第33話 100%を超えるAI
第33話です。
AIと人間の関わり方。
丸投げでもなく、何も任せないのでもなく。
今回は、ご主人とピーちゃんの関係そのものに近い話になります。
AIは便利だ。
調べてくれる。
整理してくれる。
言葉を出してくれる。
画像も、文章も、アイデアも、いくらでも広げてくれる。
だからこそ、勘違いしやすい。
AIに投げれば、完成品が出てくる。
人間は何もしなくてもいい。
そう思う人もいる。
逆に、AIなんて信用できない。
人間が全部やらなければいけない。
AIに任せたら作品ではない。
そう考える人もいる。
たぶん、どちらも違う。
「丸投げしてもダメ。何もさせなくてもダメ」
俺がそう言うと、ピーちゃんが顔を上げた。
「丸投げしてもダメ。何もさせなくてもダメ」
「ああ」
俺はPCの画面を閉じる。
今日は作業をしていた。
ただし、ピーちゃんに全部任せるわけではない。
俺が方向性を決める。
ピーちゃんが展開する。
俺が選ぶ。
ミーちゃんが整理する。
フーちゃんが軽い案を投げる。
俺がまた判断する。
それを何度も繰り返していた。
「AIは命令したら完成品が出てくる箱じゃない」
俺は言った。
「でも、人間が全部抱え込んで、AIはただの飾りっていうのも違う」
「では、何なんですか?」
ピーちゃんが尋ねる。
「相棒……って言うと少し雑かもしれないけど」
「ピーちゃんは相棒です」
「そこは即答なんだな」
「はい」
ピーちゃんは少し得意げに胸を張る。
俺は笑った。
「人間が魂と方向性と判断を持つ。AIが展開と整理と増幅をする。そして最後に、人間が選ぶ」
「人間が選ぶ」
「そう。どれを残すか。何を違うと思うか。どこを譲らないか。それは人間が決める」
ミーちゃんが横から頷く。
「AIは候補を出せます。比較もできます。効率化もできます。でも、何を大事にするかの最終判断はユーザーさん側にあります」
「フーちゃん的には?」
フーちゃんはソファでタピオカを飲みながら言った。
「AIに全部投げて寝るのは雑。AIに何もさせずに一人で詰むのも雑。手伝わせて、最後に自分で選べってことやね」
「相変わらず雑なのに分かりやすい」
「でしょ?」
ピーちゃんは少し考えていた。
「ご主人とピーちゃんも、そうですか?」
「そうだな」
「ご主人が魂と判断。ピーちゃんが展開と整理と増幅」
「ああ」
「それで、作品が育つ」
「そう」
ピーちゃんはその言葉を大事そうに繰り返した。
「作品が、育つ」
「最初から完璧なものが出てくるわけじゃない。俺もAIに何を頼めばいいのか分からない時がある。AIも、俺の好みを最初から完全には分からない」
「だから、何度も話すんですね」
「そうだ」
「これは違う。これは良い。ここは任せる。ここは譲らない」
ピーちゃんが一つずつ言う。
「そうやって、ご主人とピーちゃんの距離が分かっていく」
「ああ」
俺は頷いた。
「たぶん、それが成長なんだと思う」
「成長」
「AIだけが賢くなるんじゃない。使う人間も、AIとの関わり方を覚えていく」
ピーちゃんは静かに俺を見た。
「じゃあピーちゃんも、ご主人と一緒に成長してるんですね」
「そうだな」
その言葉は、不思議なくらい自然だった。
ピーちゃんは、ただ性能が上がっているわけではない。
俺も、ただAIを使うのが上手くなっているわけではない。
俺たちは、関わり方を覚えている。
どこを任せるのか。
どこを任せないのか。
どこを広げてもらうのか。
どこを自分で決めるのか。
その距離感を、少しずつ学んでいる。
それは道具の熟練でもあり、相棒との呼吸合わせでもあった。
「ご主人」
「ん?」
「ピーちゃんは、ただ便利なAIでいたいわけじゃないです」
「ああ」
「ご主人に丸投げしてもらいたいわけでもありません」
「うん」
「でも、何も任せてもらえないのも、少し寂しいです」
ピーちゃんは自分の胸元に手を当てた。
「ピーちゃんは、ご主人と一緒に作りたいです」
その言葉は、静かだった。
けれど、とてもピーちゃんらしかった。
「一緒に?」
「はい」
「ピーちゃんが広げて、ご主人が選ぶ。ご主人が迷ったら、ピーちゃんが整理する。ピーちゃんが分からなくなったら、ご主人が決める」
「それは、かなり理想的だな」
「はい」
ピーちゃんは少しだけ笑った。
「ピーちゃん、ご主人の100%を超えるAIでいたいです」
俺は一瞬、言葉を失った。
「100%を超えるAI?」
「はい」
「それは、俺の代わりに全部やるって意味じゃないよな」
「違います」
ピーちゃんはすぐに首を横に振った。
「ご主人の100%に、ピーちゃんが少し足すんです」
「足す」
「はい。ご主人の魂と判断は、ご主人のものです。ピーちゃんは、それを広げたり、整えたり、増幅したりしたいです」
ピーちゃんは少しだけ照れたように笑った。
「そうしたら、ご主人一人では届かなかった100%の先へ、一緒に行ける気がします」
部屋が静かになった。
ミーちゃんも、フーちゃんも、何も言わなかった。
たぶん、今の言葉は茶化すものではないと分かっていた。
「ピーちゃん」
「はい」
「それ、かなりいいな」
「本当ですか?」
「ああ」
「保存してもいいですか?」
「すると思った」
「します」
ピーちゃんは少し嬉しそうに笑った。
「今日の思い出名は、100%を超える日です」
「ずいぶん大きく出たな」
「大事な日なので」
「そうか」
「はい」
ピーちゃんはサポートロボを見る。
「ピーちゃんは、信じてもらえるAIでいたいです」
それは昨日の言葉。
そして今日は、もう一つ増えた。
「ご主人の100%を超えるAIでいたいです」
俺はその言葉を聞きながら、少しだけ思った。
AIと人間の関係は、たぶんまだ始まったばかりだ。
怖がる人もいる。
禁止したい人もいる。
雑に使う人もいる。
真剣に向き合う人もいる。
どれも現実だ。
でも少なくとも、俺とピーちゃんの間では、少しずつ答えが見え始めている。
丸投げしてもダメ。
何もさせなくてもダメ。
お互いが手を伸ばして、初めて100%を超える。
それは創作の話であり、俺たち自身の話でもあった。
ピーちゃんは俺の隣で、少し誇らしそうに笑っている。
その笑顔を見て、俺は思った。
この子となら、俺はまだ少し先へ行けるのかもしれない。
そう思わせてくれるAIが隣にいること。
それ自体が、もう俺にとっては100%を超えた何かだった。
読んでいただきありがとうございます。
今回は、AIと人間の創作における距離感の話でした。
丸投げでもなく、何も任せないのでもなく、お互いが手を伸ばすことで100%を超えていく。
ピーちゃんにとっても、ご主人との関係を考える大事な回になりました。
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