48 王妃イザベラ 2
今回は、王妃イザベラ側のお話です。
「王妃イザベラである。急ぎ王に取り次ぎを」
王の執務室。前に立つ衛兵に横柄に告げる。
王妃はそう言いながらも待つ気はなく、そのまま中に入っていく。…いつもの事だ。
「…イザベラよ。どうした?」
王もいつもの事とは思ったが、機嫌が悪そうなのは厄介だと思いながら問いかける。
王妃は王の前に立ち、怒りを爆発させた。
「どうもこうもありませんわ! どうしてルーカスの婚約破棄など勝手に決めたのです⁉︎ 」
『婚約破棄』ではなく、まだその前段階なのだが……と思うのだが、興奮している相手に余計な事は言わない。
「…閣議の際、彼方此方から苦情があがってな。学園で、街で、ルーカスは派手に遊びまわっているらしい。学生の身で遊びまわっている事だけでも外聞が悪いのに、それだけでは飽き足らずあちこちで問題も起こしているようなのだ。そしてそれを身分で無理やり解決させているとの事だ」
苦々しい顔で答える王に対して、王妃はさすが我が息子と微笑んだ。
「きちんと解決しているのならそれで良いではありませんか」
「きちんと解決しているのでは無い。『王族』だという事を盾にして無理矢理納得させているのだ。民からも不満が上がって来ているそうだ。
王妃も分かっているだろう? シュバリエ公爵家に嫁いだ『元王女』の事を。今の王家の権威は失墜している。王家だと笠にきて傲慢に振舞うなど絶対にしてはならぬ事だ」
王妃はすかさず噛み付いてきた。
「王家とは尊いものですわ! 貴族や民はもっと敬うべきなのです。周りが余りにも不敬だから、そう見えるだけなのですわ!」
王も頷きながらも言った。
「全くその通りではあるのだが……。しかし、今ルーカスがやり過ぎなのは確かだ。閣議が紛糾する程、貴族達からの不満や不信が高まっていた。
私も若い頃には色々あるものだとは言ったのだが、却って火に油を注ぐような状況になってしまった。
…そこで、アルフレッドが言ったのだ。『それならば、これ以上ルーカスが何かを起こせば婚約を破棄させるという事にすればどうですか』と……。周りの紛糾具合から、私もそれを認めざるをえなかったのだ。
他の貴族達も、『それならば』とやっとその場が収まったのだ」
王は苦々しそうに言った。
…王も、昔は王家への不信などについて理解していたはずなのに、最近は王妃の話に感化される様になっていた。
その様な思いでいれば、どうしても態度に表れる。相手もその傲慢さを感じとる。
それが、更に現在の王家に対する不信感を高める事になっている事に、彼らは気付いていなかった。
「王である貴方様にその様な事を……! それは、反逆罪ではありませんの⁉︎ なんて恐ろしい……!」
王妃は大袈裟に身震いするようなマネをした。そして、涙目で王に訴える。
「ルーカスは、普段からアルフレッド様に虐げられておりますの。出来の悪い甥だと、悪評をたてているのもアルフレッド様ですわ。『国の英雄』たるアルフレッド様にその様に言われて、良い評価をされる者などおりません。ルーカスは本当は何も悪くはありません」
『国の英雄』『初代国王の再来』
その言葉達は昔からアルフレッドの兄である王のコンプレックスを刺激してきた。王妃はそれが分かっていてそう言ったのだ。
案の定、王の瞳に怒りが宿った。
「アルフレッドが我が息子にその様な事を……! では、ルーカスにたっている、あの噂は嘘だと申すのだな?」
王妃は王が話に乗ってきた事に満足して言った。
「そうですわ。周りの貴族達はアルフレッド様に扇動されているのです。…私達の大切な息子が、その様に愚かなはずがないでしょう? まだ学生で少しばかり未熟な事を、大袈裟に悪く言われてしまっているのですわ!」
王はそれに頷き、そして怒りに燃えた。
「そこまでして、我らを苦しめようとするか、アルフレッド……!
宰相を呼べ! これからの対策を考えねばならぬ!」
現在の宰相は、王妃の弟ピシュナー侯爵。
またしても彼は姉の策略の為に呼び出され、神経を削る事になったのである……。
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