第二十七話 ワダツミ
「魔物が来たぞー!」
他の冒険者の叫びが聞こえ、わたし達は一斉に身構える。見ると、平原の向こうから、例の白い魔物達が町目掛けて進んでいるのが見えた。
「冒険者諸君、陣形を組め!決して単独で行動するな!魔物暴走の親玉が現れるまで、魔物を食い止めるのだ!」
声を大きくする魔道具でも用いたのか、アライブの声が平原に響き渡る。その声に従って、冒険者達は陣形を組み始め、魔物を迎え撃とうとする。
「……わたし達も行くわよ。ワダツミ、カグヤ」
「了解、シェリィ」
「わ、わかりました!シェリィさん!」
わたしは剣を構え、こちらに迫りつつある白い魔物――リザードマンの群れを迎え撃つ。統制の取れたリザードマンは、咆哮を上げながらこちらに迫ってくる。
「――ワダツミパンチ」
「≪マジカルソード≫!」
ワダツミが拳を振るって、先陣を切っていたリザードマンを吹き飛ばす。すかさずわたしが剣を構え、吹き飛ばされたリザードマンを斬り伏せる。
「ふわぁぁ……凄いです、シェリィさん!」
「油断しちゃ駄目よ、カグヤ。まだ敵は残っているわ」
感嘆の言葉を述べるカグヤをたしなめると、カグヤはうって変わって自分の白い短剣を構え、気をひきしめたような様子で残りのリザードマンに斬りかかる。
「え、えーい!」
「ギャギャ!?――ギャギャギャ!」
「ひっ……!?」
リザードマンはカグヤの攻撃をものともせず、逆上してカグヤに襲いかかる。すかさず、ワダツミが間に割り込む。
「――ワダツミキック」
ワダツミはリザードマンを蹴り飛ばし、空の彼方へと飛ばす。それを見て、カグヤはその場にへたり込んだ。
「す、すみません……ありがとう、ございます……」
「無問題。でも、次は気をつけて。もっと慎重に動かないと、死ぬ可能性が高い」
「は、はい……!」
カグヤはワダツミの言葉を聞いて、すぐに立ち上がって再び短剣を構える。わたしはそれを見て、少し助言をすることにした。
「カグヤ、無理に攻撃する必要はないわ。防衛戦なのだから、相手をわたし達の方に引きつけるだけでもいいの。そうしたら、わたし達が対処するわ」
「わ、わかりました……!」
「……シェリィ。次は、ワイバーン」
「――キュルルルルル!」
「来たわね。……ワダツミ!カグヤ!強化魔法を掛けるから、奴を撹乱して!その隙にわたしが倒すわ!」
「了解」
「お、お任せください!」
わたしは二人に強化魔法を掛けると、剣を構えて魔力を込める。二人はワイバーンの周りを細かく動き周り、指示通りに撹乱する。ワイバーンは苛立ったように咆哮し、目を二人に向けていた。わたしは自身に強化魔法を掛けて高く飛び上がり、ワイバーンの首目掛けて身体を捻る。
「≪ライトニングソード≫!」
「キュルルルルル!?」
ワイバーンの首を刎ねると、ワイバーンは灰のようになって消滅する。わたしはそのまま着地し、安堵の息を吐いた。
「ナイス、シェリィ」
「す、凄いですシェリィさん!一撃で倒すなんて!」
「この程度、どうってことないわ。……うっ」
「シェリィさん!?」
少し足元がふらつき、一瞬だけ視界が歪む。危うく倒れそうになったが、すかさずワダツミが支えてくれた。
「……ありがとう、ワダツミ」
お礼を述べると、ワダツミはどこか浮かない顔をしているように見えた。ワダツミは浮かない顔のまま、わたしの方を見ている。
