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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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43 パーティーの日

 鏡に映るのは、エメラルドグリーンの繊細せんさい豪華ごうかなドレスに、金の台座だいざにエメラルドの品の良い首飾りとおそろいのイヤリングを身に着けた、リリアンヌ カールトン伯爵令嬢。


 ゆるやかな金髪は器用きようにハーフアップにみ込まれ、薄紫うすむらさきのその瞳は見ているとまれてしまいそう。そしてその髪には……。


「何してるの、姉様」


「わっ⁉︎ ニコラス⁉︎ びっくりした……!

勝手に入って来ないでくれる?」


 思わずこの世界の令嬢の美しさに見惚みとれていた、元日本人です。我ながら、元日本人から見たらリリアンヌは本当にお人形みたいよ!

 着付きつけを終え、部屋で1人鏡に向かって『鏡よ鏡……』をしていた私です。流石さすがに世界で1番美しいとは思っていませんけどね!


「ノックはしたよ? 姉様が余りに自分に見惚みとれているから気付かなかったんだろうね。

姉様は外見ははかなげなそこそこな美少女なのに、中身はとても残念だよね……」


「そういうニコラスも見た目はそこそこな美少年なのに、話すと毒舌どくぜつだし意地悪よね。…婚約者のレイラに教えてあげようかしら?」


 お互い挑発的ちょうはつてきな目でにらみ合う。


「まあまあ! あなた達、何をしているの!

リリアンヌもマティアス様が今日のパーティーのお迎えに早めに来てくださるのでしょう? もう準備は……。まぁ……! 素敵ね……」


 部屋に私を呼びに来たお母様は、私を上から下まで見て、ほぅっとため息をついた。


「流石はワーグナー侯爵家のお仕立てになったドレスだわ。

なんて素敵すてきなの……。よく似合っているわ、リリアンヌ。

そして、その髪飾り……。やはり、着けていくのね?」


 お母様は、私の髪のななめ後ろにした、金色の髪飾りを見ておっしゃった。


「それは、そうでしょう?

だって、あのノーマン公爵からいただいたものなのよ?」


 一昨日おとついばん、先日の(芝居がかった)従者が届けてくれたのだ。…金色の、小さめだけれどとても品のある、美しい髪飾りを。


 あの従者は今回も、何か分からない(○門様じゃなかったわね…)芝居がかった口上こうじょうべてコレを持って来て、皆が呆気あっけに取られている間に髪飾りを置いて、満足そうに帰っていった。


 彼はある意味、只者ただものじゃないわよね……。


 そして残された『髪飾り』。


 あの従者が言うには、どうも卒業パーティーにつけてくれ、との事らしい。

 そして問題になるのが、その色……。『金色』

 コレは、マティアス様の髪の『金色』だと思っていいのだろうか……?


 というか、私はもうすぐマティアス様との婚約が無くなり、ノーマン公爵がそれを気の毒に思って気を使ってくださっている事を知っているけれど、家族はノーマン公爵が何故こんなに私に心をくだいてくださっているのか分からないから、不安になるのも分かるけどね……。


「とにかく、公爵様からこの卒業パーティーに、とくださった髪飾りを着けないなんて事は出来ないわよ。

それに金色はマティアス様の髪色だもの。誰もノーマン公爵様の瞳の色だなんて思わないわよ?」


 そこにいつの間にか部屋に来ていたお父様が不安そうに言われた。


「それはそうなんだが……。リリアンヌ、お前はノーマン公爵閣下とは……どういうご関係なのだ?

マティアス殿と婚約のご挨拶あいさつに行って、ま、まさか、その時に見初みそめられた、なんて事は……?」


 み、見初められ……??


「ふふふ……! いやぁね、お父様ったら、妄想もうそうすごすぎるわよ!

あの、国の英雄えいゆう、黒の美丈夫びじょうぶ王弟おうていで公爵の、ノーマン公爵閣下よ⁉︎ 私なんて相手にされる訳がないじゃ無い!

お父様ったら、我が子可愛さにそんな事を言っていたら笑われるわよ! ふふっ」


 私は大笑いしたけれど、他の誰も笑っていなかった。

 え、ちょっと! 私だけ大笑いして、ずかしいじゃない⁉︎


「コホン! …まあとにかく! 公爵様に『そんな気』などある訳はないわよ!

