61 第2王子の罪
すごい……! 皆の心が一つになるってこういう事なのね……! ノーマン公爵に王になって欲しいという思い、それが叶うかもしれない事で皆の心が喜びに満ちているわ!
未だに王宮の大広間での、皆の興奮は冷めない。
皆の声に戸惑うノーマン公爵がとてもお可愛らしいと思ってしまう。
そしてこれで、…これでカタリーナ様と第2王子との婚約は破棄された、そう思っていいのよね。
このまま王妃と第2王子たちが連れて行かれてパーティーが終わったら、速やかに手続きに入れるはず。…そうしたら、私と、マティアス様の……婚約も破棄して、全てが終わる。マティアス様とカタリーナ様が新たに婚約を結べるわ。
お互いの婚約破棄後すぐには発表は出来ないかもしれないけれど、でも今までの事を思ったら道は開けているのだもの。きっと大丈夫のはずだわ。
私は…、傷物令嬢になっちゃうけどね。まあ人の噂も75日、とりあえず学園を卒業する迄にお相手が見つかれば万々歳よね。お父様とお母様を悲しませたくはないし……。
ふと見ると、クリストフ国王は1人静かに項垂れている。だけどここまでの事態になったのは、王が王妃や第2王子をしっかり見てこなかったせいなのだ。そして、恐らく王自身も貴族を軽視していた節がある。…こうなっても致し方ないと思う。
そこに、場違いな声が聞こえた。
「私は! 私は何も罪を犯してはいないぞ! 兄上! 叔父上! そうでありましょう? 私が王族である事を鼻にかけたと言うが、それは罪なのか⁉︎ 私は犯罪は犯していない! ええい、衛兵! この手を離せ!」
第2王子の声が聞こえてきたが、彼を抑える衛兵に更にキツく絞められていた。
「王族の権威を落としただけでも、ある意味十分な罪だ。それに、お前は公爵家の乗っ取りをしようとしていた。…そして残念だが、お前は他にも明らかな罪を犯しているよ」
第2王子の罪を、これ以上人目のある場所で晒したくない兄エドワルドは、遠慮気味に少し戸惑いながらそう言ったのだが……。
「私が他にも罪を⁉︎ 嘘だ! 兄上は私を抹殺する為に、そのような嘘を!! 私が何をしたと言うのですか? …そんなに私が憎いのですか! 罪が本当にあると言うのなら、それを出してください!」
戸惑う兄に自分が優勢と見たのか、第2王子は勝ち誇るように兄に言った。
「ルーカス。…本当に、いいのかい? 人目のある所で罪を暴いてしまっても」
ノーマン公爵とエドワルド王太子はルーカスを心配してそう言ったのだが……。
「構いませぬ! 『罪』とやらが本当にあるのならば、是非見せてくださいませ!」
そこで、ノーマン公爵は近くにいた青年貴族に目くばせをした。 青年は1冊の冊子をノーマン公爵に渡した。
「これに、ここ最近の王家の財務状況が書いてある。…ほら、見えるかい? …ここだ。ルーカス、お前はこのパーティの為に婚約者用にドレスを仕立てているね? ドレスに合わせた宝石類もだ。…結構な、金額だね。
ここで、カタリーナ嬢に質問するよ? 君が今日着ているドレスはルーカスから贈られたものかい?」
その時、明らかに近くのマリー嬢がピクッと動いた。
そしてカタリーナ嬢が答える。
「…いいえ。私はルーカス様からの贈り物など、何一つ受け取った事がございませんわ」
これには、ノーマン公爵もおどろく。
「何一つ、…かい? 本当に?」
カタリーナ様はハッキリと言った。
「はい。婚約してからこの方、ルーカス様からは何一つ贈り物などいただいた事などごさいませんわ」
ザワッ……。
コレには、この広間にいる人々、全員がドン引きだわ……! 街に住む平民の恋人達だって贈り物位はするわよ⁉︎
「…しかし、過去の財務帳票には、定期的にルーカスは『婚約者』宛とされる支出をしているのだが……」
ノーマン公爵もまだ少し戸惑いながらも問う。
「そうは申されましても……。公爵家宛の王の在位記念の品などがある時は、王家より私にも記念品が届いておりましたが……」
「そ、それだ! それらが、私が贈っていた物だ! ほら、この女はそうやってすぐ嘘をつく! お分かりいただけたでしょう? 私がきちんと贈り物をしていた事を!」
カタリーナ様の言葉にかぶせるように仰った第2王子だけれど、婚約者に『国王在位記念品』を贈った……?
「ルーカス、それは国の文官が貴族全員に贈っている物だ。お前が贈った物ではない。そして、たくさん贈ったはずのものは婚約者に渡っていなかった。これは、王子が婚約者に贈り物をする為の経費として国が出している国のお金だ。それを婚約者に渡さず別の者に渡しているということは、『横領』という、犯罪となる」
皆の冷たい視線が第2王子に突き刺さる。第2王子の顔が青ざめ黙り込んだ。
最初は一緒に青ざめていたマリー嬢だったけれど、カタリーナ様が話された時にそちら側を見た時、ある事に気が付いたようだった。…そして、彼女はここがどこであるかも忘れて話し出した。
「ねぇ! 貴方、そこのエメラルドグリーンの瞳の貴方よ! 貴方が本物の王子様じゃない⁉︎ だって、ゲームで私は本当はこのパーティでエメラルドグリーンのドレスを着るはずだったのよ! 私はあれに憧れていたのに……! おかしいと思ったのよ。ルーカス様の瞳は青色だし、ゲームよりおバカだし……! だいたい、私がこんな扱い受ける展開になるのもおかしいわ! 貴方が本物の王子様よね⁉︎ 私がヒロインよ! 貴方と恋人になるヒロインなの!!」
マリー嬢はマティアス様に手を伸ばして主張し出した。
マリー嬢は転生者で確定! なんて、そんな場合じゃないわね……! こんな現実世界でそんな事言ってたら、本当にただの痛い人だから……!
そして、彼女は衛兵に更にキツく縛られたのだった……。
周りの人達はまたしてもドン引き、もしくはものすごく可哀想なものを見る目でマリー嬢を見ていた。
そして肝心のマティアス様は、余りの事に訳が分からずに固まっていた。
そのマティアス様を見て、顔色を変えた人物がいた。
「お前……! お前は、マーガレットの息子だね……! その緑の瞳は、間違いない……!
ッ! そうだ……! お前は確か、カタリーナと恋仲だっただろう⁉︎ 今もこんなにカタリーナの近くにいる……。お前は、お前達はルーカスという婚約者がありながら、浮気をしていたのだ! …可哀想なルーカス……! だから、贈り物をしなかったり婚約破棄をしようとしたりしたのだね……!
全ては、この2人が浮気をしていたせいなのだ!!」
ザワッ……。
またしても、王宮の広間はどよめいたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます!
マリー嬢も、ゲームでのエメラルドグリーンのドレスに憧れていたようです。第2王子から贈られたドレスを見て、『アレ??』と思っていました。




