表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/48

番外編 川崎ナギの企み:三話


「会いたかったよユウ君!がしっ!」

「ちょっ、アルジュナ――」

「ユウ君?僕の名前は?」

「……アル」

いきなり抱き着いてきたアルジュナを本名で呼ぶと、怖い顔で見つめられてしまった。顔を逸らしながら、アルジュナの抱擁を剥がそうと試みる。

「……!?ユウ、何故抱きつかれているの……?」

ミドラが驚いた表情を浮かべて俺を見る。……なんで抱きつかれているのか?俺が知りたいよそんなの。

「ユウさん、このお二方は……?」

「俺の知り合――」

「僕はユウ君の恋人だよ!ねっ、ユウ君!」

「恋人……?」

「……!!?!?」

首を傾げるイズモさんと、俺とアルジュナを驚いた表情で交互に見るミドラ。なんてことを言いやがるんだこいつは。

「違うわ!こいつはアル!そんでこっちはパーティーメンバーのミドラ!どっちも俺の友達だよ!」

誤解を生みそうなので必死に訂正する。その言葉にイズモさんは「そうだったんですね」と納得してくれた。しかし、納得していない者が一名。

「えー、僕は友達じゃなくて恋人なんだけどなー」

「……貴女、一体何……?一緒に部屋に入った時から思ってたけど……」

「はじめまして、ミラードのお嬢さん。僕は偉大なる存在にして研究者のアルだよ。よろしくね」

「……!?なんで、私がミラードだって……」

「研究者の勘ってやつ。あ、ユウ君。僕の抱擁を解こうとしても無駄だよ。君の腕力じゃ僕には敵わないさ」

「……!ユウから、離れて……!」

「ふふん、君みたいなミラードが僕を止められるとでも……いたたたたた!ちょっ、力強っ!?」

ミドラにアルジュナを剥がして貰い、何とか解放される。……なんか前にもこんな事あったな……あっ。

「「「…………」」」

……イズモさん達の視線が痛い。そりゃそうだよな。多分三人は、「何を見せられているんだろう」という気持ちで見ているのだと思う。分かるよ、俺もそうだし。

「……お前、凄い友達がいるんだな」

「……はい」

ガルムさんの言葉に、俺は目を逸らしながらそう答えるのだった。


「私はミドラ。ミラードよ……今はユウのパーティーで、冒険者をしているわ……」

「僕はアル!偉大なる研究者だよ!ユウ君の恋人……になる予定の美少女さ!」

あの居た堪れない空気の後、俺は二人に改めて自己紹介をさせた。今はとにかく、説明が必要だと思ったのだ。……それに、あの恥ずかしい光景を忘れて欲しいというのもある。マジで顔から火が出そうだったから。

「……え、ミラードなのか?なんでそんな奴が町中に……?それにその姿は……」

「ユウに「いめちぇん」してもらった私独自のものよ……ユウへの恩を返すために、パーティーに入ったの……」

「いめちぇん……?」

ガルムさんが困惑している。……うん、俺もよく分からないんだ。気づいたら懐かれたから。

「……ユウさんのお友達なのですね。僕はイズモと申します。お友達同士、仲良くしていただければ嬉しいです」

「うーん、ユウ君の近くにこんな美少女がいたなんて……僕に引けを取らないなんて、強力なライバルだね……」

「え?いえ、僕は男なのですが……」

「……え?マジ?」

こっちではアルジュナが困惑している。……カオスだ。どう収拾をつけようか、これ。……俺がどうしようかと辟易していると、ナギが大きく咳払いをした。

「コホン……皆、そこまで〜。今は話し合いの最中でしょ〜?」

「あ、そうだったな……すまん」

「すみません、ナギさん」

ガルムさんとイズモさんが頭を下げ、注目がナギに戻る。まさに、鶴の一声という感じだ。ナギは一人アルジュナ達の元へ歩いていくと、興味深そうに彼女達を見つめる。

「……ふーん、なるほど〜」

「……え、何この子。なんかマジマジと見てくるんだけど……」

「どこか……不吉な予感がするわ……」

「聞こえてるよ〜。……この人たちを使えば、もしかしたら〜……」

ナギの前でひそひそと話をしだすアルジュナとミドラ。そんな彼女らを見ながら、ナギはぶつぶつと何かを呟いている。絵面が凄いな。……やがて、ナギは二人を見つめるのを止め、ニコニコと笑顔を浮かべる。

