番外編 禁忌の研究者:一話
最終編を掲載する前に、番外編を掲載させていただきます。最終編につながる話もあるので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
……微睡みの中で、目が覚める。顔をあげると、見覚えのある青髪が目に入った。
「ユウさん?今は授業中ですよ?私の授業で居眠りとはいい度胸ですね」
「……あ、すみません。アオイ先生」
「全く……次はないですからね?」
目の前の青髪の女性……アオイ先生。うちのクラスの担任で、美人で優しい事で生徒の人気を集めている人だ。授業は厳しいが、普段は優しい人なのでそこが人気の秘訣なのかもな。
「あ、ノート書いてねぇ……」
ボソリと呟くと、俺の机にそっとノートが置かれた。ノートが来た方を見ると、隣の席に座っている小原と目が合う。小原は笑顔で手をひらひらとさせ、他のノートに板書を写していた。おそらくさっきの俺の様子を見て、気を使ってくれたのだろう。
(後でお礼言っておかないとな。……今はノートを写そう)
俺は小原のノートと板書を見ながら、ノートを書いていった。
授業が終わり、休み時間。写し終わったノートを机の中にしまい、小原に貸してもらったノートを持って彼女の元へ。
「小原、さっきはありがとな。これ返すよ」
「あ、ユーさん!ノート写せたの?」
「そりゃばっちり。小原のおかげだな」
「えへへ……ユーさんの役に立てたなら嬉しいよ」
照れたように頬をかく小原。……彼女の名前は小原エイカ。俺のクラスメイトで、数少ない友人の一人だ。ラノベという共通の趣味を持っている、いわゆるオタク友達ってやつだ。
「それにしても、ユーさんが居眠りなんて珍しいね?よく寝れてないの?」
「いや、そんな事はないけど……」
「もし何かあったら言ってね。相談に乗るから!」
小原は手をぐっと握って笑みを浮かべる。それにつられて、俺も笑みを浮かべた。
「是非そうさせてもらうよ。……おっ、そろそろチャイムが鳴るな。じゃあ、また昼休みにな」
「うん、また後で!」
俺は席について、次の授業の準備を始めた。
昼休み。俺は小原を連れて、学校の食堂に来ていた。今日は昼を持ってきていないので、学食で済ませるしかない。
「小原は何にする?」
「うーん……この親子丼にしようかな」
「じゃあ、俺もそれで」
軽く注文を終えて食事を受け取り、適当に席を探す。今日は混んでいるのか、中々空いている席がなかった。そうやって辺りを見渡していると、ある一つの席が目に入った。
「……ねぇ、ユーさん。あれ、フラムさんじゃない?」
「お、ほんとだ。シオンさんと一緒みたいだな」
その席には、俺達の知り合いである、一つ上の先輩……フラム先輩とシオン先輩がいた。二人とは一度食堂で相席になったことがあり、いろいろと話をしていたら仲良くなった。
「席空いてないし、一緒に座っても良いか聞いてみようよ」
「……まぁ、そうするか」
小原の提案に乗り、俺達は二人の元へ歩いていく。近づいていくと、二人はこちらに気づいたのか、手を振ってくれた。
「あら、ユウとエイカじゃない」
「こんにちは、フラムさん」
「こんにちは、エイカ。もしかして席が空いていないの?」
「はい、そうなんです。もし良ければ、相席してもいいですか?」
「良いわよ。ね、シオン?」
「うむ。エイカとユウなら大歓迎じゃ!」
ということで、二人と相席をすることに。……小原ってコミュ力高いよな……俺ほとんど無言だったんだけど。まぁ許可おりたし、座ってしまおう。
「……じゃあ、失礼しますね」
「え?ユ、ユウがこっちに来るの?」
「そうですけど……なんか駄目でしたか?」
「駄目、じゃないけど……」
フラム先輩はしどろもどろになりながら、こちらをちらちらと見てくる。フラム先輩の顔は何故か赤くなっていた。俺は首を傾げながらも、フラム先輩の隣に座る。
「……っ」
「あの、先輩?大丈夫ですか?凄い挙動不審ですけど」
「だ、大丈夫よ。問題ないわ」
……すっごい目逸らされてるんだけど。え、もしかして嫌われてる?
