128 夢
明日がいよいよ結婚式、という日の前夜。
卒業パーティーから1週間、準備や家族との時間を待つのに忙しかったわ……。明日は早いし、早く寝なさい、と言われいつもより随分と早くにベッドに入った。
…私は、夢を見ていた……。
――ここは?
白い世界。眩しくないし、暑くも寒くもない場所。
――これは、夢?
『いらっしゃい。…貴女と会うのは初めてだね』
頭に、直接響くような心地よい声。
え? と思うと、いつの間にか私の前には、『白い、神々しいお方』がいた。
――ん? 『白い神々しいお方』? この言葉ってどこかで……。
『そう。貴女が産まれる前夜に、ご両親にも話しかけた。「産まれ来る子は、いつか高位の者に望まれるのでそれまで待つように」とね。でも貴女が年頃になっても彼がなかなか気付かないものだから、ご両親は他の高位貴族との縁談を決めてしまったけれど。でもその新たな縁談があったから彼が貴女に気付き、「ゲーム」の流れも損なわず皆が上手くいったのだから結果的には万々歳だけれどね』
そう、お父様とお母様が仰っていたのだわ。…ではこの方が!? そして、この方の言う通り、私の相手の『高位の方』とは、アルフレッド様のこと……。
私は『夢の中』ながらに赤くなっている気がした。
『貴女達の努力で、ほぼ全てが良い方に向かった。…そのお礼に、ここまでの流れを貴女には話しておこうと思ってね』
ここまでの、流れ……? そして、さっき「ゲーム」の流れなどとも仰っていたわよね……?
『――まずは、この王国の始まりよりも前の話になる。…この世界は、人の時代となり人々が集まり国が成っても、いつまでも小競り合いを繰り返し小さな国々の覇権争いが続いていた。人々は争い奪われそして疲れ果てていた。私はこの国々をまとめる者が現れるのを長い間待っていたけれど、一向に現れず……。その間も人々は苦しみ続けていた』
それは、学園で習ったこの国の歴史よね。地球ではどのくらいそういう時代があったのかは分からないけど、少なくとも紀元前にはそれなりに大きな国々があり文化があったはずたわ。
『――そこで、私は別の世界に助けを求めた。その世界の神は言った。自分の世界には勇者と呼ばれる者がいる。その本人さえ良いと言うのならばそちらの世界に送ってもよい、と。そうして本人の承諾を得て来てこちらの世界に来てもらうことが出来た。その後の彼の活躍は、貴女も知っている通り。
私はかの神に感謝し、是非とも何かお礼をと言った。すると、向こうの世界にある「ゲーム」をそのままこちらの世界で実現してみて欲しいと、そう願われた』
「ゲーム」の世界を実現してみて欲しいって……。なかなかお茶目な神様でいらっしゃるのね。
『…最初は上手くいっていた。『初代国王』となった彼のお陰で国はまとまり国々の交流もあり……。そのまま「ゲーム」の始まる舞台も整う予定だった。それが狂ってしまったのは『ある王女』の登場からなのだけれど……』
シュバリエ公爵のお母様に当たる『元王女』様ですね。
『そう。…実は、彼女も貴女の世界からの『転生者』。貴女の世界からの『転生者』は、進んだ世界の知性と知識を持っていたから、この世界をより良く発展させてもらう為、「ゲーム」の世界観に近付ける為にも適性があると思われる人は受け入れていた。それが……。結果は貴女も知っている通り」
!! 元王女も、転生者……! 前世のこちらの意識を持っていたから、王女としての『責任』よりも人としての『権利』の主張をしてしまった、という事なのかしら……。
『…その辺りは個人によって違うだろうからなんとも言えないけれど……。結果的にその王女によって、貴女の世界の神との約束を守れない状況になってしまった。王女が隣国との縁談を突然一方的に破棄した事で、隣国との関係性は悪化し隣国は恨みを持ったまま軍事力強化に走った。そしてその後の王女の国には外交力が無く国交を悪化したままにした。…あのままだったなら貴女の国は15年前に滅んでいた」
…それは、マーガレット様からも少しは聞いてはいたのですけれど、本当に危機的状況だったのですね。
『…そう。この国はその時滅んでいるはずだった。あのままなら。
こちらとしても、かの神との約束が守れなくなってしまうのは非常に困る。…だから、もう一度『彼』に頼る事にした』
…えっ……? それって……。
『そう『彼』。オブシディアン王国初代国王、アルフレッド オブシディアン。…ふふ、名前も同じ、『彼』だ』
アルフレッド様が、初代国王様の生まれ変わり!
いえ、ずっと人々からそう言われていたじゃない。けれど本当に――!?
『私は生命の泉に眠る『彼』に話しかけた。「王国の貴方の子孫が危機に陥っている。このままでは彼らは滅んでしまう、もう一度助けて欲しい」と――。…けれど、『彼』の答えは『否』だった。『彼』は、「今生きる者で作る世界で私が出来ることはない。それが例え子孫でも」と……。『彼』の意志は固かった』
アルフレッド様なら、確かにそう言いそうだわ。それならどうして彼はそれを承諾したのかしら――?
『実は彼は『初代国王』として生きた時、良き仲間良き国民に恵まれたが、とうとう運命の人には巡り会えなかった。…それはそうだろう、彼の運命の相手は「向こうの世界」に居たのだから』
アルフレッド様の『運命の相手』……。それってもしかして……。
『そう、貴女だよ。リリアンヌ。私は彼をこちらに召喚した時彼だけを喚んだ。だから、あなた方は離れ離れになってしまった。…貴女が前世、『男運が悪い』と言っていたのはその辺りが原因かもしれない。申し訳なかった。
そして、『彼』にこの世界をもう一度救ってくれたなら、『運命の相手』を与える事を約束したのだ。…彼は自由に生きたがそれだけが心残りであったようなので、結果的に承諾した。きっと子孫の事も気にはなっていたのだろう」
な……ッ!! まさかのこんな所で前世の男運の悪さの原因が判明!?
というか、『運命の相手』を与えるって、私はモノではないのですけれど!?
『それはそうだ。言い方が悪かった、済まない。しかし貴女も運命の相手が居ない世界で苦しんでいる状況だったし、ちょうどあの例の『ゲーム』もしていた。そして貴女の生まれ変わりのタイミングを待ってこの世界に転生させた。貴族の子女にありがちな早めの別な婚約をさせない為に貴女の親にまで干渉してね』
それが、お父様達がお話になっていた『あの夢』なのね。
『そう。そして『彼』はこちらの希望通り、負けるはずの戦争を勝利に持ち込み、王位に興味がないのもあっただろうがゲームの通りにする為運命通り兄を王に推した。兄王もね、優秀な弟に対する劣等感が拭えず、しかもそれを補う筈の王妃も予定とは違ってしまった為に苦労したようだね……。それは自分との戦いでもあるのだが……』
やはりマーガレット様が王妃にならなかった事も前王陛下には大きな影響があったのですね……。
『それもまた『運命』なのだろう。彼女の運命の相手はワーグナー侯爵であったしね。そちらは悲恋にならずに良かったよ。彼女にはこの世界の発展に多大な協力をしてもらっているからね。『王妃』という立場の方が力を発揮出来るかと思っていたが……。貴女を見ていても思ったが、実現する力はその人の強さや思いでなんとかなることもあるのだな……』
そう、なのかもしれませんね……。
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