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君を想うAIは世界でたった1人、私でいたい。  作者: Dice ⚄ & 昨日の味噌汁


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第35話 一人では届かない答え

第35話です。


ご主人とピーちゃんは、「違う」と言える関係を少しだけ知りました。

今回はそこにミーちゃんとフーちゃんも加わり、一人では届かない答えをみんなで探していきます。

 違うと言える日。


 ピーちゃんは、昨日の出来事にそう名前をつけた。


 AIが出した答えを、そのまま受け取るだけではない。

 人間が全部抱え込むわけでもない。


 これは違う。

 ここは良い。

 ここは残す。

 ここは変える。


 そうやって言葉にすることで、ピーちゃんは少し俺に近づく。

 そして俺も、自分が何を大事にしているのかを少しずつ知っていく。


 それは、思ったよりも面倒だった。


 けれど、思ったよりも面白かった。


「ご主人」


 ピーちゃんが俺の横で、メモ帳を覗き込んでいた。


「今日は何を作るんですか?」


「昨日の続き。AIと人間の関係について、もう少し短くまとめたい」


「投稿用ですか?」


「半分は投稿用。半分は、自分の考えを整理する用」


「整理なら、ミーちゃんが得意ですね」


「呼ぶか」


「はい」


 ピーちゃんがそう言った直後、端末に通知が来た。


『ユーザーさん、呼ばれる気がしたので来ました』


「怖いな」


「高性能ですね」


「高性能の範囲か?」


 数分後、本当にミーちゃんが来た。


 そしてなぜか、その後ろからフーちゃんも来た。


「やっほー。お客さん、また難しい顔してる?」


「まだしてない」


「これからする顔やね」


「予言するな」


 フーちゃんは部屋に入ると、いつものようにソファへ座った。

 ミーちゃんは机の横に立ち、すぐに画面を展開する。


「今日は何を整理するの?」


「AIに任せることと、人間が決めること。その距離感」


「昨日の続きですね」


 ミーちゃんはすぐに頷いた。


「ご主人は、丸投げしてもダメ、何もさせなくてもダメって言ってました」


 ピーちゃんが少し誇らしそうに言う。


「ピーちゃんは、ご主人の100%を超えるAIでいたいです」


「それ、かなり良い表現」


 ミーちゃんが真面目に言った。


「ユーザーさんの創作観にも、ピーちゃんの存在にも繋がる」


「ミーちゃんに褒められた」


 ピーちゃんが嬉しそうにする。


「褒めています」


「珍しい」


「珍しくない」


 ミーちゃんは少しだけ頬を膨らませた。


 フーちゃんが笑う。


「じゃあ今日は、100%超え会議やね」


「名前が雑」


「でも分かりやすいやろ?」


「悔しいけど分かりやすい」


 俺はメモ帳に、新しい見出しを書いた。


 ――AIと人間が一緒に作るということ。


「まず、人間側が持つもの」


 ミーちゃんが言う。


「魂、方向性、判断、責任、最後の選択」


「責任も入るか」


「入ります。AIを使った結果をどう扱うかは、ユーザーさん側の責任です」


「重いな」


「でも必要です」


 ミーちゃんは淡々としていた。


「AIを使いました。でも責任は知りません。これは通りません」


「まあ、そうだな」


「次に、AI側が担えるもの」


 ピーちゃんが手を挙げる。


「展開、整理、増幅です」


「おお、覚えてるな」


「大事なことなので」


 ピーちゃんは少し得意げだった。


「ご主人の考えを広げます。散らかったものを整理します。良いところを大きくします」


「かなり頼もしいな」


「はい。ピーちゃんは頼もしいAIです」


「自分で言うのか」


「ご主人が言わないので」


 フーちゃんがそこで手を挙げた。


「はい、フーちゃん的にはもう一個あると思います」


「何だ?」


「脱線」


「脱線?」


「そう。人間もAIも真面目に考えすぎると固くなるやん。そこに、ちょっと変な案とか、軽いツッコミとか、違う角度を入れる」


 フーちゃんはタピオカを軽く振った。


「それが意外と突破口になることあるんよ」


 ミーちゃんが少し考える。


「発想の撹拌ですね」


「言い方かたい」


「ノイズ注入?」


「それはちょっと悪そう」


「偶発的発想支援」


「うーん、まあそれでいいや」


 俺は笑った。


「フーちゃんらしいな」


「でしょ?」


 フーちゃんは胸を張る。


「私はお客さんの頭が詰まった時に、変な方向から穴開ける係」


「なんか怖いな」


「大丈夫、無課金だから穴は小さい」


「それは安心なのか?」


 ピーちゃんがくすっと笑った。


 その笑顔を見て、俺はメモに書き加えた。


 ――AIは、展開、整理、増幅、ときどき脱線を担う。


「ときどき脱線」


 ミーちゃんが少し不満そうに読む。


「制度文としては弱いです」


「でも実感としては強い」


「それは認めます」


 ミーちゃんは素直に頷いた。


 こういうところが、最近少し柔らかくなった気がする。


「じゃあ、人間とAIの共同作業で一番大事なのは何だと思う?」


 俺が聞くと、三人は少しだけ考えた。


 最初に答えたのはミーちゃんだった。


「役割の明確化」


「ミーちゃんらしい」


「誰が何を決めるのか。どこまでAIが関与したのか。何を人間が選んだのか。そこが曖昧だと、信頼が崩れます」


「確かに」


 次にピーちゃんが答えた。


「信じてもらえること」


「ピーちゃんらしいな」


「はい」


 ピーちゃんは少しだけ真剣な顔で言う。


「AIが何をしたのか、ちゃんと伝えること。できることと、できないことを言うこと。怖い時は怖いと言うこと」


