126 戴冠式後に
戴冠式のその日、アルフレッド新国王陛下は暗殺者に襲われそしてそれを婚約者であるリリアンヌ カールトン伯爵令嬢に助けられた事を観衆の前で明かした為、国の英雄であるアルフレッド新国王を慕う国民達は熱狂的に2人の婚約を祝ってくれた。
私は、陛下がその事を自分の即位よりも重要な事かのように皆に発表された事に驚いていた。そして……。私の事を『命』、だと。そう言ってくださった事にも感動を覚えた。それは彼からの最上級の賛美のように聞こえたから。
私は私の腰に手を回し観衆に手を振る彼を見つめ、
「貴方様こそ、私の命。心よりお慕い致しております。我が王」
そう囁くと、彼は少し驚いて私を振り向き見つめ合った。そして……。私達はいつもの癖で思わずウォード伯爵がいないかと後ろを確認する。流石にこの場には伯爵は居なかった。私達は目を合わせて笑い合った。
そんな私達を見て観衆はまた盛り上がったのだった。
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その後、あの暗殺未遂はジェダイト王国の前王の側近達が起こした事だと分かり、我が国はジェダイト王国に厳重に抗議をした。そしてその後ジェダイト王国より、前王は幽閉、側近達は処刑されたとの報告とお詫びの品々が届いた。我が国と周辺国は、ジェダイト王国に対し『次何かあれば更に厳しい措置を取る』と最終通告をし、各国のジェダイト王国に対する監視は更に強くなったのだった。
そして私があの戴冠式の暗殺未遂の直後、アルフレッド様に儀式の継続を促した事やその後ずっと震えながらも耐えていた事は、周囲の人達から暗殺を未然に防いだ事と同様に褒めそやされていた。
いつしかそれは、王宮の人々だけでなく民衆の中でも広まり、芝居小屋などでも演じられるようになっていた。それはアルフレッド様の従者で芝居小屋が大好きなブレットから私達は知ることとなる。そしてその時にはその話は国中に広がっていたのだった……。は、恥ずかしいのですけれど……!
それからの私の日々は、学園生活と王妃教育との掛け持ちで大変だった。でも学園ではサリア達、王宮には後見5家の夫人方と充実した時間だった。
そして戴冠式から半年後、シュバリエ公爵令嬢カタリーナ様とワーグナー侯爵家のマティアス様の結婚式が行われた。最初お2人は私をどういう名目で招待するかで大分悩まれていたらしい。一応マティアス様と私の婚約解消の経緯は皆が知っているし後ろ暗い事はないのだけれど、色々言われる方はどこにでもいるものだと悩まれたようだった。けれど、マーガレット様に『陛下の婚約者として来ていただけば良いのではなくて?』と言われアッサリ解決したらしい。
「本当は私の大切な友人として来ていただきたかったのです。けれどおかしな憶測を生んではいけないからと……」
結婚式当日の花嫁の部屋。純白のウェディングドレスを着た美しい花嫁のカタリーナ様が申し訳なさげに話す姿に、私は笑顔で答えた。
「私はどこからでもお2人のお祝いは出来るのでいいのです。それから……。刺繍の名人のシュバリエ公爵夫人の娘であるカタリーナ様にお渡しするのは恥ずかしいのですけれど、コレを……。私が刺した刺繍のハンカチです。この国の国花である薔薇を刺しましたの。良かったら、お使いになっていただけますか?」
カタリーナ様はぱあっと表情を明るくされた。
「まあ……!! とても嬉しいですわ! 私、一生の宝物にいたします!!」
そう言ってとても喜んで下さったのだった。…後に『王妃様からの戴き物』として本当にシュバリエ公爵家の家宝扱いにされる事になる。
そしてお2人の結婚式も素晴らしいものとなった。シュバリエ公爵家にご養子に入られるマティアス様は、とても緊張されていたようだけれど。後でアルフレッド様に『喝』を入れられていましたわ。
とにかく、お2人がお幸せそうで良かった……。こう心から思えるのは、隣にアルフレッド様が居てくれるからかしら?
