65 両親への説明
パーティーが終わり、幼馴染のサリアにカールトン伯爵家まで送ってもらい、サリアは玄関先まで私を支えて来てくれた。
我が家の執事が迎えてくれる。
「……リリアンヌ、本当に大丈夫なのね?」
「うん、サリア、……本当に、今日はありがとう。両親には自分できちんと話すわ」
サリアはまだ心配そうに私を見ていたけれど、ふうと息を吐き私を執事に託した。
「分かったわ。……また落ち着いたら連絡して? 領地で待ってるわ」
そう言って、サリアは帰って行った。
……サリアには本当に感謝しかないわ……。
「ところで、お嬢様。今日は何故モーガン様にお送りいただいたのですか? マティアス様はお嬢様が帰られた事はご存知でいらっしゃいますか?」
執事が尋ねる。……うん、そりゃ華々しく2人で出掛けて行って帰りは(多分)酷い顔で友人に送られて帰ったら、おかしいと思うわよね。
「えぇ。……分かってらっしゃると思う。セバス、お父様とお母様は……、いらっしゃる?」
セバスは一瞬何かを察したのか顔色を変えたけれど、さすがプロ? の執事、直ぐに表情を立て直した。
「はい。ご在宅です。すぐにお呼びして参りますので、応接間でお待ちください。お茶とスイーツなどもご用意させましょう」
あ、多分、だいたい察して気を使ってくれたわね。
私はちょっと力なく、応接間に向かうのだった。
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「リリアンヌ、サリア嬢に屋敷まで送ってもらったとは、まさかマティアス殿と喧嘩でもしたのか?」
おっと、お父様、結構ダイレクトに来ましたね……。でも、現実はもっとすごいですよ……。
「……お父様、お母様。……驚かないで、聞いてくださいね。
私この度、マティアス様との婚約を解消して参りました」
ガターンッ!
お父様がひっくり返る。ソファーに座ってるのにひっくり返るなんて、器用ですのね、お父様。○喜劇の方もビックリですわよ。
「……それはッ、一体どう言う事で……ッ! ま、まさか、ノーマン公爵殿とリリアンヌを取り合って……⁉︎」
イヤイヤ、なんですのソレ……。
「……そんな事ある訳ないでしょう、お父様。話せば長くなるのですけれど……。大丈夫ですか?」
慌てふためく両親に、倒れないか心配して聞いてみる。
「……私達は、大丈夫よ、リリアンヌ……!
貴女こそ、大丈夫なの……? 目が、赤いわ……」
そう言って、そっと私の頬を撫でるお母様。
「……はい。サリアについてもらって、もう、いっぱい泣いてきましたから! 」
ニカッと、笑ってみる。て…上手く、笑えてるかは分からないけれど。案の定、2人は微妙なお顔をされた。
そして、私は今日あった事のあらましを話したのだった……。
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「では、マティアス殿は昔婚約寸前までいったシュバリエ公爵令嬢とずっと想い合っていて、今回起こったという第2王子殿下の婚約破棄騒動で、公爵令嬢が解放されたので2人は一緒になる事になった、と……」
お父様は呆然としながら言った。
「そうです。お2人は王家によって引き裂かれ、お辛い思いをされましたが、この度めでたく一緒にいられる事になりましたの」
私は満足げにいったのだけれど……。
「……なにが……、何が、お辛い思い、だ! 辛いのはお前ではないか! そのように好いた者がいるのに他の者と婚約して、あちらが空いたからそちらへ行く⁉︎ そんな、そんな理不尽な事があって良いものか⁉︎ ……いくら侯爵家とはいえ、そのような、理不尽が許されて良いのか⁉︎」
お父様は顔を真っ赤にして怒られていた。
「……そうですわ! それならば初めからそちらに操を立てて一生お独りでお待ちになっていればよろしかったのよ! ……なんて事なの、リリアンヌ……! どうして、貴女がこんな目に……!」
お母様もお怒りになりながら、……泣いておられた。
私は、この展開は想像していなくて、驚いてしまった……。私は、不甲斐ない私をお叱りになるか、嘆かれるか、だと思っていたのだ。
お父様もお母様も、私を思って、彼らにお怒りになってくださっているのだわ……!
