127 1年後の卒業パーティー
「リリアンヌ! わあ! とっても素敵よ! あ、おじさまおばさま、ご無沙汰してます! いつも両親がお世話になっております。あ、こちら私の婚約者の……」
「フィリップ ウォード伯爵です。カールトン伯爵ご夫妻にはいつもお世話をおかけしまして……」
お父様とお母様は「!!」と驚き固まる。
「うふふ。驚いた? なんだかいつの間にか2人はくっついていたのよね。私も最初は驚いたわ」
私が言うと、サリアも少しバツの悪い笑いをしながら話した。
「おじさまおばさま、ご報告が遅くなってごめんなさい。…パーティーでリリアンヌと一緒にいると、その内陛下がいらっしゃってリリアンヌを連れて行ってしまうでしょう? その後にウォード伯爵がいつもすみませんって私のところに来てくださるの。なんだか律儀な方だなぁって思ってお話していたら意外にお話が合って……。ふふ。実は私達も半年後、式を挙げる事になったのですわ」
「えっ!? そうなの? それは私も初耳なんだけれど」
「そりゃそうよ。昨夜話し合って決まったところなのよ。だから1番に貴女に話すのよ?」
「そうなのね! おめでとう!! サリア! ウォード伯爵!」
「いやはや、驚きましたよ、ウォード伯爵! お2人共、おめでとうございます。貴方ならば、モーガン伯爵も喜んだことでしょう!」
「おめでとう、サリア。幸せになってね。お相手が素敵な方で良かったわ。これからもリリアンヌと仲良くしてやってね」
私達が祝福すると、サリアもウォード伯爵もとても嬉しそうに微笑んだ。
「勿論ですわ! ありがとうございます。おじさま、おばさま!」
「ありがとうございます。サリア嬢を必ず大切にし幸せにいたします」
そして私達は和やかに歓談していた。そこに、扉がノックされる。
「あら、もう……? 楽しい時間はあっという間ね」
そうお母様が残念そうに言われた。私達は同意しながら笑い合う。
「リリアンヌ様。陛下の御成でございます」
「どうぞ、お入りください」
陛下が、今日は濃い藍色の軍服のような正装で入って来られた。ああ、今日も素敵……。
「リリアンヌ。卒業おめでとう。今日も素晴らしく美しいよ。良く学園と王妃教育の両立を頑張ったね。…父上、母上、リリアンヌ嬢の学園卒業おめでとうございます。本日はリリアンヌ嬢のエスコートをさせていただきます」
そう一通りこちらに挨拶をした後、
「サリア嬢も卒業おめでとう。…フィリップ、きちんと節度を守ってエスコートをするように」
うん、最後の一言はいつも私達の間に割って入るウォード伯爵への当て付けね。ウォード伯爵も苦笑いされているわ。
そうして私達は卒業パーティーの事や来週の結婚式、サリア達カップルのこれからの事について大いに盛り上がった。少しすると学園長が少し困り顔で「そろそろ……」と声を掛けに来られ、私達は両親に見送られ会場に入った。
騒つく王宮の大広間。うん、やっぱり卒業パーティーは年齢層が若くて、そしてこれからの未来に向かってキラキラした何かに満ちている。1年前は気持ち的にそれどころではなくて余り味わえなかった感覚だわ。
そんな中、私達は司会の方に案内され入場する。そして1番前の上座まで行く。陛下からお祝いの言葉をいただくのだ。ちなみに今日は『参加者』の為、王の席には行かないことにしている。
私は陛下よりも少し斜め後ろに控えておく。
「栄えあるオブシディアン王国学園の諸君、卒業おめでとう! 君達は3年間この学園で色々な事を学びそして成長してきた……」
あら、やはり卒業のお祝いのお言葉というものは少し長くなるものなのね。とは思いつつ、話に聞き入る。
「…そして、昨年の卒業パーティーを体験した者も多いとは思うが、昨年と今では色んな事が変わった。王も然り隣国との関係も然り……。このように世情というものはどんどん変わっていくものだ。一つの考えに拘り過ぎず柔軟な考えで対応していってほしい。