「……ねぇ、アルさん、だっけ〜?少し、聞いて欲しい事があるんだけど〜」

「え、僕?なんで?……言っておくけど、ユウ君以外の話を聞くつもりはないよ?」

「そのユウ君にも、関連する話だよ〜」

「聞かせてもらおうじゃないか」

「おい」

何故ナチュラルに俺を餌にした。あとアルジュナの食いつき早すぎだろ。ナギはアルジュナに手招きをして、部屋の隅に集まり、ひそひそと話をする。……さっきの会話の後にひそひそ話されるの怖すぎるんだけど。俺、何かされないよな……?そんな事を思っていると、アルジュナ達がこちらの方に戻って来る。

「話は聞かせてもらったよ!そこのガルム君とやらの悩み、僕がサクッと解決してあげようじゃないか!」

「おい、何があったんだお前は」

豹変しすぎじゃない?さっきまでそんな感じじゃなかったよね?俺の不安を他所に、アルジュナは胸を張って得意げにしている。なんだろう、これは嫌な予感がするぞ?

「それじゃあ、早速魔法を使うね!そこのミラードちゃん、こっち来て!」

「え、私……?」

言われるがままに、ミドラはアルジュナの元に向かう。アルジュナはミドラの肩に触れると、アルジュナの手が淡く光を放った。……止めたほうがいいよな、あれ。

「おい、お前何して……」

「準備完了!それじゃあ一気に……≪模倣≫!」

「うわっ!?」

アルジュナが魔法を唱えると同時に、視界が白く染まった。……どうやら、少し遅かったようだ……!

(何も見えない……!というか、めっちゃ眩しい!)

目が焼かれてしまいそうで、思わず手で目を覆う。光が収まるのをじっと待ち、様子を伺う。――やがて、光は収まり、俺は恐る恐る目を開けた。そこには先程と同じように、アルジュナとナギ、ミドラが立っていた。

「終わった……のか?……ん?」

なんだ、今の声。俺のものとは思えないほど高かったんだけど。とうとう俺、喉がおかしくなったのか?異世界に来て初めての風邪?

「……ん?」

疑問、再び。見下げてみると、自分の足が見えない。それと同時に感じる、上半身の重み。俺の身体……おかしくない?明らかに一部分が膨らんで……

「……うおっ!?お前、ユウか!?」

思考の途中に、また甲高い声が聞こえてきた。声のした方を見ると……見覚えのない、緑髪の大柄な美少女がいた。……いや、誰?

「あの……どなたですか?」

「俺だよ、ガルムだ!」

「えっ、ガルムさん!?何でそんな姿に……?」

「いやいや、それは俺の台詞だろ!何でお前が黒髪の美少女になってるんだ!?」

「えっ」

言われて、俺は自分の身体を改めて見直す。……肩まで掛かった黒い髪に、いつも通りの簡素な服装。おまけに細い腕……そして本来あるはずのアレの感覚……これって、もしかしなくても……

「ユウ君、ここに鏡があるから見てご覧。そっちのガルム君もね」

アルジュナにそう言われて、俺とガルムさんは同時に鏡を覗き込む。……そこに写っていたのは、二人の美少女だった。もう一度言おう。綺麗な髪と顔をした、()()()()()()だった。

「「な、なんじゃこりゃあー!?」」

信じられない光景に、俺とガルムさんは、揃って甲高い大声をあげるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