「……シェリィ。やっぱり、無理をしすぎ」
「だ、大丈夫よ。少し立ちくらみが起きただけだから」
「……心音が不安定。目の下のクマも治っていない。少し、休むべき」
「や、休んでなんかいられないわよ。皆戦っているんだから、わたしも……」
「……シェリィは、何故取り繕うの?」
ワダツミの言葉に、わたしは言葉を止めた。その言葉が、なんだか酷く悲しいように聞こえたからだ。ワダツミの顔を見ると……眉尻が少し、下がっているように見えた。
「人間は弱い。強く見えるようで、その裏に本心を隠してる。どうしてそんな非合理的な事をするのか……ワダツミにはわからない」
「ワダツミ……?」
「……ママも、いつも同じ事をしていた。ワダツミを創って、実験を繰り返して……最期は、病気になって、眠るように死んだ。ママは辛い素振りを、ワダツミに見せなかった」
……ママというのは、わたしやコウのことではなく、ワダツミを創った人のことだろう。一緒にいると彼女を同年代の少女と勘違いしてしまうが、彼女は魔物で、わたしよりずっと長い時を生きた存在だ。ずっと遺跡に眠っていた彼女は、人間の事を、まだあまり理解できていないのだろう。生まれて間もない、子供のように。
「最初はママが死んでも、何も感じなかった。けど、シェリィやコウと会って、人間について知って……わたしは今、とても無力感を感じている。シェリィを……コウを……救ってあげたい。今、シェリィに……死んでほしくない。辛そうなシェリィを……見たくない」
「ワダツミ、あなた……まさか、悲しんでいるの?」
「悲しみ……?よくわからない。けど……とても、しっくりくる言葉」
それを聞いて、わたしは目を見開いて驚いた。……まさか、あのいつも無表情なワダツミが、悲しんでいるなんて。無論、表情は全く変わっていないが、彼女が悲しんでいるというのは……彼女の様子から、伝わってくる。
「……ごめんなさい、ワダツミ。心配を掛けてしまって」
……不謹慎かもしれないが、わたしは何故か、彼女がわたしのために悲しんでくれていることを嬉しく思った。思わず彼女の頬に手を当てると、彼女はきょとんとした様子で首を傾げる。
「……そうよね。わたしには、あなたという仲間がいるのよね」
わたしはいつも、どこか距離を置いたように人と接していた。それはコウとワダツミに命を救われた時からも同様で、わたしなんかが仲間を持つなんてという自虐心から、意図的に二人を避けていた。でも、目の前の仲間――ワダツミは、わたしの助けになりたいと言ってくれている。わたしが傷つく様を見たくないと……言ってくれている。
「……ワダツミ。あなたが心配してくれるのは、とても嬉しいわ。でも、わたしはここで引くわけにはいかないの」
わたしはワダツミにそう言って、彼女の腕をそっと身体から離す。そして自分の足に力を入れて、歩みを進める。
「……わたしは、まだ自分を認められない。コウとあなたの二人に守られていただけの、弱い人間なの。……だから、ここで引いたら、二人と肩を並んで歩けない。わたしはもっと強くなって、二人と一緒に生きていたいの」
「……!シェリィ……!」
「だから……わたしについてきてくれる?――ワダツミ」
「……うん」
