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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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36 シュバリエ公爵

「お父様!」


 カタリーナ様の部屋の扉が開き、シュバリエ公爵が入って来られた。


「話の途中に割り込んで済まないね。リリアンヌ嬢が来てるというので挨拶にと思って来たら、話が聞こえてしまって……」


 少しバツが悪そうに仰る公爵様。

 カタリーナ様と同じ金髪に紫の瞳のダンディなおじさまだ。


「お邪魔しております。シュバリエ公爵様」


 私はカーテシーをしてご挨拶する。


「私達の間でそんな堅苦しい挨拶など不要だよ。君は私達の『救世主』であり、娘の良き友人でもあるのだからね」


 救世主って……大袈裟ですよって、いうやり取りはここに来だしてからもう何回もしたので、敢えてスルーする。

 シュバリエ公爵家からすれば、あの第2王子との婚約が回避出来そうなきっかけを作った私は救世主となるらしい……。


 公爵はカタリーナ様の隣に座られた。私も机を挟んだ前の席に座る。


「公爵様。レナルド様が仰っていた、『ソドムス侯爵家と聞いて思い出すのはラウラの事だけですか』という意味をご存知なのですか?」


 公爵様は先程迄の表情から一転、固い表情になられた。


「あぁ、…知っている。

カタリーナにも話すのは初めてかもしれないね」


 そう言ってカタリーナ様を見られた。

 何を言われるのかと、カタリーナ様も表情が固くなる。

 そして、公爵は私に視線を戻された。


「リリアンヌ嬢。君は今の国王の叔母に当たる、我が母である王女の話を知っているかい?」


「…はい。だいたいの事は、つい最近ですがお聞きしました。シュバリエ公爵家に起こった悲劇も、王家への貴族の不信感の話も」


 そうだわ。シュバリエ公爵様にとってはお母様なのよね……。


「…そう。我が母が引き起こした数々の事。我が家もしかり、隣国の母の婚約者も然り。

そして……。父の婚約者だった侯爵令嬢も、然り」


 !!


 それって……、まさか……!!


 私の前でカタリーナ様も同じように驚かれている。


「…気付いたようだね。そう、我が母が婚約破棄させた父の元婚約者は、ソドムス侯爵令嬢なのだよ」


 ソドムス侯爵令嬢が、元王女に婚約破棄させられた、あの……!

 レナルド様はこの事を仰っていたのね……。

 そして今回も、亡くなったとはいえソドムス侯爵令嬢との婚約はなくなり、新たにシュバリエ公爵令嬢が婚約者になるだなんて、なんて因縁なの……!


 レナルド様はご養子とはいえ、ソドムス侯爵家のその辺りの因縁も背負って居られるのかしら……。


「…そして、今のソドムス侯爵家の養子となったレナルド殿は……、元婚約者だった令嬢がその後嫁いだ伯爵家の、その三男。令嬢の孫、という事になるね。今のソドムス侯爵もその子ラウラも1人っ子だったので抜擢されたのだろうね」


 シュバリエ公爵は、少し言いにくそうに仰った。


 レナルド様は、元王女によって婚約破棄させられた侯爵令嬢の孫……!それは、レナルド様がその事に重きをおかれるはずだわ……。

 令嬢はその後伯爵家に嫁がれたのね。少し話に聞くだけでも当時の騒がれようはすさまじかったようだから、とても苦労されたのでしょうね……。


「では……。レナルド様から見たら私は、祖母の敵で義理の妹様の敵……でもあったのですね……。

あれ程の態度を取られる訳ですわ……」


 カタリーナ様もショックを受けられたようで、ポツリとつぶやくように言われた。


「いいえ、カタリーナ様? それでもその事はカタリーナ様ご本人とは関係はございません。カタリーナ様もシュバリエ公爵家も、不幸の被害者ですもの。

 勿論もちろんレナルド様もこの不幸に絡め取られた被害者のお一人ではあるのでしょうけれど」


 私ははっきりと言いきった。


「リリアンヌ様……」


 カタリーナ様は涙を浮かべて私を見た。

 私は、大丈夫よとうなずいた。


「レナルド殿は、リリアンヌ嬢にも何かして来たのかい? その様な踏み込んだ事を言ってくるなんて……」


 公爵は心配そうに私を見ながら仰った。


「実は保健係で一緒で、2人になる事が何度かあったのです。…1度目は、私が彼らを観察している事への忠告。忠告といっても、第2王子達に気付かれない内に控えて、という親切なものでした。

2度目が今回ですわ。そして私がどうして忠告してくれたのか? と尋ねましたら……。『君達が何かやらかしてくれそうだから』と……。『それを期待しているのかもしれない』とも仰いました」


 それを聞いてお2人とも驚かれていた。


「リリアンヌ様に親切な忠告を……? そして私達が何かをする事を期待している……」


 カタリーナ様が思わずといった風に呟く。


 シュバリエ公爵も私の言葉の意味を考えあぐねている様だった。


「レナルド様は、第2王子に側近として付いているのも『すべき仕事をするだけ』とも仰っていました。…私、思うのです。

ソドムス侯爵のお気持ちは分かりませんが、レナルド様は……、何か別のお考えもお持ちではないのか、と……」


シュバリエ公爵は、目を閉じて考えこまれた。





お読みいただき、ありがとうございます!


レナルドは小さな頃おばあちゃん子でした。

大きくなるにつれて祖母の不幸について同情まがいの噂を聞かされつつ育ちました。そして伯爵家の三男で勉強の出来る子だったので、1人娘しかいなかったソドムス侯爵家に補佐候補として入る事になりました。

ラウラとは兄と妹のように仲は良かったようです。

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