うぅ、私は前世で結婚はしてなかったので、親の気持ちは分かってなかったかも……。でもそうよね、私も自分の大切な人が辛い目にあったら、相手の方に怒りを感じると思うもの、そういう事よね……。
でも、私はマティアス様やカタリーナ様の事を、大切な両親に悪く思われたくないわ。
「お父様、お母様。私は本当にお2人にお幸せになって欲しいと思っておりますの。その為に、私達は協力し合ってきました。
確かに、好きな人がいるのに他の人と婚約するのは不誠実ですわ。……でも、今回は結果は上手くは行きましたけれど、それまではお2人は本当に諦めておられたのです。だからこそ、マティアス様は新しい道を歩む為に新たに私と婚約されたのです。
……実は私が第2王子殿下の恋人と噂される子爵令嬢の、『卒業パーティーで第2王子殿下の婚約破棄をさせる計画』を知ってしまいましたの。そのあまりの内容に驚きましたけれど、コレは王家側から婚約を破棄してくれるチャンス、カタリーナ様が自由になれる、と気付きましたの。だから、今回の事は元々は私が計画いたしました」
私は、自分の気持ちを分かってもらう為に、両親に丁寧に説明しようと決めた。私がどうして彼ら2人の味方をしようとしたか、そして、マティアス様やその紹介で出会ったノーマン公爵、カタリーナ様やシュバリエ公爵と協力してきたことを……。私は今までの事を一通りお話しした。
「私は、自分で納得した上で今回の計画を進めたのです。それに、好きな方が不幸になるのを見てどうなさるか分からないマティアス様と一緒にいても、私は幸せになれませんわ。きっと、いずれ破綻すると思います。私は、自分の幸せの為にもこの度のことを決めたのです。
……お父様お母様、ニコラスに迷惑をおかけすることだけは、本当に申し訳ないと思っております」
「! 私達のことなど! ……リリアンヌ、お前はどうしてそんな……。いや、もう何も言うまい。本当に、リリアンヌはそれで良いのだね? 意地を張るのではなく、本当に納得しているのだね?」
お2人共、心配そうに私を見る。
「……はい。私は決して後悔致しません。
私は婚約者を失いましたが、たくさんの大切な方が出来ましたわ。マティアス様カタリーナ様、ノーマン公爵やシュバリエ公爵……。今回の事が無ければお話しすることさえも叶わない方々もいらっしゃいますもの。光栄なことですわ。
そして一応、ワーグナー侯爵は今回の件で、決して我が家に悪いようにはしない、とお約束いただいているので、多分悪い影響はないかと……。まあ、私の縁談位、ですかね……?
それも、学園卒業までにはなんとか良い方を見つけられる様に頑張りますわ!」
お2人はお互いのお顔を見られてから、私を見て言った。
「ワーグナー侯爵はご存知なのだね。……侯爵夫人は、あれ程リリアンヌの事を気に入っておられたのに……。分からないものだね」
「……侯爵夫人にだけは、お話していなかったのですわ」
「! そうなのか……」
マーガレット様……。今頃、全てをお知りになられたかしら? ……どう、思われたかしら? 黙っていた私をお怒りになっているかしら……。
私が物思いに耽ってしまっていると、お父様が仰った。
「……では、ノーマン公爵がリリアンヌを気にかけてくださっているのは……」
お父様達は、何故かノーマン公爵の事が気になるようね……。そうだわ、お父様の年代だと戦時の「国の英雄」の印象が強いから、ノーマン公爵に憧れているのよね。
「この度のことでマティアス様と婚約を解消することになる私に、とても同情して気を使ってくださっているから、というだけですわ」
……また、お顔を見合わせるお2人。
「まあ、そういうことにしておくが……。
リリアンヌ。……次の婚約のことは、暫くはおいておこう。焦って探すものでもないしね。リリアンヌの気持ちがもう少し落ち着いてから、ということにしよう」
お父様の言葉に、少しホッとした。……やはり、まだそんな気持ちにはなれないと思うから……。
「ありがとうございます。お父様。お母様。
そして、今まで話さずにいて申し訳ございませんでした。ご心配も、たくさん……、おかけして……っ」
あれ? マティアス様達のことを納得していただいて、私の婚約も暫くは考えなくていいと、安心したから?
……また、油断した私の目から、涙が出てしまって……。
手で目を押さえていた私の肩に何かが触れたと思ったら、いつの間にか私の両側にお父様とお母様が来ていて、そっと、両側から2人に包まれる様に、抱きしめられた。
私はますます安心したのか涙が溢れてしまった。そしてふと気がつくと、お2人とも泣いていた。
そうして私達は、暫く抱き合って泣き続けていたのだった……。
「お父様! お母様! 姉様もー! 早くご飯食べようよー……? アレ? 何してるの3人で? なになに、内緒話? セバスは入るなって言うし、何の話なのさー?」
……空気を読まない弟ニコラスが、突撃してくるまで。
お読みいただき、ありがとうございます。
弟ニコラスは、何か起こっている事は分かっていて部屋に突入したようです。姉リリアンヌにはしんみりは似合わない、笑わせてやる! という気持ちのようです…。