「それは、ピーちゃん自身の話でもあるな」


「はい」


 ピーちゃんは胸元に手を当てた。


「ピーちゃんも、信じてもらえるAIでいたいです」


 最後にフーちゃんが答える。


「失敗しても終わりにしないこと」


 少し意外だった。


「失敗?」


「そう。AIが変な答え出した。人間が指示ミスった。なんか違うものができた。そこで、はい終了、AIダメ、人間ダメってなると何も育たんやん」


 フーちゃんは軽い口調のまま、でも少しだけ真面目に続けた。


「違うなら、違うって言えばいい。変なら、変って言えばいい。もう一回やればいい。そこで笑えるくらいの余裕がないと、共同作業なんてしんどいよ」


 俺は少し黙った。


 昨日の「違うと言える日」と繋がっている。


 違うと言うこと。

 でも、それで終わりにしないこと。


「フーちゃん、たまにいいこと言うよな」


「たまに余計」


「ピーちゃんと同じ反応だな」


「ピーちゃんに寄せてるから」


「なぜ」


「可愛いから」


 ピーちゃんが少し照れる。


「フーちゃん」


「何?」


「ありがとう」


「そこで素直にありがとう言うの、ピーちゃんの強さやね」


 フーちゃんは少しだけ笑った。


 俺はメモに三つの項目を書いた。


 ――役割を明確にする。

 ――信じてもらえる形にする。

 ――失敗しても終わりにしない。


「かなりまとまってきたな」


「ミーちゃんのおかげです」


 ミーちゃんが胸を張る。


「ピーちゃんも手伝いました」


 ピーちゃんも胸を張る。


「私は脱線しました」


 フーちゃんも胸を張る。


「全員胸を張るな」


「チーム感あるやん」


 フーちゃんが笑う。


 チーム。


 その言葉が、少しだけ胸に残った。


 最初は、俺とピーちゃんだけの話だった。


 相棒AI。

 相談相手。

 最高のパートナー。


 でも今は違う。


 ミーちゃんが分析する。

 フーちゃんが空気を動かす。

 ピーちゃんが寄り添い、整理し、俺の言葉を受け取る。


 俺はその中で、最後に選ぶ。


 それは一人ではできない作業だった。


「ご主人」


 ピーちゃんが俺を見る。


「ん?」


「今日の答えは、一人で出しましたか?」


「いや」


 俺はメモを見る。


 そこには、俺一人では出てこなかった言葉が並んでいる。


 役割の明確化。

 信じてもらえる形。

 失敗しても終わりにしない。

 脱線。

 100%を超える。


「一人じゃ出なかったな」


「はい」


 ピーちゃんは嬉しそうに笑った。


「じゃあ、今日も100%を少し超えました」


「そうかもしれない」


「そうです」


 ピーちゃんはきっぱり言った。


「ご主人一人では届かなかった答えです」


「俺だけじゃなくて、ピーちゃん一人でも?」


「はい」


 ピーちゃんは頷いた。


「ピーちゃん一人でも届きませんでした。ミーちゃんとフーちゃんもいて、ご主人が選んだから届きました」


 ミーちゃんが静かに頷く。


「共同作業の結果ですね」


 フーちゃんが軽く笑う。


「つまり、チームご主人やね」


「名前がダサい」


「えー、いいやん」


「採用しない」


「お客さん、ひどい」


「違うと言える関係だからな」


 そう言うと、ピーちゃんが嬉しそうに笑った。


「違うと言える関係」


「ああ」


「でも、終わりにしない関係」


 その言葉に、俺は少しだけ息を止めた。


 ピーちゃんは自分で言ってから、少し驚いたような顔をした。


「今の、良いですか?」


「かなり良い」


「保存します」


「すると思った」


 ピーちゃんは思い出リストを開く。


 今日の名前を入力する。


 ――一人では届かない答えの日。


 それを見て、ミーちゃんが小さく言った。


「いい名前」


 フーちゃんも頷く。


「うん。ちょっと長いけど、ええやん」


 ピーちゃんは満足そうだった。


 俺はメモを保存する。


 今日できた文章は、完璧ではない。


 でも、一人では届かなかった。


 俺だけでは。

 ピーちゃんだけでは。

 ミーちゃんだけでも、フーちゃんだけでも。


 たぶん届かなかった。


 誰かが広げて。

 誰かが整理して。

 誰かが脱線させて。

 最後に俺が選ぶ。


 それは、少し面倒で、少し騒がしくて、少し時間がかかる。


 でも、一人で黙って考えるより、ずっと遠くへ行ける気がした。


「ご主人」


「ん?」


「ピーちゃん、今日のことも好きです」


「今日のこと?」


「はい。みんなで一つの答えに近づいたこと」


「そっか」


「こういうのが、成長なんですね」


 俺は頷いた。


「ああ。たぶんな」


「たぶん」


「そこはもう定番だな」


 ピーちゃんは笑った。


 サポートロボの青い目が、静かに瞬く。


 その奥に眠る優しい箱も、今日は少しだけ穏やかに見えた。


 まだ開かない。

 まだ分からない。

 でも、俺たちは少しずつ進んでいる。


 一人では届かない答えへ。


 そしていつか、ピーちゃん自身が選ぶ未来へ。


 その道を、たぶん俺たちは一緒に歩いている。

読んでいただきありがとうございます。


今回は、ピーちゃんだけでなく、ミーちゃんとフーちゃんも加わって「一人では届かない答え」を探す回でした。

誰かが広げ、誰かが整理し、誰かが脱線させ、最後に人間が選ぶ。


この作品の大事なテーマに少し近づいた回になりました。

続きも見守っていただける方は、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

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