後ろを振り返って、ワダツミに手を伸ばすと、彼女はそっとわたしの手を取ってくれた。彼女が今、どんな感情でいるかは、わたしにはわからない。けど、彼女との間にある絆は……少しだけ深まったように感じた。カグヤは安心したように息を吐いて、穏やかな笑みを浮かべてわたし達を見ていた。――そんな和やかな雰囲気の中、どこか喜色の混じった声が耳に届いた。
「冒険者諸君!諸君らのおかげで、魔物暴走した魔物達はほぼ壊滅状態だ!最後まで気を抜くんじゃないぞ!私達騎士団も、最後まで戦うぞ!」
アライブが全員にそう呼びかけ、冒険者達は雄叫びをあげる。言われて平原を見ていると、あれだけたくさんいた魔物が、かなり数を減らしていた。
「す、凄いですよシェリィさん!魔物がほとんどいなくなってます!」
「……驚嘆。しかも、魔物の動きも鈍い。このペースなら、おそらく魔物の根絶も容易」
カグヤとワダツミの言葉通り、戦いはもう終わりに差し掛かっていた。……あれだけ啖呵を切っておいて、戦闘がリザードマンとワイバーンだけというのも少し恥ずかしいが……無事に魔物暴走が終わりそうなら、言うことはない。
「……そうね。少し複雑な気分だけど、無事に終わるなら――」
……多分、そう言ったのがいけなかったのだろう。その油断した言葉が響いた瞬間――その場の空気が、一変するような声が響いた。
≪……ホウ。ホロウハ失敗シタヨウダナ。ナラバ、ワレガカワリニ、人間ドモヲケシサッテクレヨウ≫
それは異様な程に低く、地を這うような声色だった。周りの冒険者もその声を聞いたのか、魔物の相手をしながら辺りを警戒している。
「……あ、あれ?武器が……?」
カグヤがそう呟くと、彼女の持っていた白い短剣が、ひとりでに彼女の手を離れ、ある方向へ飛んでいく。思わず武器を視線で追うと……似たような白い武器の数々が、カグヤの短剣と同じ方向に飛んでいた。そして、武器は一箇所に集まり……何かを形作っていく。
「何、あれ……?」
誰かがそう呟いた。武器は剣やら槍やら、様々なものが揃っていた。武器は不規則に動きまわり……やがて、それは現れた。
「……骨の龍?」
わたしの目に写ったのは、骨で組まれた龍だった。生きている龍の肉をそのまま削ぎ落としたかのようなその異様な龍は、今にも動き出しそうだった。
≪……有象無象ノ塵芥ドモヨ。今ココニ、ワレハ復活ヲトゲタ。恨ムナラ、自分ノ不運ヲ……恨メ≫
低い声が響くと同時に、骨の龍は光を放ち、わたし達は顔を覆った。その後すぐに光は収まり、恐る恐る目を開けると……
「…………!」
――そこにいたのは、黒い龍だった。全てを飲み込むような漆黒の翼に、禍々しいオーラを纏った巨体、殺気の籠もった赤い瞳……一言で現すなら、それは「恐怖」そのものだった。
「……我ガ名ハ、プルートー……コノ世ノ全テヲ虚無ニ落トス、絶対ナル≪虚無龍≫……消エ失セヨ、人間ドモ……!」
「――シェリィさん!」
虚無龍――プルートーの声とカグヤの声が聞こえたのは、その一瞬だった。わたしが認識出来たのは、カグヤがわたしを押した事と……ワダツミが、わたしを引き寄せた事だけだった。
「え?」
気がつけば、目に映る人間が皆消えていた。比喩表現などではない。文字通り、人が消えたのだ。状況が理解できず、わたしは地面に崩れ落ちる。
「ど、どういう、こと……?一体、何が……」
「……ここ一帯の生体反応の消滅を確認。平原にいた全ての人間が……消滅した」
ワダツミの言葉に、一瞬で血の気が引く。皆……死んだの?アライブさんも、カグヤも……皆……?
