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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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81 縁談

 私の言葉を聞いて、驚きそしてかなり困ったお顔のお父様。


 そうなんだ……。だから陛下は、私の返事を急いでいらっしゃったのね。


「リリアンヌ。君は時々非常に聡いところがあるから本当に驚かされるよ……。隠してもいずれ分かるのだろうから話しておくが、その通り、国王陛下には隣国からも縁談が来ているようだ。その他にも色んな貴族が我が家こそはと縁談を勧めてきている。

……勿論、君にもたくさんの縁談が来ているがね」


 お父様、最後の私に対する慰めはよろしいのに……。


 そこで、それまで黙って私の後ろに控えていたナタリーが言葉を発した。


「失礼ながら、発言をさせていただいてよろしいでしょうか?」


 お父様はナタリーが陛下側の発言をしたいのだと察して、「どうぞ」と許可した。


「ご家族のお話に割り込みまして、申し訳ございません。陛下の臣下として意見を述べさせていただきたく存じます。

今、陛下にたくさんのご縁談が来ている事は事実でございます。ですが、縁談は陛下が国の英雄となられた時からそれは山のように来ていた、と聞いております。そしてそれらに陛下は一切見向きもされなかったという事も。

陛下は今まで王位も何も望まず、ただ国の為民の為に尽くされてきました。その陛下がただ一つ望まれた事、それがリリアンヌ様でございます。

国の為に隣国との縁談が必要というのなら、今までの王家でするべきだったのです。今までこれだけ国の為に尽くされてきた陛下が犠牲になる事ではないのです。そして他の貴族等論外。

我ら以前から陛下を主として仕える者は、陛下の望みであられるリリアンヌ様が王妃となられる事を望んでおります」


 山のような縁談……。それは、そうなのでしょうね……。むしろ何故今まで陛下が独身だったのかが不思議で仕方がないですもの。それこそ、国の英雄であり王弟、公爵でもあられたし、黒の美丈夫と言われるほどの美形で、軍を率いてこられ現在も鍛えていらっしゃるからそれはもう素晴らしい筋肉美。服を着ていらっしゃっても分かるわ。筋肉モリモリという訳でもなくて逆三角形の理想的な体型よね。お側に寄るとすごくいい香りがするし……。そして何よりとてもお優しいのですもの……! 老若男女問わず皆に慕われるのも本当に頷けるほど、色んな細やかな心遣いの出来る素晴らしい方だわ。何よりあの美しい金の瞳で見つめられたら嘘などつけないし、彼の瞳に吸い込まれてしまいそうになるわ……。それから彼の手はとても……。


「リリアンヌ?」


 はっ!

 お父様から声をかけられて、私は我に返った。あれ? 私ったら何を考えていたのかしら……!


「ッなんでもございませんわ。少し、色々、考えてしまって……」


 3人共、そうだろうね……と頷かれた。私の陛下に対する妄想には気付かれていないようでホッとしました!


「そのような訳でございますので、リリアンヌ様が他の令嬢方や隣国の縁談を気になさる必要など全くございません。むしろリリアンヌ様に万一断られるような事にでもなりましたら、陛下は力をおとされこの国がどうなるかも怪しくなるかと思われます」


 ここは陛下愛の強い側近の方々の強い思いなのね。けれど……。


「でも国の一部の貴族の方々は、昔我が国に『元王女』の件で落ち度があった事から隣国との縁談を勧めてきている、という訳ね。上手くいけば隣国との友好、国の安定、と全てが丸く収まるのだから。

……でも私が言うのはおかしいけれど、今の状態の隣国から妃をいただくというのは諸刃の剣よね。勿論良い方に向かうかもしれないけれど、場合によっては敵の間者を国の1番の懐の奥に入れてしまう事になるのだから」


 昔からの国同士の政略結婚というのはそういうものかもしれないけれど……。戦争を避ける為の王族同士の結婚はよく聞く話だわ。友好国同士だけの話ではない。

 でも敵国の場合の結婚は、人質的な要素があったかと思うけれど、それも虚しい話よね……。あぁ、陛下が犠牲になるというのはそういう意味ね。


「戦争の脅威は勿論恐ろしい事だけれど、今我が国は体制の立て直しで不安定とはいえ、そこまで隣国に足元を見られるような状況ではないはずでしょう? 何故ここで陛下がお困りになるほど隣国との縁談を推す声が強いのかしら?

14年前から我が国は軍備もしっかり整えているはず。14年前のような不意打ちも難しいでしょうし、普通に戦ったなら相手にも多大な被害があるでしょう。そのリスクを負ってまで隣国が戦争を仕掛けてくる可能性を考え、それを避ける為の縁談を強く勧めるのだとしたらそれもおかしな話よね。

この状況でまだ敵対要素の強い隣国の妃を迎えるのは、我が国に利点より脅威の方が大きいと思うのだけれど……。

その隣国との縁談を推す方々はその辺りをどうお考えなのかしら……」


 と、私はそこまで呟いてから、はっと周りを見た。3人は驚いた顔で私を見ていた。


「リリアンヌ……。君はまるで国の重鎮のようだね……。フォートナム公爵も、全く同じことを仰っていたよ。

そして、その隣国との縁談を推す方々にその辺りの考えを示せと詰め寄られた。もしや隣国との利害関係があるのかと議会はかなり紛糾したのだ。隣国との戦争で我が国は酷い目に合ったけれども、戦後にその隣国から甘い汁を吸った貴族達もいると聞く。案外に我が国にそのような貴族が一定数いて隣国側の者がいるようなのだ」


 お父様は苦々しいお顔で言われた。




お読みいただき、ありがとうございます。


途中、リリアンヌは陛下の素敵なところを考え出したら止まらなくなってしまいました……。

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