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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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80 後見

「そうなのか……。私もその時に陛下よりお話を伺って、それはもう、腰が抜けるほどに驚いた」


「お父様……。まだそのようなお年ではないでしょう?」


 お父様は「ものの例えだよ」と苦笑いをされた。


「なんと言っても、我が国の三大公爵家……、今は二大公爵家となった訳だが、その2つしかない公爵家、更に2つの侯爵家までもが後見に名乗りをあげてくださっているのだぞ? 他にも声をあげてくださった貴族もいたと聞くし、本当になんとも光栄な事だ……。あぁ、養女にいくという意味ではないそうなので、それには本当に安堵したがね。

そして少なくともその4つの家からは、リリアンヌが王妃となる場合の後見も勿論させてもらう、とのお言葉をいただいているのだよ」


 王妃になった時の後見⁉︎


「と、言う事は……。その4つの家、シュバリエ公爵家、フォートナム公爵家、ワーグナー侯爵家、ソドムス侯爵家は、陛下が私にプロポーズする事をご存知、だったという事ですわね……」


「そういうことになるね」


 お父様は事もなげに仰ったけれど、そのお家の方々はいつそれをお知りになられたの⁉︎ そして、マーガレット様! この間お邪魔させていただいた時には、もうご存知だったということよね!

 私の顔色に気付いたお父様は、慌てて仰った。


「この間リリアンヌがワーグナー侯爵夫人のお見舞いに行った時、私が渡した書状はこの事を秘密にして欲しい、というお願いだったのだ。勿論、陛下からのお達しという事も書いたので、夫人がお話されなかったのは、そういう訳だよ」


 あの書状! そういう事だったのね。

 あら? でも……。


「お父様。これだけあちこちで緘口令をしかれても、今日私が学園に行った時点でノーマン公爵が国王陛下になられたお噂は私の耳に入ってしまっていたのではないですか?」


 明日の入学式の準備だけですぐに帰る予定だったとはいえ、今日はあのパーティーからの初めての学園への登校。

 あのまま学園に居たらパーティーでのセンセーショナルな話は勿論、新たな国王陛下の話題も登っていたに違いない。


「…それだけ国内外での貴族達の動きが思ったよりも活発だった事と、隣国が怪しげな動きを見せているからだろうね。陛下も我らもあれからほぼ休みなしだよ」


 …隣国が? それほどまでに動きがあるの?

 ゲームでは一切名前も出なかった隣国。それが現実ではこんなに影響のある国だったなんて? 

 『元王女』が嫁いでいたら縁戚となり友好な関係となっていた筈の両国。我が国からの勝手な婚約破棄により隣国は面目も潰れて相当な恨みを我が国に持った。……それから五十年近く経ってもここまでの執着を持つものなのかしら……?

 それとも、他にも何か原因があるの……?


「隣国は『元王女』との勝手な婚約破棄への怒り、14年前の戦争で手酷くやり返された事への逆恨み、そして6年前の戦争の準備段階で潰された件……。最初は分からないでもないですけれど、そのあとも随分我が国に執着しますのね? 戦争はお金もかかるし国民の命も奪い、国自体が疲弊しますわ。これだけ長期に渡り軍備にお金を使い戦争も辞さない体勢をとれるというのは、余程国が富んでいて食料等の下支えが出来るのか、反対に貧困で周りの豊かな国の資源が欲しいのか……。いずれにせよ、隣国には独裁国家的な要素がありますわね?」


 お父様とお母様は私の言葉に一瞬固まった。

 あれ?


「……リリアンヌ、君は戦争体験はほぼないハズだが、戦争のなんたるかをよく分かっているようだね……」


 ああ、ナルホド……。

 勿論私は前世でも戦争体験はなかったけれど、歴史が好きで人類が戦争や争いを繰り返してしまうたくさんの事例を、書物でだけだけれど見てきたのだ。

 でも実際は本当の戦争を分かっていないのに、分かったような口振りになっちゃったかしらね。


「学園内で見た歴史書からの、一般論ですわ。

…それから、『国内外での貴族の動き』とは? 国は今の国王陛下になる事で、皆が一致したのではありませんの?」


 そこで、お父様は少ししまった、というお顔をされた。


「……勿論、国の英雄であるノーマン公爵閣下が国王陛下となられた事で、前国王陛下や王妃殿下方がされた罪や王家への不信感はほぼ払拭された。

しかし国を立て直すとなれば、なかなか一枚岩ではいかないものなのだよ……」


 少し、お言葉を濁されているわよね?

 うん、でもなんだか少し、分かってしまった……。

 日本でも新たに総理大臣が誕生したら、次は誰が大臣になるのか、という事になる。勿論それでも揉めたのかもしれないけれど……。

 日本と違うのは、この国で絶対的な権力を持つ筈の新たな国王陛下。その国王陛下には妃がいない、という事。


 それはある意味大臣を決めるより重要で難しい、今後を左右する問題だわ。


 そしてここで隣国の動きがある、という事は……。


「国王陛下には、隣国との友好の為の縁談の話がある、という事ですね……」


 私は自分で言いながら、ちょっとした失望感から少し力が抜けてしまった……。

 勿論私だけが候補になっている訳ではない事くらい、分かっていたはずなのだけれど……。






お読みいただき、ありがとうございます!

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