「……嘘……」
「……!シェリィ、立って!あの黒い龍が……!」
ワダツミが言い切るより前に、わたしの前に龍が現れる。龍は、わたしを見下ろしながら、低い声で口を開いた。
「……マダ、残ッテイル人間ガイタカ。小賢シイ真似ヲ、シテクレタモノダナ」
「あなたは……龍……なの?」
「貴様ニ答エル義理ハナイ。セイゼイ、己ノ無力ヲ噛ミ締メテ消エ失セヨ」
龍がその顎を開き、そこに魔力を込め……龍の息吹に変えて放つ。わたしは、呆然としながらそれを眺めて……
「シェリィ!」
ワダツミに抱えられて、わたしはそれを避けることが出来た。恐怖でぼんやりとしていたわたしは、それで意識を覚醒する。
「ワダツミ……!?」
「怪我は、ない?」
「え、ええ。ないけど…………!?あなた、それ……!」
わたしは思わず、ワダツミのある一部を指差す。……彼女の身体の一部から金属の部品が顔を覗かせていた。よく見ると、彼女は全身にそのような傷を負っている。
「……回避、完全じゃ、なかった。損傷率、三十パーセント……」
「な、何してるのよ!わたしを庇って、そんな傷を……!」
「……シェリィを、失いたくない。そう思ったら、身体が勝手に動いていた」
「……!ワダツミ、あなた……!」
「――無駄ナ足掻キダナ」
ワダツミとわたしの前に、再び龍が現れる。龍は赤い瞳を光らせ、その場に威圧感を放つ。
「魔物一匹、人間一人ニナニガデキル。ワレカラノガレルコトハデキヌ。己ノ運命ヲ嘆キ、虚無ニ落チルガイイ」
「……そうは、させない」
ワダツミはわたしを地面に下ろし、龍に向き直る。そしてわたしの側を離れ、龍の元に歩いていく。
「ワダツミ……?」
「……シェリィは、ワダツミが守る。ワダツミに記録されている戦術と武装を全て……フル稼働してこの龍を討伐する」
「ひ、一人で行く気なの!?駄目よ、わたしも一緒に――」
「――今のシェリィじゃ、戦えない」
ワダツミはこちらを振り返らず、きっぱりと言い切った。……それは紛れもない真実だ。だって現にわたしは、ワダツミが傷を負わされたというのに、目の前の龍に怯えているせいで、まともに足が動かないのだから。ワダツミは分かっているのだ。――目の前にいるこの敵は、全力で戦わないと勝てないのだと。
「……安心して。ワダツミは、死なない」
「駄目!駄目よ!ワダツミ!」
頭じゃ分かっているのに、どうしてもわたしは彼女を引き止めようとしてしまう。こいつは、ワダツミにしか対処できない。けど、ワダツミを――仲間を放っておくなんて――!
「……武装解放。≪選バレシ勇者ノ剣≫――戦術、六百六十六パターン……敵の解析開始――解析完了」
ワダツミは右手を剣に創り変え、その青い瞳を輝かせた。
「ホウ……蛮勇ト知ッテモワレニ立チ向カウカ。造ラレシ人形ヨ」
「あなたはここで止める。――≪海神ノ導キ≫」
ワダツミは素早い動きで、龍に斬り掛かった。――龍の翼がいとも容易く斬り裂かれ、斬り裂かれた部分が消失する。
「――何ダト!?貴様、一体ナニヲ……!」
「出力上昇。稼働率八十八パーセント……第二攻撃、≪海神ノ腕≫」
ワダツミは目にも止まらぬ速さで龍の身体を切り裂いていく。龍の身体から青い血が流れ、焦った龍はその場から後ろに飛び退く。
「オノレ……!頭ニ乗ルナ、人形風情ガ……!」
龍は顎を開き、魔力の塊を放つ。それらはワダツミの方に凄まじいスピードで飛んでいき――彼女の左腕を奪った。
「……っ!ワダツミっ!!」
「……損傷率、五十パーセント。稼働に異常はなし。引き続き行動……!第三攻撃、≪海神ノ螺旋≫!」
ワダツミはわたしの叫び声を無視して、龍に向かって斬り掛かっていく。それを見て、いてもたってもいられなくなったわたしは、歯を食いしばって自分の足を叩いた。
「動けっ!動きなさいよ!わたしの身体っ!」
怖い?それが何だというのだ。今、仲間が戦っているのよ――!今動かないで、いつ動くのっ!
