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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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74 親友

「…そういえば、クリストフ陛下と王妃殿下の瞳は青色……。2人の王子の瞳も、青色なのよね……。確かゲームでは第2王子の瞳は緑、この世界は、パラレルワールドみたいなものなのかしら……?」


 そう、真奈はその美しい緑の瞳に戸惑いの色を浮かばせながら言った。


「…そうかもしれない。でもゲームでの王子の緑の瞳は、…マティアス様に受け継がれているわ。だから、私のパーティーでのドレスはゲームでのヒロインのドレスと全く一緒だったわ」


 そこで真奈はハッとした。


「…あのゲームは、私が王と結婚していた設定なのね! そういう事だったのね……。私もある意味、この世界の設定を壊してしまってたのね。でも申し訳ないけれど、私は自分で選んだこの人生に不満も後悔もなくてよ。

私は何故か、幼い頃からこの国の王家に嫌な気持ちを抱いていたの。でも公爵家の令嬢という立場上私が王子の婚約者最有力候補なのは分かっていたわ。だから話を断る方法をずっと考えていた。そんな私の様子を見て、兄も協力してくれたの。…そして、当時第2王子だったアルフレッド様推しだった父もね。フォートナム公爵家一丸となって、王家との縁談を断ったのよ」


「なるほど……。だから王家との婚約を断れたのね。…でも私はもし貴女が王妃になっていたら、卒業パーティーでの婚約破棄なんてあり得なかったと思うの。それと、婚約者がありながら学園で堂々と別の恋人を連れ歩いたり、傲慢な態度をとることもよ。真奈なら絶対にそんな事、許さなかったと思うわ」


 そう確信を持つ私に、真奈も頷いて言った。


「確かにそうね。普段の生活からして厳しく指導するだろうし、そんな公式のパーティーで婚約破棄なんてやらかそうものなら、それを知った時点で勘当ね。あり得ないわ。

…とすると、私が王妃ではゲーム通りの展開にしようとするとダメな訳ね……。やっぱりこの世界はゲームの設定にしようとする強制力があるのかしらね?」


「そうかもしれないわ……。完全にあのゲームの通りにはなっていないけれど、あらすじだけは設定通りの世界。何故この世界がこんなにもゲーム通りになろうとしていたのかは分からないけど……。

でも、そのゲームのストーリーは終わってしまった。これからは、もう自分達の行いが全て、ということよね?」


 そこで真奈は心底悔しそうな表情になった。


「そう、それなのよ〜! せっかくこの世界にいたのに、思い出したのがゲームの終了後だなんて! 私はそれが悔しくて悔しくて……! 前から分かってたなら、もっと色々見たり聞いたりゲームの雰囲気を楽しめたはずよ! 本当に悔しいったら! だからこのパーティーの事を黙っていたマティアスやハロルドには大分八つ当たりしてやったわ!」


 ちょっと、今聞き捨てならないことを言いましたよ⁉︎


「…具合が悪かったのは、本当なのよね?」


 若干、冷たい目で見てみる。


「いやぁね! 最初の1週間程は本気で寝込んだし、そのあとの1週間も、具合は良くなかったわ……。あとは、私だけを除け者にしたハロルドとマティアスへのちょっとした意趣返しよ!」


 そう言ってから、真奈はちょっと真剣な顔をして私を見た。


「そして貴女の事を、ずっと考えていたの。クッキーとパーティー前に貴女が私の名前を呼んでくれた事から、絶対莉乃で間違いないとは思ったんだけれど、会って確かめるまではやっぱり少し不安で……。普通に考えたら、あり得ない事ですもの。

私は前世で貴女が死んでからも、何かあれば貴女を思い出していたわ。何かあると莉乃ならどうしただろうって考えた……。だから、また逢えたことが本当に嬉しいの……」


 そう言って、真奈はまた一筋涙を零した。


 私は前世で自分が死んで終わりだったけれど、その後残された人達にはそれからの人生が当然ある訳で……。残された人達の私への愛があればあるだけ、色んな思いをさせてしまっていたのね……。


