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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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67 アルフレッド会

国の重鎮達の密談です。

「いやはや今回は……。最初はどうなる事かとヒヤヒヤしましたが……。終わりよければ全て良し! ほぼ何もかもが良い方に向かって本当に良かったですな!」


 …ここは、とある貴族の屋敷の応接間。『アルフレッド様を王にする会』、略して『アルフレッド会』の会合が行われていた。

 今日集まったのは、この国の高位貴族の5人。本当はメンバーはもっといるのだが、本日は重要な会議前という事で急遽主要なメンバーで集まった。


 会長はフォートナム公爵。産まれて間もないアルフレッド第2王子を一目見て、彼に惚れ込んだ生粋きっすいのアルフレッド至上人間だ。勿論彼の父もアルフレッド派で、産まれた時からずっと彼を守り彼の教育に携わって来た人物だ。戦後アルフレッドが国の英雄となったのを見届けて亡くなったが、それからはこの新公爵がアルフレッド派を主導している。

 …実は公爵はアルフレッドが産まれた日の朝に、神の啓示とも言える『夢』を見ている。これは死ぬまで誰にも話すつもりのない彼の秘密だ。

 クリストフ王の一歳下の45歳。ワーグナー侯爵家に嫁いだマーガレットの兄である。

 マーガレットをクリストフ王に嫁がなくていいように動いたのも、実はこの兄だ。


 そして、最初に声を上げたのはワーグナー侯爵。戦前からアルフレッドと行動を共にした戦士であり、命が関わる場所で共に居たからこそ、彼のその戦い、人となりに惚れ込んでいる1人である。

 今回はワーグナー侯爵家嫡男マティアスの将来に関わる重要な場面でもあっただけに、父である彼の感動と喜びはひとしおであると推察される。

 ちなみに、フォートナム公爵とワーグナー侯爵は義兄弟である。


「本当にその通りだ! 長年の我が家の悩みも吹っ飛びましたわ! 真に喜ばしい……! そして、ワーグナー侯爵、此度はマティアス殿を我が家に婿にいただける事、誠に喜ばしく御礼申し上げる。

今日あの時まで、あのような愚かな者が我が家に婿に入ろうとしていたなど、本当にゾッとするわ。冗談でなく、領民に申し訳が立たない事態になってしまうところだったわ……!」


 そう熱弁するのはシュバリエ公爵。彼は元々アルフレッド派であったが、カタリーナが第2王子の婚約者とされてから、特にアルフレッドに色々助けてもらうようになった。そして更に彼に心酔する様になったのだ。


「いやいや……。我が家も公爵家の婿にしていただける事、御礼申し上げます」


 と、ワーグナー侯爵も笑顔で返す。侯爵家の後継問題など色々あったが、若い2人の気持ちは決まっており、こう決まった事に侯爵ももう迷いはない。


「我が家も娘ラウラの仇がやっと取れ、安堵致しました……。勿論娘は帰っては来ませんが、安らかに眠れると信じております」


 そうしみじみ語るのは、今回新メンバーとしてこの会に招待されたソドムス侯爵である。侯爵は娘ラウラが第2王子の婚約者となった為、そのままの流れで王妃の実家ピシュナー侯爵家の派閥に入る事になってしまっていた。


「ラウラ嬢には本当に残念な事であった……。まさかあの王妃がそこまでの罪を犯しているとは思わなんだ……。そして、その王妃の派閥にいなければならなかったのは、誠に辛い事であっただろう。ラウラ嬢と第2王子殿下の婚約とほぼ同時に先代が亡くなられたのだったな……。その後すぐに向こうの派閥に入っておられたから、こちらも声をかけづらくてな…」


 フォートナム公爵が詫びた。


「いいえ。私も家督を継いだ当初は何も分からず、がむしゃらに王妃殿下や第2王子殿下の為にと働いていましたから……。あの頃の私には何を言われても聞く耳を持たなかったかもしれません。

しかし我が家も、第2王子殿下には多大な不安を感じておりましたね。従兄弟の子レナルドを我が家に迎え入れて領地経営の勉強をさせていたのは、殿下が何も出来なくとも侯爵家が傾かないようにとの配慮からでしたが、今思えばそのような者をわざわざ当主に迎え入れるのは、本当におかしな話でした……」


 ソドムス侯爵は当時を思い出したのかゲンナリした顔をした。


「当然だが、ソドムス侯爵家はお咎めなし。…では、ピシュナー侯爵家はどうなる? ラウラ嬢の件では直接の関わりなし、だが王妃の他の暴走にはある程度手を貸していたであろう? どの程度の咎めになるのか……」


 シュバリエ公爵が疑問を呈した。

 そこで、それまで黙っていたウォード伯爵が言った。


「…今回、第2王子殿下のドレスの帳簿の件で働きを見せたのが、現在財務で文官をしているピシュナー侯爵家の嫡男ですよ。彼は昔から王妃を嫌っていましたからね。あれだけの身分主義の王妃は、甥といえども侯爵家程度の子は相手にしないという徹底振りだったようで……。侯爵夫人と嫡男、侯爵と次男、という風に家でも割れていたそうですよ。最近は侯爵も王妃殿下から距離をとりつつあったようでしたが……」