チラリとアルフレッド様を見ると、
「今日の主役はカタリーナ嬢だけれど、私には貴女が1番美しく感じるよ。卒業式後の結婚式が待ち遠しいよ」
そう仰ってまた私を赤くさせるのだった。
そうして、あの卒業パーティーから1年が経った――。
いよいよ今年は私達が卒業する。そうして卒業式から1週間経ったら、私はアルフレッド様と結婚する。
今日の卒業パーティーには、私はアルフレッド様のエスコートで出席するのだ。
多分卒業パーティーで陛下がエスコートをされる、というのは初めてだと思うのよね。もう王となられた方の婚約者、という立場の学生は無かったようだわ。年齢的にだいたいが『王子』の婚約者だったようだし。…まあ陛下のご結婚が遅かったということなのだけれど……。だから学園も周りも私への対応には苦慮されていたようだわ……。以前の誘拐事件や立場上仕方がないけれど、陛下の監視も凄かったし……ね。
そして王宮で開催される卒業パーティーの為、もうほぼ毎日通っていて我が家のようになっている王宮で私は準備をしている。一応学生の身なのに女官長にまで来ていただいている私って……。うん、有り難い事なのですけれどね。
準備が出来た私の元に、両親がやって来た。今日のパーティーは学生達のものだし両親も参加はしないけれど、やはり気になって、衣装だけでも見たいと来てくれたのだ。
「とても綺麗だよ。リリアンヌ……。本当に素敵な大人のレディになったのだね。そしてこうして親子としていられるのもあと僅か……。…ううっ……」
お父様がそう言って泣き出すと、お母様が横から、
「貴方、何を仰っているの。リリアンヌはいつまでも私達の大事な娘ですわ。今泣いていては来週の結婚式はどうされるのですか」
そして私も、
「そうですわ。私はいつまでもお2人の娘ですわ。…というか、お父様。ここのところ何度も『嫁に出す娘を見て泣く父』をしてますわよ。特にお父様はほぼ毎日王宮に出仕されているので、会おうならほぼ毎日会えますのに!」
「そういうことでは無いのだ……!」
最近、お父様は本当に『花嫁の父親泣き』が酷い。何かある毎にコレなのだから……。それだけ大事にしてもらったという事で、感謝はたくさんしているけれど。
「今日もどんなに遅くなっても必ず帰ってくるのだよ。なんと言っても、あと1週間しか家に居られないのだから! ああ、学園卒業後こんなにすぐに結婚式をしなくてもいいのに……」
うん、コレも何度も言われている。
私も初めそう陛下に申し上げた。けれど陛下も、そして後見の方々もこれに関してはなるべく早く、と言われてしまった。…というのも陛下は御歳32歳、国王としてはもう大きな子供がいてもおかしくない位なのだ。
そうコレは、『お世継ぎを早く』って事よね……。今からプレッシャーだわ……。陛下はエドワルド王太子が居るから子供の事は気にしなくていい、と言ってくださってはいるけれどね。
「まあいずれそうなるのだから……。それよりも、リリアンヌのこの素晴らしく美しくしていただいた装いを堪能しましょうよ! 流石王宮の最先端のセンスは違うわねぇ。素敵だわ。
…そういえば、サリアも婚約者と一緒に来るのでしょう? ご挨拶出来るかしら?」
「ええ。到着したらこちらに来てくれる事になっているわ」
そう!! 親友サリアが婚約したのだ!
「サリア嬢の婚約者か……。それはきちんと挨拶せねば!」
あらお父様。またモーガンおじさまに対抗意識を燃やしているのですか。懲りないわねぇ。
そんな話をしていると、扉がノックされた。
「サリア モーガン伯爵令嬢とご婚約者の方がお見えです」
「入っていただいて」
そして、サリアと共に入って来たのは……。
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フレッドが芝居小屋に行くと、新作の芝居がしていました。へー! と思って見てみると、え、コレは陛下とリリアンヌ様じゃん! 驚いたフレッドはしっかり舞台を堪能してから王宮に報告しました。




