第10話 誓い
Twitter始めました。よかったフォローお願いします。
ツイ垢 @wanitokaerugeko
ローズマリーがガレディアと一緒に王宮から姿を消した後、玉座の間は静寂に包まれた。
「嘘だろ……」
「あのローズマリー様が……」
彼女に吹き飛ばされた兵士は現実を受け入れられず、座り込んだまま首を真横に振りながら狼狽え、
「なんでだよマリー……」
「どうして……」
他の勇者達も同様、彼女の衝撃の選択に立っているのがやっとで、今にも膝から崩れ落ちそうだった。
「ローズマリーが彼女を始末出来ずに逃げられてしまうのは想定していましたが、まさか裏切るとは……」
そんな中、顔を真っ赤にしながら彼女に憤怒の叫びを上げたダイヤモンドは何事も無かったかのように落ち着いており、
「起きてしまった事は仕方がありません。まずは今後の対策を立てましょう。女王の名の下に緊急会議を開きます。直ちに召集しなさい」
「「はっ!」」
兵士2人にそう言い残して玉座の間を後にし、兵士達も後を追うように出て行った。
「俺達も会議に呼ばれるだろうから行こう」
玉座の間に取り残されたブルドー達も玉座の間から去ろうとした時、
「アタシ達、マリーと戦わなきゃいけないの?」
リネアの彼女から発せられたとはとても思えない程のしおらしい声で呟かれた発言に皆は足が止まり、その場から動けなくなった。
「俺だってマリーと戦いたくない。だけど、戦うしか選択肢はないんだ」
シャインは苦虫を噛み潰したような表情でリネアに言うと彼女はシャインの胸を顔を埋めて啜り泣き、シャインは何も言わずにリネアの背中を優しくさすった。
「そうですよね。これから魔族との戦争が始まりますから、いずれはマリーとも……」
「仕方ないと言えばそうだが、やるせねえな」
「本当、なんて事をしてくれたのよ」
他のみんなもそれぞれの思いを各々口にする。
「マリー……」
ブルドーは寂しげな表情でみんなの様子を見つめながら、国を捨てて魔王の元へ行ってしまった幼馴染に思いを馳せた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
転移魔法で王宮から何とか脱出したローズマリーとガレディアは誰かの自室と思われる部屋のベッドの上に転移した。
「ここは?」
「私の部屋よ」
どうやら2人はクラウディア王国の向かいにある魔族の国、アイルハート王国の魔王城にあるガレディアの部屋に転移したらしく、彼女の部屋はローズマリーが王宮に間借りしていた部屋が5つ分は入るのでは無いかと思われるくらいに広く、赤と黒を基調としており天井には巨大で温かな光を放つシャンデリアが吊るされ、壁や天井にはきめ細やかな装飾が施されており、床には大型の獣1頭の毛皮をそのまま使った絨毯が敷かれている。部屋の中央に鎮座するベッドは2人で寝ても3人分程のスペースがある程に大きく黒い天蓋が張り巡らされ、身の回りにある調度品も何の素材を使用しているのかは分からないが一級品の代物である事が分かる程に繊細で美麗な装飾が施され、魔王に相応しい豪勢な部屋だった。
ローズマリーは彼女の部屋を一回り見渡し、
「さて、これからどうしようか」
部屋の事には何も触れず、今後の事をガレディアに聞くと、
「何でマリーは私を助けてくれたの?」
彼女はローズマリーの問いを無視して質問を質問で返した。
「何でって」
「だって私は王宮を襲撃してマリー達に戦争を仕掛けたのよ!?」
「ガレディア……?」.
ガレディアは唐突に叫び出し、ローズマリーは初めて聞く彼女の怒鳴り声に目を丸くする。
困惑するローズマリーをよそに、ガレディアは胸の内に秘めていた本音を洗いざらい彼女にぶつけた。
「あそこで私を擁護できる点なんて一つもなかった!私はマリーを裏切ったのも同然だし、あそこで私を殺すのが勇者として取るべき行為でしょ!なのに何でマリーは私を助けて……地位も、名誉も、何もかも捨ててまで私に味方したの!?」
目と鼻の先までローズマリーに顔を近づけて目を極限まで見開き、涙を流しながら叫ぶガレディアにローズマリーは彼女の腰に手を回しながら優しく包み込むように抱きしめ、耳元に口を近づけて言葉を返す。
「言ったでしょ?何があっても私は君の味方だって」
「えっ……?」
「もしかして忘れちゃった?」
予想外の返答にガレディアは鎧越しの彼女の一際大きな部分に顔が当たりながら放心状態になりかけたが、声を震わせつつも少しキツめに言い返した。
「意味わかんない。そんな約束の為にマリーは国を裏切ったの?」
「言われればそうだけど、私にとっては君と交わした大事な約束だ」
声質を全く変えず、かつて交わした小さな約束を果たす為に助けたと言うローズマリーの答えに再びガレディアの目に涙が溜まり始める。
「それと前にこんな事言ってたの覚えてる?自分が偉い立場になったら、人と魔族が手を取り合って生きる世界を作りたいって。それを聞いた時、私は君の夢を叶えたいと思ったんだ。そして今、君はその夢を叶えられる立場にいる。その為なら私は何だってしよう」
「本当に……信じていいの……?」
涙が頬を伝い、ベッドの上にポツポツと落としながら震える声でガレディアはローズマリーにもう一度質問した。
「一度決めた事だ。最後まで君と運命を共にする」
そしてローズマリーはガレディアから身体を離し、彼女の頬を流れる涙を拭きながら手を添えると、穏やかな微笑みで彼女に誓う。
「改めてここで誓おう。この先何があろうとも、私は君の味方だ」
「あ……ああ……あああああああああああ!!!!!」
ガレディアはとうとう堪えられず、大粒の涙を流しながらローズマリーに抱きつき、赤子のように泣きじゃくった。
ああ、そうか、そうだったんだ。
私があの国に1人置かれたのも、人々から蔑まれながら生きてきたのも、アイツらに襲われたのも、私の今までの不幸は全て彼女に会う為の対価だったんだ。
充分すぎる幸運だ。なんならお釣りが来るくらいだ。
今日程生きててよかったと思った日はない。私は巡り会えたんだ。暗闇の底で沈んでいた私に手を差し伸べ、2度も引き上げてくれたたった1人の運命の人に。
ローズマリーは自分の胸が邪魔をして、真下で泣き崩れているガレディアの頭を触れない事に複雑な感情を抱きつつも、穏やかな微笑みを崩さずに彼女の後頭部を何も言わずに優しく撫でる。
その様子はまるで泣いている子供を慰める母親のようだった。
次の瞬間、突然3本のナイフがローズマリーに標的を定め、風を切りながら飛んできた。
「……!」
ローズマリーは片手で3本のナイフを掴み、飛んできた箇所へ投げ返す。
「どうしたのマリー?」
「しっ誰かいる」
ガレディアの腰に手を回しながらローズマリーは目を光らせ、見晴らしのいい平原のど真中にいる獣のように辺りを警戒する。
「ほう。私のナイフを避けるどころか投げ返すとは」
ベッドの真正面から黒い霧と共に声が聞こえ、コウモリが部屋の中を羽ばたいてはローズマリーの真横を通り過ぎると一瞬で姿が消えていった。
それと同時に首の辺りまで伸ばした銀髪に黒い装束を着た赤い瞳の男が現れ、男はローズマリーを睨みながらゆっくりと近づいて氷のような冷たい声で口を開いた。
「お前は何者だ?」




