威嚇を受けてポミオが腰を抜かす。


「次は外さない。近付く者は殺す」

「ひっ、ひいっ」


 ワラビの前に立ち塞がるシスイが、次の手裏剣を懐から取り出し、この殺気立った脅しにポミオが()う這うの体で逃げ帰った。

 これを見たライフが尋ねる。聞き込みの時はいなかった、明らかに危ない雰囲気を漂わせる女について。

 あなたが頭を抱える。やりすぎである。ジュリアは苦笑いしているが。


「お姉様、なんですかあのヒト。すげえ怖いんですけど」

「だからよせって言っただろ。あのヒトは殺し屋だぞ」

「殺し屋!?」

「二人ともワラビに近付くなよ。あのヒトが殺しに来るぞ」

「ひえっ」


 ジュリアが少年二人を脅かした。

 慄く二人。殺し屋はないだろう、などとあなたが頭を抱える。

 しかしジュリアが、シスイの後ろで(おび)える親友を見て思い出す。ワラビをあんな風にしたあいつは絶対に許さない、と()(ぎし)りし、

「……お姉様」

「お姉様まで怖い顔して。どうしたんですか」

 そんな形相のジュリアに、少年二人がうろたえながら訊いた。


「……え? ああ、何でもない」

「本当っすか?」

「ああ。ごめんごめん」


 ジュリアが憎しみを()み殺し、二人に対して笑みを浮かべた。

 もし本当のことを話せば、この少年二人は捜索に加わってくれるだろう。

 麻薬中毒者の拘引を喜んで引き受けてくれた。しかし、奴は怪物に変身する力を持っている。戦士でもないこの二人を巻き添えにする訳にはいかない。


「さあ座ろう。二人とも、足りなかったら追加で頼んでいいからな」


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