37 シュバリエ公爵2
目を閉じて考え込まれていたシュバリエ公爵だったけれど、暫くしてその紫の目を私に向けられた。
「…リリアンヌ嬢。ソドムス侯爵家と我が公爵家は、過去の事もあり余り交流は無い。
世間が我が家を、王女である母が嫁いで来てから振り回されている様を同情と義憤を持って見ている中、もう1人の被害者である元婚約者の侯爵令嬢は、最初こそ同情されたものの傷物扱いされ、追い立てられるように余り良い条件でなかった伯爵家に嫁がされたと聞いている」
! そうだったのね……。
そんな事情があっても、やっぱり『傷物令嬢』扱いをされてしまうのね……。
なんだか、自分の事とも重なってしまうわ。
「お父様、それは……。お祖父様からお聞きになったのですか?」
そう問うカタリーナ様に、公爵様は少し哀しそうな顔をして答えられた。
「…そう。父は最期まで元婚約者の行く末を気にされていた。表立っては出来ないけれども、ずっと援助もされていたようだったね……。きっと、ずっと愛されていたのだと思うよ」
カタリーナ様と私は頷く。
公爵様は深く、息を吐かれてから話を続けられた。
「ソドムス侯爵のお気持ちは、私も考えた事がある……。なんと言っても、同じ1人娘を持つ親だ。娘を愛する気持ちは同じだと思うからね。
ましてや、大事な1人娘を亡くしその喪が明けぬ内にその婚約者が他の女性と婚約したのだ。なんともやり切れない思いをお持ちになった事だろう……。それもその新たな婚約者が、因縁のある我が公爵家であったし尚更だろう、とね……」
そうよね、ソドムス侯爵は1人娘を亡くしている。
子供は政略の駒だ! という貴族も世の中にはいるかもしれないけれど……。殆どの方は嘆き悲しむわよね。
それなのに、世間ではソドムス侯爵は『王子と婚約させた娘が亡くなったので今度は養子をその王子付きの側近に押す権力思考の冷血な侯爵』と見られているのよね……?
「そのような悲しい経歴がおありなのに、何故ソドムス侯爵は世間で冷たい侯爵、と言われているのでしょうか?」
シュバリエ公爵は顎に手を当て少し考えられた。
「…それなのだよ。家を盛り立てようとするのは当然だし、婚約がダメになって次の策をたてるのもおかしなことでは無い。それなのに、何故か彼らには悪評がたっているのだ。
そして、それをソドムス侯爵自身も訂正する素振りもない」
悪評がたったいるのに、それを訂正されようともしない……?
「敢えて、悪役を引き受けていると?
娘を亡くし、その婚約者であった第2王子が他の女性と喪が明けぬ内に婚約、となれば……、また王家に批判が起きるから……。それで敢えてソドムス侯爵家が悪評が立つ事でかわした、と? まさか、これもまた王家が……⁉︎」
驚きを隠せない私に、公爵様も苦々しげに答えた。
「恐らくは、そういう事だと思う。
最初、我が公爵家が無理矢理婚約をねじ込んだ、という筋書きにしたかったようだが、我が家が婚約に抗議していた事からその作戦が使えなくなったのだろうな……。
ソドムス侯爵家が抗議しないのは、それなりに王家と何か約束事が出来ているのかもしれないが」
約束事……?
「今の王家にソドムス侯爵家にとって利になる程の何かを約束出来るとも思えませんが……」
カタリーナ様が少し言いにくそうに言った。
「まさか……、レナルド様を第2王子の側近としてやるから、だけなどではないですわよね⁉︎」
今のところ、優遇? を受けているのってそれくらいなのでは? と、思って言ってしまったけど……。まさかよね。
「いやいくらなんでも……。恐らく次の大臣もしくは宰相に取り立てる、などではないかと思うのだが」
公爵も考えあぐねて言われた。
驚く私に、「いや、例えばだよ」と小さく言われる。
「お父様。今の宰相は王妃様のご実家のピシュナー侯爵様ですわ。果たしてせっかくの権力をお渡しになるでしょうか?
ルーカス様の側近は皆ピシュナー侯爵の派閥の方ばかりですけれど、大臣級の役職に就いているのはピシュナー侯爵家だけですし……。彼らの権力がそれ程ない事の表れですわ」
王妃様のご実家のピシュナー侯爵家が今の宰相。そして、そのピシュナー侯爵家の次男は第2王子の取り巻きの1人だ。
そしてピシュナー侯爵家に連なるドリス伯爵家嫡男、第2騎士団団長嫡男、そしてソドムス侯爵嫡男の4人が第2王子の側近となられている。皆、ゲームの攻略対象者、でもある。
いずれも高位の貴族だわ。…そして、王家側の貴族たち、という事よね。
「…そうなんだ。だからソドムス侯爵が何故王家の意のままに従っているのかがよく分からない。
でも今は大事な時期だから、下手に侯爵に接触するのも危険だね。なんと言っても、パーティーはもう10日後だ」
それは確かに。そして……。
「はい。…私も今は難しいと思います。
…シュバリエ公爵様。それとは別に、先程カタリーナ様とお話していて気になる事があったのですが、話を聞いていただけますか?」
カタリーナ様はハッとされる。
「リリアンヌ様、それは……」
「はい。先程お話ししていた、ドレスの事ですわ」
第2王子が子爵令嬢の為に作らせているパーティーのドレスの話は公爵の耳にも入っていたのだろう。
公爵は厳しいお顔で私の話に耳を傾けられた。
この度、累計pv5万、ユニーク1万越えしました〜!
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