そして変わったものの一つに、王である私の婚約者、つまりは卒業後すぐ王妃となる存在が同じ学園に在籍している、というあまり無い状況が生まれた事だ。皆にも色々協力もして貰い窮屈だったり不便に思う点もあったかと思う。今ここでその詫びと御礼を言いたい。…皆のお陰で、未来の王妃が素晴らしい学園生活を送る事が出来た事を感謝し、そしてこれからの治世にこの事を活かしていくと約束する」
アルフレッド様……。
私は最初は長いと思っていたのも忘れて、彼の言葉に聞き入っていた。そして最後まで私の事を考えてくださる彼に益々惹かれてしまうのだった。
会場は王のお言葉に大きな拍手が広がった。
そして皆で乾杯をし、いつもなら卒業パーティーなので学生達が自由に皆で踊り出すのだけれど、流石にもうすぐ王妃という存在が卒業生でエスコートが陛下となれば、主催者側も気を使ってファーストダンスを勧めてくれた。
初めは断ったのだけれど、押し問答になりかけたのでお受けすることになり2人でダンスホールに行く。
この約1年、何度かファーストダンスをしてきたけれど……。流石に学園の皆の前では少し照れますわね……。ちょっと緊張するけれど、アルフレッド様と一緒に踊っているといつもいつの間にか楽しくなってあっという間に過ぎてしまっているのだ。
そして今日も……。
私達のダンスが終わり、皆それぞれが自由に楽しむ。アルフレッド様と一緒の私のところには沢山の方々がいらした。これから成人して色んな夜会に行っても、こんなに国王夫妻に近付ける機会は多分そうはないでしょうものね。
そして私のところに来てくださる方の中に、アルフレッド様と私の国内向けお披露目パーティーの時に『王妃候補』だと名乗り出て失脚したシーボルト侯爵の姪ベルガー伯爵のセイラ嬢もいた。とても心配したけれど、彼女はあの後学園で色々噂されるのを耐え切り(私も声掛けしましたけれど)、今は余計な事を言う人もほぼいなくなり、楽しく学園生活を送れているようだわ。
「リリアンヌお姉様! ご卒業おめでとうございます!!」
そう、彼女は何故か学園で『リリアンヌ様を慕う会』(!?)を発足させ、その会長をしているのだ! そして謎の『お姉様』呼び! 最初聞いた時は鳥肌がたったわ……。ええ、私は前世でもそういうキャラではなかったので、かなり驚いたのだけれど……。なんでも『慣れる』ものね……(遠い目)。
彼女にしてみれば、学園で辛い時期に私が手を貸す形になっていたので、恩を感じてくれたのでしょうね。
「ありがとう。セイラ。いよいよ次は貴女が最高学年ね。皆を引っ張り良き見本となれるようにね」
私がそう言うと、セイラは目を潤ませた。
「…ッはい! リリアンヌお姉様! 私、頑張りますね!」
私がにっこり笑うと、彼女もとても嬉しそうに微笑んだ。
まあ、セイラはちゃんとやっていけるわね、きっと。
そして1年前には始まる前に帰ってしまった『卒業パーティー』を、今年は存分に味わい楽しむ事が出来たのだった。
そしてこの日私は勿論カールトン伯爵家に帰った。
でも今日の帰り際はアルフレッド様とウォード伯爵が、
「フィリップ。当然君はサリア嬢を速やかに屋敷に送り届け結婚までは節度ある関係を続けていくのだろうね!?」
「…うッ……。と、当然でございます……ッ! 私も紳士として彼女とは節度ある関係を築いていく所存でございます……! では、当然陛下もリリアンヌ様をお屋敷に帰されるのですね!?」
今度はお互いがお互いを牽制し合って謎な揉め方をしている2人がおかしくて、サリアと私は最後帰る時まで笑っていたのだった。
お読みいただき、ありがとうございます!
サリアもこれから後見の夫人方の『リリアンヌ会』に入って活動していきます。