「ワダツミっ!」
わたしは自分の足で立って、剣を持って走った。ワダツミが戦っているのを見ながら、わたしはワダツミに強化魔法を掛ける。
「――≪強化≫っ!」
ワダツミに強化魔法が掛かったのを確認すると、わたしは剣に魔力を込める。そして精一杯の力を込めて、わたしは龍に剣で斬り掛かった。
「はぁぁぁぁぁっ!」
「――ガアッ!?人間……!マダ、動ケル力ガアルトハナ……!」
「……シェリィ!?なんで……!」
「あなたを助けるために決まってるでしょ!もう、わたしは守られてばかりじゃいられないの!わたしはあなた達と並んで、戦いたい!」
龍の攻撃を避け、一心不乱に剣で斬り掛かっていく。思いの丈をぶつけ、自分の全力を出していく。やがて、激昂したように龍が吠えた。
「――邪魔ヲ、スルナァァァァァ!」
「――うあっ!」
龍の爪の一撃が、わたしの身体に届いた。わたしは吹き飛ばされ、地面を転がって倒れる。ふと、自分の身体を見ていると――斬り裂かれた腹部が、赤く染まっていた。
「ぐ、ぅぅぅ……」
鋭い痛みがわたしを襲う。その場で蹲りながら顔を見上げると、龍は直ぐ側まで迫っていた。――それを見て、わたしは自分の死を悟った。
「……カ弱キ人間如キガ。ワレノ身体二傷ヲ負ワセタ罪……虚無ノ中デ悔イロ!」
「あっ……」
「シェリィっ!」
――その瞬間、視界が揺れた。龍の爪が振り落とされると同時に、わたしの目の前に人影が入り込んできた。ワダツミだ。ワダツミは残った右腕で龍の爪を受け止め、そのまま鍔迫り合っていた。
「ワダツミ……!」
「シェリィ……下がっていて。こいつは、ワダツミがなんとかする」
「で、でも、ワダツミは……!」
「……さっきの言葉、嬉しかった。ワダツミはもう大丈夫。シェリィの想いを背負って……こいつを倒す」
「でも……でも……!」
「下がって、シェリィ……!」
ワダツミの切羽詰まったような声を聞いて、わたしは、唇を噛んだ。わたしは腹部の痛みをこらえて立ち上がり、ワダツミに――背を向けた。
「――それでいい」
それが、わたしが最後に聞こえた言葉だった。
――――
……シェリィを上手く龍から離すことが出来た。後はワダツミが、頑張るだけ。
「コノママ捻リ潰シテクレルワ!」
龍の声が響くと同時に、ワダツミの身体が押しこまれる。横に受け流すことができればいいのだが、龍の力が強すぎて、それは不可能。このまま鍔迫り合いが続けば、ワダツミは壊されてしまう。そうすれば、シェリィにも危害が……
「……ごめん、シェリィ。コウ。これしか……ない」
脳裏にシェリィとコウの姿を思い浮かべながら、ワダツミは右腕にエネルギーを込める。……今からワダツミがしようとしているのは、全身全霊を込めた必殺技。ママがワダツミに組み込んだ……最終兵器。
「――充填率、三十パーセント……システム良好……≪創ラレシ勇者ノ剣≫……補修完了」
「……貴様、ナニヲシテイル?」
「充填率、五十パーセント……エネルギー安定……充填率、六十……七十……八十パーセント。充填が完了次第、最終兵器の起動が可能」
龍の爪を押さえ、その低い声が聞こえたが……ワダツミの身体の内側から聞こえる警告音で、それはかき消された。
「……コノ魔力……マサカ、キサマハ……!ホロウト同ジ、過去ノ遺物カ……!」
龍が何かを言っているが、ワダツミには聞こえない。……もう、ほとんどの感覚器官が駄目になっている。損傷率――八十パーセント。
「充填率――九十……九十五……百パーセント。――充填、完了」
……時間切れ。シェリィ、コウ……今まで、ありがとう。二人と出会ってよかった。昔と比べて……ずっと楽しい時間だった。
「最終兵器――起動」
……家にいた時よりも、寂しくなかったよ。
「――≪継ガレシ海神ノ剣≫」
――ワダツミの身体のほぼ全てが、一振りの剣となる。それは龍の爪を受け止めているワダツミの右手も巻き込み……やがて、ワダツミは全身を剣に変えた。
「何ダ!?コノ、力ハ……!?」
≪――ワダツミパンチ≫
……バイバイ。シェリィ、コウ。
「グァァァァァァァ――!?」
……最後に聞こえたのは、龍の断末魔だった。




