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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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53 断罪のはじまり

 この王宮の広間に、役者は全員揃った。


 第2王子とマリー嬢、4人の高位令息達の非常識な態度には、学生達は皆普段から慣れっこではあるけれど、ここは王宮での正式なパーティー。そもそも、この公式な場で婚約者であるカタリーナ様をエスコートしていない時点で非常識極まりない事態なのだ。

 状況をわかっている彼ら周辺の人達は、どこか固い雰囲気だった。マティアス様もカタリーナ様から少し離れた所から、心配そうに様子を見ている。


 そして……、マリー嬢のドレスは見事なブルー。第2王子の瞳の色だった。ゲーム通り私リリアンヌとほぼ同じデザイン。色が違うから皆気付かないわよね⁉︎

 そしてサファイアのついた豪華なネックレスとイヤリング。…かなり、お高いんでしょうね……。


 パーティーが始まる迄はまだ少しあるはずだけど、どこか一触即発いっしょくそくはつの緊張感のあるその空気に、私は慌ててスイーツを食べていた。


 その時。

 ざわわっと空気が揺れたかと思ったら、第2王子達が移動していたらしい。


 ちょっと……! まだ、大丈夫よね? 


「お嬢様、もう少しゆっくりお召し上がりにならないと、お喉に詰まらせてしまいますわ」


 ナタリーが飲み物も用意してくれる。まあなんて気の付く方かしら……。


「えぇ、ありがとう。でも、早くしないと始まってしま……」


「カタリーナ シュバリエ!!」


 えっ……。ウソ……。


「君との婚約を破棄する!!」


 早いですってー!!


 そして、第2王子ルーカスとマリー嬢と4人の高位令息達、そしてカタリーナ様が向き合う構図が出来たのだった。



 …本当に、始まってしまいました!


 もう? ちょっと、早くない?

 私は持っていたスイーツのお皿をあやうく落としそうになった。

 

 王立学園の卒業パーティー会場のほぼ中央で、金髪碧眼きんぱつへきがんの美しい青年、この国の第2王子ルーカス オブシディアンの声がひびわたる。

 そのかたわらにはピンクの髪の美少女、その周りにはこの国の高位貴族の令息れいそく4人が……。


 そしてその前には見事な縦ロールの金髪、むらさきの瞳の美少女カタリーナが向き合っている。

 公爵令嬢こうしゃくれいじょうたるカタリーナは普段ふだんから感情を表には出さない。今回もりんとした表情で彼らを見ている。


 初めは何かの余興よきょうかと思っていた人達もあまりの雰囲気に息を呑んでこの騒ぎを遠巻とおまきに見はじめた。

 

 向かい合う1人対6人……、をかこむ卒業パーティー参加の生徒達……、のさらに後ろの位置から、私リリアンヌはこの度のこの非常事態ひじょうじたい見守みまもっている。…見守りながら、お皿に乗せたスイーツを急いで口に入れた。


「…とんでもない事になってきてるわね……」


「…本当ね……」


 いつの間にか近くにいた、幼馴染のサリアがつぶやいた。

 彼女は私の持つスイーツ用の取り皿を見て、「もう食べてたのね……」と呟きつつ、彼らに視線しせんを戻した。

 王城のスイーツなんて、なかなか食べられないわよ?


 パーティーの参加者達は皆、どうしたものかと周りをを見渡している。だけど、この国の王子と高位貴族の令息達が起こしたこの事態を、収められる人はいないだろう。

 この会場には先生方もいらっしゃっているけれど、あの方々に物申すのは難しいだろう。あとは生徒と生徒の婚約者などの貴族だけ。あの5人に敵う地位の者は今の時点ではここにはいない。


 そして私達カタリーナ様側は、私としてはゲームの強制力を考慮こうりょもして、こちら的にも婚約破棄までこの流れのままにすることになっている。王族との婚約を破棄する為には王族側から破棄してもらわないと無理なのだ。

 今『婚約破棄』を宣言されたから……。次はこれから第2王子達からあらゆる冤罪を被らされる。その冤罪に対してこの後『影』の方がカタリーナ様の身の潔白を証言してくださるのよね? ゲームでは途中から王様が入ってカタリーナ様の罪が確定するのだけれど、こちらの『影』の方の証言があれば大丈夫! …の、はず。

 …そこは、ノーマン公爵もいらっしゃるから大丈夫のはずよね!


 私はそっと取り皿を返そうとすると、ナタリーがスッと持っていってくれた。出来る女官よね……。

 そして私は次はあのスイーツよね、と視線しせんで食事テーブルをひそかにチェックした。


 そうこうしている間に、第2王子側は物語の佳境かきょうとばかりに盛り上がってきている。



「カタリーナ! 君は僕がこのマリー嬢に気持ちが向いていると思い込み嫉妬して、彼女を懲らしめようと酷いイジメを行った! いずれも僕達が早くに気付いたから大事に至らなかったものの、君がやった事は許される事ではない!!」


 王子がこう言えば、ピシュナー侯爵家次男は、


「カタリーナ嬢! 貴女はマリー嬢がルーカス様のお側にいる事が気に入らず、彼女の教科書などを破るなどという大人気ない方法でマリー嬢を貶めようとした! この、陰険女め!!」


 次には、ドリス伯爵令息。


「更には、マリー嬢に『ルーカス様に近づくな』と他の生徒の女どもと一緒に酷いイジメをしたのだ! お前はそれでも高位貴族の令嬢なのか!!」


 そして今度は第二騎士団長嫡男。


「そして遂には! マリー嬢を、階段から突き落とす、という暴挙に出たのだ! もう、お前は立派な犯罪者だ!!」


 そうして、マリー嬢。


「ルーカス様! みんな……! 私、辛かったわ……! でもその人を、責めないであげて……!」


「「「「マリー……! 君はなんて優しいんだ……!」」」」


 マリー嬢を囲む4人。


 5人はまるで子供の劇の様に、大袈裟に、自分達だけで盛り上がっていた。




「「「………」」」


 会場中が、静まりかえった。


 …私も、言葉を失った。


 あれ? 確かに、乙女ゲームの流れはこんなだったはずなんだけれど……。何か違う。何というか、学芸会みたいな……。いえ、決定的に違うのは……。


 彼らが学園でもあまりにも愚かな事を堂々としているので、学園の皆がいつも彼らの様子をよく見ていたこと。


 そして、明らかにカタリーナ様は彼らをスルーしており、彼らの様子を見ていた皆は彼女が彼らに関わっていない事を知っていること。


 更には、マリー嬢が自分で教科書を破ったりなど自分の物を壊していたり、あちこちの婚約者のいる令息に声をかけてその婚約者に文句を言われたり、自分で1人で階段から落ちるマネをしているのを、学園中のほぼ全員が見て聞いて知っている、ということだ!


 だから余計に滑稽こっけいな小芝居みたいに見えるのだわ。いや、まあ、なかなかに酷い芝居? なのだけれど。


 コレは……。『影』の方の証言は必要なかったり、する?


 彼らの暴言を、じっと聞いておられたカタリーナ様。そしてゆっくりと顔を上げ、


「それらの事は、私は一切存じ上げません。私はその全てに関わっておりませんわ。

…けれども、第2王子殿下におかれましては、私は信用するに値しない存在のご様子。

ですので、その『婚約破棄』。謹んでお受けいたします」


 …カタリーナ様! 

 私は祈るように彼女を見た。







お読みいただき、ありがとうございます!


この度、pv10万越えました!

本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします!

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