「じゃあ、私も座りますね」
「お、エイカは親子丼にしたんじゃな。儂もそれにすればよかったのぅ……」
「シオンさんはラーメンなんですね。私もそれと親子丼にしようと思ってたんですけど、お金がなくて……」
「そうじゃな。ラーメンと親子丼。どちらも美味そうで、選ぶのが難しい……待て、今なんといった?」
シオン先輩と小原は仲良さそうに食べ物の話をしている。……俺、フラム先輩にすっごいそっぽ向かれてるんだけど。仕方ない、気まずいし何か話題を探そう。
「……あ。フラム先輩もラーメンなんですね」
「うっ……し、シオンが一緒に食べたいって言うから……普段はお弁当だし……」
「え、そうなんですか?」
「ええ、お母様が作ってくれるの。家の者に任せたらいいのに、自分が作るって言って聞かなくて……」
備考。フラム先輩はいわゆるお嬢様というやつだ。俺と違って高貴な家の出身で、割と金持ちらしい。先輩のクラスでは、それが理由でよく声を掛けられるのだとか。閑話休題。
「へぇー……その弁当って、結構豪華だったりするんですか?」
「普通のお弁当よ。お母様は料理好きだからか、全部手作りだけれど」
「マジですか」
凄いな。朝早く起きて料理をすることがどれほど大変なことなのか。俺?俺は野菜一つ切れない。
「弁当か……俺、親の弁当とか食べたことないんですよね」
「え、そうなの?」
状況一転。今度は先輩が驚いた表情を浮かべた。……親が忙しいから、俺はコンビニで菓子パンを買うか学食を使うしかないんだよなぁ……小さい頃も同じようなもんだった。
「親が忙しくてですね。中々そういう機会がなくて」
「……そう。なら、今度私のお弁当を分けて上げましょうか?」
「え、いいんですか?」
「別に良いわよ、それくらい」
フラム先輩はそう言って笑みを浮かべる。いつの間にかそっぽを向くのを止め、こちらの方を見ていた。
「ちなみに、好き嫌いはあるのかしら?」
「ないです。基本的に何でも食べますよ、俺は」
「……ふーん、それなら、私が作っても……」
……どうしたんだろう、先輩が急に小声で喋りだしたんだけど。……まぁ、いつものことか。フラム先輩はたまにこういう事あるし。なんでかはわかんない。
「ん?」
ふと小原達の方から視線を感じたので、小原達の方を向く。小原とシオン先輩は、何故か真顔でこちらを見ていた。
「どうした、小原?」
「……いや、鈍感だなーと思って」
「え、何が?」
「此奴、気づいておらんのか……フラム、大変じゃのぅ……」
シオン先輩がフラム先輩に哀れみの視線を向けている。……あれ、もしかして俺、なんかやらかしました?
放課後。俺は家に帰るべく学校を出た。小原は委員会があるとかで学校に残っている。いつも一緒に帰っている小原がいないので、今日は一人ぼっちというわけだ。……別に寂しくなんかないからな?
「さーて、家に帰って、ゲームでもするか」
今日は両親が家にいないので、テレビゲームでもやって楽しもう。買っただけでやってないゲームが結構あるし。
(……せっかくなら、誰かと一緒に遊びたいんだけどな。まぁ誘う相手もいないし)
家に帰っても、俺は一人ぼっちだ。遊びに行く友達なんか小原くらいしかいないし、フラム先輩達を誘うのもなんだか気まずい。だって俺、コミュ症の陰の者ですもの。だから一人で家で過ごすのもいつものこと――
「……あれ?」
ふと、違和感を感じた。――俺、家に帰っても一人だったっけ?それに俺は、帰る家とかなかったような……そう、何か大切な事を忘れている気がする。自分の中でも、特に大事なことを――――あっ。
(そうだ!俺、一人じゃないぞ!家に帰ったらいつも、ユウかサオリがいたじゃん!何忘れてんだ俺!)
やっと違和感が取れた。俺には大切な弟と妹がいる。そのおかげで常に一人ぼっちなんて事はなかったし、そもそも俺は家に帰ったら家事や勉強で忙しかったはずだ。ゲームなんて二人としかしたことねぇよ。
(……待てよ?じゃあ、いろいろおかしいぞ?)
振り返ってみると、他にもツッコミどころはある。小原は俺と同じ高校じゃないし、フラムやシオンは俺の学校の先輩でもない。というか世界が違う。世界が。――そして一番のツッコミどころは……
「アオイさんがガルムさんの話題を出さないなんて、ありえない!」
……あのアオイ先生は、ガルムさんの話題を一切出さない。あれではただの真面目で優しい大人の女性だ。俺の知っているアオイさんではない(失礼)。
(え、じゃあここ何処?どう見ても日本だよな?いやそれならフラム達がいるのはおかしいし……)
「痛っ……」
「あっ」
考えながら歩いていると、人と肩をぶつけた。俺は思考を止め、ぶつかった人に頭を下げる。
「すみませ……ん?」
「……ん?」
ぶつかった人と俺は互いに目を合わせる。……その人は白髪の女性で、何故かメイド服を纏っている人だった。……この人、どっかで……あっ。
「「あーっ!」」
互いに声を上げて、お互いを指さす。――こいつ、確か魔族の集落にいた……!
「頭のおかしいマッドサイエンティスト!」
「族長の娘の仲間!?なんでこんな所に!?」
知らない所で、よく知らないやつと再会しました。




