表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まってしまった…!  作者: 本見りん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/167

66 伯爵夫妻の想い

「やはり……。これが、あの『夢のお告げ』の事だと思うかい?」


 カールトン伯爵家トーマスの執務室。

 卒業パーティーの夜、夕食を済ませ心身共に疲れているだろうリリアンヌを休ませてから、主のトーマス、伯爵夫人ジョセフィーヌ、執事のセバスの3人が集まって話をしていた。


「貴方……。私もどうなることかと思ってはいましたけれど……。マティアス様との婚約がなくなった、ということは『高位の者』とは、やはり……」


 伯爵夫人が少し戸惑い、言い淀む。


「……そうだね。アルフレッド ノーマン公爵の事だと、私もそう思う。少なくとも公爵は娘の事を憎からず思ってくださっている。屋敷までお送りいただいた事や髪飾りの事だけでは無い。

……ここ何日か王宮にてノーマン公爵の腹心の部下といわれているウォード伯爵に近い方々から、何度もリリアンヌの事を聞かれている。そして、この屋敷周り。……気付いているかい? 密かに警備されているのだ」


 トーマスは普段温厚で丸い人柄と称されるが、やはり伯爵家の当主。見るべきものは見ている。そして王宮での立場も、程よい立ち位置をキープしている。


「はい、旦那様。屋敷の者も、このところ街が物々しい、と言っておりましたが、多分この屋敷の周りの警備の事でしょう。衛兵の巡回も増えているようでございます。……ノーマン公爵にお訪ねいただいた翌日辺りから、と記憶しております」


 トーマスは2人を見て頷く。


「マティアス殿と婚約してから、『夢のお告げ』に本当に該当するお方が現れたと分かった時は、お告げを守れなかったことをどうしたものかと思ったものだが、まさかこのような展開になるとは……。そしてまた明日以降王宮にて確認せねばならないが、リリアンヌの話が事実ならこれは国を揺るがす一大事だぞ? そして……、もしノーマン公爵が、王位につかれたとしたら……」


 カールトン伯爵夫妻もあの『夢のお告げ』を見た時は、リリアンヌはもしや王族と結ばれるということなのでは? と思ったのだ。やはり『高位』と言われれば、王族だと思うだろう。

 しかし、エドワルド王太子は早々に公爵令嬢と婚約、結婚し、第2王子も侯爵令嬢と婚約した。

 第2王子の婚約者の侯爵令嬢が亡くなった時も、もしや? と思ったが早々に公爵令嬢と婚約。そして余り評判も良くなかったことから、これは違う、と思った。

 そして高位の公爵家の令息には既に婚約者がいた。


 あの時は、あの夢は本当だったのか? と随分疑心暗鬼になったものだ。……そしてリリアンヌももう17歳。いい加減、婚約者探しをせねばならないだろう。


 そう思っていた時に舞い込んだ、ワーグナー侯爵家嫡男との縁談。なんと侯爵夫人がリリアンヌをいたく気に入っておられるとの事。やはり嫁ぐなら相手の親に気に入られている方が良いし、なんと言っても向こうは侯爵家筆頭ともいうべき力のある家。侯爵は軍務大臣、夫人は元フォートナム公爵令嬢で、今の王妃が権力を持たないこの国の社交界で、1番力を持っていると言われている女性。

 『お告げ』はこのことだったのだと、喜んでお受けしたのだが……。


「もし、マティアス様と婚約していなければ、リリアンヌが話していたようにノーマン公爵様との出会いはなかったのかもしれませんもの。これもきっと夢の思し召しなのだと思いますわ。

……ただ……。なんと申しましょうか、もしこのままノーマン公爵様が王位につかれたとしたら、伯爵令嬢であるあの子と、立場が釣り合うのでしょうか?」


 そうなのだ。それは、『夢のお告げ』があった時からずっと考えていた。

 我が家も伯爵家の中では中の上程の歴史ある家柄と自負しているし、領地経営なども良好、他所と比べるのもおかしいがなかなかに遜色のない家と思っている。


 ……だが、相手が王族となるとまた話は難しくなる。だから昔は、その内当主であるトーマスが重要な大臣に抜擢されたりして、そのあと王族とのご縁が……、などということになるのかと思っていた。