 私は、真奈の手をそっと上から握った。


「ごめん……。ごめんね、真奈……。そして、私も貴女とまた逢えて、本当に嬉しい……!」


 私達は泣きながら暫く手を握り合っていたのだった……。



~~~~~



「真奈? そういえば、マティアス様とカタリーナ様は順調にお話は進んでいるの?」


 一通り泣いて前世の話をしたらお腹が空いてきて、2人してフルーツタルトを食べている。


「ええ、お陰様で2人の仲は順調よ。…とは言っても、私の体調が良くないせいで、お話が進められないでいた様だけれど……。もう大丈夫よ、これからはサクサク進めるから」


 うんうん、真奈は切り替えが速いのよね。こうと決めたらそれからの行動はいつも速かった。

 私は口にタルトを入れてから、もう一つ思いつく。


「あ、ダニエル様は? モグ……」


「ちょっと、莉乃。食べてから話しなさい。…貴女、どこまで知ってるの? もしかしてマティアスから例の子爵令嬢の話も聞いてる?」


 私は必死に咀嚼してから返事をする。


「あぁ、『私が癒してあげる』っていう話なら聞いたわよ。ほら、どこから王家にマティアス様達の婚約話が漏れたのかって事からの流れで聞いたのだけれど」


「マティアスったら、いくら協力を仰ぐからって一応その時婚約者だった貴女にどこまで話しているのやら……。

まあいいわ。そこまで聞いてるのなら話は早いしね。…ダニエルにはハロルドとマティアスと私の3人で、例の子爵令嬢が兄マティアスに迫ったくだりの話をしたの。

意外な程あっさり、あの子は子爵令嬢の事は忘れると言ったわ」


 えっ⁉︎ あんなに好きだったのに? 初恋で幼い頃からずっと好きで、以前マティアス様と喧嘩される位に好きだと言ってたじゃない? 

 私が驚いていると、私を見て苦笑しながら真奈が言った。


「…それも、いわば貴女のおかげなのよ。

あの卒業パーティーで、兄達の恋の成就と好きだからこそ身を引く貴女の健気さ、そんな愛の形を見たダニエルは、それから結構色々考えていたみたい。それから例の令嬢が兄へ迫った話を聞いたから、一気に冷めてしまったみたい。…軍で鍛え直すと言って寮に入ってしまったの。暫くは帰らないと言っていたわ」


 ダニエル様が……。


「成長されたのね……」


 それを聞いた真奈がまた苦笑する。


「莉乃。貴女一応ダニエルより一歳年下だからね? そうだわ、貴女20代後半で命を終えてるから、精神年齢もその位なの?」


「それはきっとそうなのよね。だから途中からマティアス様やカタリーナ様が可愛らしく見えて仕方なかったのよ。守ってあげたくなっちゃって……」


 そうなのだ。ひと月かけて吹っ切ったのもあるけれど、私の中にはもうマティアス様への恋心は全くなくて、今は友人か弟的な思いだと思う。そしてこれから今の自分の同年代の異性に恋心を抱けるか少し不安なのよね……。


「…莉乃には、少し年上のしっかりしたお方がお似合いなのかもしれないわね」


「そんな方、いたら苦労はしないわよ〜!」


 嘆く私に、少し生温かい目で見て笑っている真奈なのだった。



~~~~~



「今日は来てくれてありがとう、リリアンヌ嬢。

母が驚くほど元気になって本当に良かった。君のお陰だよ」


「だから私はリリアンヌと話せば気鬱が取れるから、と何度も言ったでしょう?」


 親子の小気味良い応酬が続く。


「私もマーガレット様がお元気そうで安心いたしました。たくさんお話も出来てとても楽しかったですわ」


 勿論私達は2人以外の時はこの世界の人間として応対する事にした。そして時々2人で会って、その時は真奈と莉乃として話そう、と約束している。


「リリアンヌ。今回は残念な事になってしまったけれど、私が貴女を娘の様に可愛く思っているのは変わりませんわ。またこちらに遊びに来て頂戴」


 マーガレット様が、いつもの侯爵夫人スマイルで言われた。


「はい。ありがとうございます。ではこれからもマーガレット様を母の様にお慕いさせてくださいませ」


 私も、伯爵令嬢スマイルで応える。


「いいね。では私の事は兄と思ってもらえたら嬉しい」


 何故かマティアス様までこの悪ノリ親子ごっこに参戦してきたのだった。



 そうしてまた会う約束をして、私達は笑顔で別れたのだけれど――。


 私達は、『侯爵家の間者』の存在を、すっかり忘れていたのだった。

 




お読みいただき、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] リリアンヌファンです♡ 更新楽しみに待ってます(^^ゞ それに…何度も読み返せる! そこで何時も思う事が… ちょっと質問お願いしますm(_ _)m  「勿論私達は2人以外の時はこの世界の人…
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