…あ、ほら、マティアス様が到着されたのじゃない? 馬車の音がするわ」



 私達は急いで玄関げんかん辺りまで行き、婚約者であるマティアス様を出迎えた。

 

「ご無沙汰ぶさたしております。カールトン伯爵、カールトン夫人。お元気でいらっしゃいましたでしょうか。

本日はお嬢様をお預かりさせていただきます」


 固い表情のマティアス様。

 そうよね、彼も婚約者としてこの屋敷に来るのはこれが最後になる。


 事情がどうあれ、婚約を破棄した者同士の家がこれからもこのままのお付き合いをしていく事はないんだろう。

 そして、真面目まじめ性分しょうぶんの彼はそれを非常に心苦しく思ってくれている。

 そう、確かにこの婚約破棄でダメージを受けるのはほぼ我が家だけだわ。


 私は自分のこれからする事に自分としては後悔はないけれど、この伯爵家に迷惑をかけてしまう事だけはとても申し訳なくて苦しい。


 勿論もちろん、マティアス様もワーグナー侯爵家としても、我が家に悪いようにはされないとは思うけれど……。

 コレばかりは本当にそうなってからしか、どうなるかは分からない。



  そしてマティアス様が来られた事で、先程の両親との話は途中で終わってしまったのだけれど……。

 お父様もお母様も、屋敷の者も皆どこか不安そうな顔をしていた。…ただ1人、面白おもしろそうに笑っているニコラスを除いて。



~~~~~



「この1週間、何か変わった事はなかったかい?」


 ワーグナー侯爵家に向かう馬車の中。

 マティアス様も、今日という日に緊張されているのだろう。いつもよりご表情が固い気がするわ。


「…はい。変わった事……? というか、今まで余り一緒にいる事のなかった方々がお声をかけてくださる事が多くて……。余り1人になる事が無くて、今週は第2王子達の観察かんさつが出来なかったのです……」


 私は仕事が出来ず申し訳なくてショボンとして言った。


 そう、何故かこの1週間、色んな方に囲まれて自由な時間はトイレ位だった。それだって外で待ってられたのだけれど。


「彼らの様子は、他の者たちにも頼んでいるから大丈夫、心配ないよ。

…今週は忙しかったのだね。何かパーティーの係でもしているの?」


 私達の学園は主な行事ぎょうじを学生達で行う事になっている。自主性じしゅせいを育てる為に、大体は生徒会が主となって、後は各クラスの委員や係が動くのだ。


「いえ。私は保健係で、当日は怪我けがや病人が出た時には動くんですが、特にパーティーの準備ではお仕事はないんですけれど、今週はたくさんの方が色んなお話をしてくださって……。やっぱりパーティー前で、皆様気分がよろしくて楽しげな雰囲気ふんいきになっているのでしょうかね?」


 パーティーは2年生からの参加となっているので、昨年はまだ1年生でこの独特どくとくなパーティー前の雰囲気を分かっていなかったわ。

 私はマティアス様にそう言うと、彼は少し苦々しい顔をされた。


「いつも、周りに人がいるようになったのだね? …それは、ダニエルが君に護衛ごえいを申し出てから位かい?」


 確かに、思い返すとその辺りから周りで人がたくさんいたような……。


「そうですわね。その位の時期から皆様、パーティー前で楽しげにされている気がしますわ。

確かにこういう事って準備の段階から楽しいですものね」


 なかなか入る事の出来ない、王宮でのパーティーですもの! 皆様準備段階から張り切ってらっしゃるのね。


 そう笑顔で答える私の横で、マティアス様は複雑ふくざつそうなお顔をされて呟いた。


「学生達まで巻き込んで、フィリップ殿は本気で取り込みにかかってるんだな……」


 そのつぶやきは私には聞こえなかった。


 …そして、馬車は王宮に行く前にワーグナー侯爵家に立ち寄ったのだ。


 …マーガレット様に、お会いする為に。





お読みいただき、ありがとうございます。


いよいよ、パーティー当日です!

皆、それぞれに緊張しています。そして、ノーマン公爵はリリアンヌに『贈り物』をしたようです。

『国の英雄』からの、婚約者のある娘への彼の色である『金色』のプレゼントに、伯爵家の人々はどうしたものかと悩んでしまっています。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 第2王子の観察 > が出来なかったのです… この部分に余計な改行が入っています それと、 > 主に自主性を育てる為に こちらの部分、ルビが「ししゅせい」になっています (どっち…
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