 それを聞いたメンバーは思い出したようだった。


「あぁ、あの時の青年貴族か。嫡男は王妃に嫌われて余り表立った所には出ないと聞いた事があったな。王家に嫁いで家を繁栄させるはずの伯母がアレでは苦労しただろう。

…しかし気の毒だが、お咎めなしとなるのは難しいであろうな……」


 フォートナム公爵が言うと、シュバリエ公爵も同意した。


「…そうですな。余りに軽いとまた忖度か、と他の貴族達の反感を買うやもしれませんしな……。嫡男に代替わりさせ、領地もある程度没収、と言ったところですかな……」


「その辺りが妥当でしょうな」


 ワーグナー侯爵も同意し、ソドムス侯爵も頷いた。


「さて、それではこの会の本題、アルフレッド様の王位の件であるが……」


 本題に切り込んで来たフォートナム公爵に、メンバー達は身体を前に乗り出した。


「そうそう、それよ! 今回はそれがメインなのだ!」


 ワーグナー侯爵が唾が飛ぶほどの勢いで言った。


「落ち着け。まあ、気持ちは分かるが。…我らこの日の為に活動して来たのだからな!」


 シュバリエ公爵がワーグナー侯爵を諌めつつ言った。


「確かに、お気持ちは分かります。彼程、国王に相応しい方はいらっしゃらない。…エドワルド様も勿論優秀な方でいらっしゃいますが、今は皆を引っ張っていける、カリスマ的な存在が必要かと思われます」


 ソドムス侯爵も熱意を持って語る。


「そう、そうなのだ! 貴公も良く分かっておられるではないか!!」


 ワーグナー侯爵は興奮気味にソドムス侯爵を褒めた。ソドムス侯爵は少しむず痒そうな顔をしながら「当然です」と小さく答えた。


 それをフォートナム公爵は満足そうな顔で見ながら言った。


「そう。…明日急遽召集される閣議で、国王達の処遇と、次代国王についての事が議題となるだろう。そして、当然ながら全会一致で次代の国王はアルフレッド様に決まる。今度こそ、アルフレッド様ご本人にも拒否はさせない!!」


 フォートナム公爵は、片手を握りしめ手を上げて言った。


 会のメンバー達は全員、強く同意する。


 そのままメンバー達は大いに盛り上がった。…そして、少し落ち着いた頃ウォード伯爵がポソリと言った。


「ところで、アルフレッド様のご結婚についてですが……」


 フォートナム公爵は、途端に苦々しい顔になる。


「そう、それよ! それはアルフレッド様に王位を継いでいただく事よりも難しいことかもしれぬぞ! どんな才女も美女も、全くアルフレッド様には通用しなかったのだからな……!」


 ソドムス侯爵も言った。


「そうでございましたな……。とりあえず、今の高位貴族の未婚で婚約者のいない令嬢から探す事になるでしょうが……。確かマルクス侯爵のミレーヌ嬢は婚約者が居なかったと記憶しております。しかしながら、たくさん候補を挙げた方が良いでしょうし……」


 そして、シュバリエ公爵は、


「今回、これだけ愛が大事だ! という風潮になっているのだ。これは余程アルフレッド様が気にいらないと難しいぞ……」


 悩み出す3人。


 そこでウォード伯爵は、コホンッと咳払いをした。


「「「??」」」


 何かとウォード伯爵を見る3人。


「…恐れながら……。アルフレッド様には現在、気になっているご令嬢がいらっしゃいます」


「「「!!」」」


 驚く3人。


「なんと……!! それは本当か? ウォード伯爵!」


「あの、アルフレッド様に……⁉︎ 『難攻不落』の公爵に、想い人が!!」


「それは、誠か……? して、その令嬢は貴族なのか? そして、人柄は大丈夫なのか? 未婚の婚約者なしの令嬢であろうな??」


 フォートナム公爵、ソドムス侯爵、シュバリエ公爵が次々に質問して来た。

 それはそうだろう。

 

 ウォード伯爵は少し勝ち誇ったように笑った。


「貴族で未婚の、()()婚約者なしの令嬢でございます。…皆様、よくご存知かと思われる方ですよ」


 3人は少し考えた。そして、1番に気付いたのは、関わりのあるシュバリエ公爵であった。


「!! まさか! リリアンヌ嬢か!!」


 残る2人も、ああ!! と納得する。


「成程!! あの、リリアンヌ嬢か! 流石さすがアルフレッド様、お目が高い! 」


「確かに……。彼女の人柄なら、立派な王妃にお成りになるでしょう。…彼女はレナルドの妻にどうかと考えていたのですが……」


 途端に周りから、キッと睨まれるソドムス侯爵。


「いえ……! 我が息子にどうかと思う程に、この度の事に感心し、立派なお人柄と思った、という事です」


 慌てて訂正するソドムス侯爵だった。


「リリアンヌ嬢は我が妻マーガレットが気に入り是非我が家に、と望んだ出来た娘です。今回のパーティーでの行動でお分かりのように、アルフレッド様と一緒になればこの国は安泰、更に栄える事でしょう」


 ワーグナー侯爵の言葉に、マーガレットの気難しさを知っているフォートナム公爵は更に感心するのだった。



 そして、『アルフレッド会』のメンバーはアルフレッドの想いを叶える事も、この会の重要な目標と定めるのだった。





お読みいただき、ありがとうございます!


略して『アルフレッド会』…。たいして略せてませんが…。

彼らは普段からちょくちょくこの会合を開いていて、家族には飲み会の理由付けと思われています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。主人公の健気な気持ちがとても綺麗でした。 更新楽しみにしてます。応援してます。
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