 だが、当然? トーマスが大臣などの地位に就くことにはならなかった。まあトーマスがそのような権力思考ではなかったのもあるのだが……。

 そして、もしノーマン公爵とリリアンヌがご縁があるとしたなら、せめて公爵のままでいてくれたなら、まだなんとか釣り合いが取れたかもしれないものを……。

 

「しかし相手は、あの『難攻不落』の公爵だ。今までまるで女性に見向きもされなかった、あのお方が興味を示されたのだ。あのウォード伯爵に連なる方々が関心を持たれている様子や我が家の警備などからいって、向こうはかなり乗り気である事は確かだろう。

手段を選ばなければ、高位貴族の養女になってから嫁ぐなど、方法はいくらでもあるからね」


 『養女』

 その言葉に、夫人は哀しげな表情になった。


「もしも、『養女』になるとしても、きっと形だけだろうし大丈夫だよ。

何より、まだ今の段階では全ては憶測の話だ。彼の妃には別の者が選ばれる可能性もあるのだからね」


「そうですわね……」


 そう答える夫人と、後ろで頷く執事。


 しかし3人とも、きっとリリアンヌが選ばれるのだろう、と確信していた。



 ……そして……。


 翌日、カールトン伯爵は密かにノーマン公爵から話をされた。

 内容は、リリアンヌへの婚約の申込と、本人に返事を聞きたいので国が落ち着くまでリリアンヌには黙っていて欲しい、他の者との婚約話はそれまでは待って欲しい、との希望を聞かされたのだった。



~~~~~



「うわぁ! キレイねぇ……」


 私は卒業パーティーから3日後には、サリアのモーガン伯爵家の領地に遊びに来ていた。

 サリアのお屋敷の庭園で、シャボン玉を飛ばしているのだ。モーガン伯爵夫人が心を込めて手入れをされて、色とりどりの花が咲く美しい庭園に、ゆらゆらときらめきながら飛ぶシャボン玉……。

 なんだかとても、癒されるわ……。

 

 あれから、王都は大変な騒ぎとなった。緘口令かんこうれいもなんのその、噂というのは怖いものである。

 王妃殿下、第2王子殿下が罪に問われ、陛下も失脚という話が皆の話題にならないはずがない。しかもそれは不特定多数の者が揃った学園の卒業パーティーでの出来事なのだから、話はどこからでも漏れただろう。


 パーティーの翌日、王宮に出仕して事の次第を詳しく聞いた父トーマスは、私からある程度の話を聞いていたとはいえその騒ぎの大きさに驚いたそうだ。そしてその話の渦中に自分の娘がいて、かなりの話題となっており周りからの反応への対応に苦慮した、と屋敷に帰って話していた。


 そんな事から、騒ぎに巻き込まれない為にもモーガン伯爵にお願いし、私は暫くこちらの領地でお世話になる事になったのだ。

 そしてモーガン伯爵家の方々はあの騒ぎの話や王都の様子なども、『静養しているのだから』と私には隠してくださっている。


 お陰でここでは、サリアとこんな風に屋敷で遊んだり、街にお忍びで遊びに行ったりして、もう婚約や王都の騒ぎのことなど何も考えず、楽しく過ごさせてもらっている。


 そして……、私には毎日お花が届く。日替わりで届く素敵な花束。お陰で私の部屋に飾りきれず、こちらの屋敷中にお花が溢れている。……贈り主は、ノーマン公爵だ。


 この時の私はまだ、ノーマン公爵は婚約を解消した私のことを気遣ってお花を贈ってくださっている、と思っていた。

 ……まだ、深く意味を考えたくなかったのかもしれない。



 私は学園が始まってからの周りの『傷物令嬢』に対する反応に、少し怯えながらも毎日を過ごしていたのだった。





お読みいただき、ありがとうございます!


カールトン伯爵夫妻は、この国の大きな波にリリアンヌが巻き込まれ苦しい思いをすることが出来るだけないように、と友人であるモーガン伯爵に託しました。

モーガン伯爵家の人々は『よし来た!』と引き受けたものの、今話題のノーマン公爵から毎日届く花束、明らかに周りを固める警備の者達…に、ちょっと驚きつつ、サリアを中心にリリアンヌが自然に過ごせるように、心を砕いてくれています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