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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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114 お披露目までに

 あの誘拐事件から、私リリアンヌは数日は休養を取り、その後学園に通うも、すぐに後見の御夫人方の王妃教育が始まった。

 正式な王妃教育というより、お披露目パーティーに向けて学園を休んでの詰め込み教育かしらね。後見の方々と私の顔合わせ的な要素もあったようだけれど。


 あれから2日程だけ行った学園生活も、どこの王族だというほどの警護と先生方の扱いで大変だった。まだ正式に王妃候補と発表されてもいないし、ある意味この時期に長期間休んでの王妃教育は正解だったと思う。

 

 今回私の『後見』をしてくださる、フォートナム公爵家、シュバリエ公爵家、ワーグナー侯爵家、ソドムス侯爵家。その御夫人方もとても素晴らしい方々だった。

 そして初めに声を上げてくださった陛下の『ノーマン公爵家』、その代理として名乗りを挙げてくださったのが、今はまだ一応エドワルド王太子の妃という立場でいらっしゃるルイーゼ様。フォートナム公爵家の令嬢でマーガレット様の姪に当たられる方なのだ。


「私も新『ノーマン公爵家』として、リリアンヌ様をお支えして参りますわ。なんといっても皆様の中では1番年も近いですし、何かとお力になれるかと思いますわ!」


 と、何故かやる気満々で初日に他の夫人方と待ち構えていらっしゃった。実際、とても柔軟なお考えの方で流行りの最先端を取り入れられるし、お話もとても楽しい方だった。…そういえば、前王妃は権威を取り上げられていたから、実質この方がこの国で1番高位の女性だったのよね……。


 そんな事を2人の時にコッソリ聞いてみると、


「いやですわ。社交界で1番の権力者はマーガレット叔母様でしてよ。フォートナム公爵家の母はどちらかというと大人しい方ですし、シュバリエ公爵夫人はお身体が丈夫ではなくてそれ程社交界に出られなかったのですわ。叔母さまはカリスマ性もおありになるし、なんといってもワーグナーシステムなどでもご活躍ですもの!」


 マーガレット様が1番の実力者……。確かに。そして、ルイーゼ様はマーガレット様がとてもお好きなのね。そしてついでとばかりに、失礼ながらも今回王妃になれなくなった件はお辛くはないのか聞いてみる。


「我がフォートナム公爵家は生粋のアルフレッド様派ですの。私も生まれた時から祖父や父から『いつかアルフレッド様が王になる。あのお方こそが王に相応しいお方だ』と言われて育ちましたのよ。エドワルド様と結婚する際も、『王太子に嫁ぐと思ってはいけない』とまで言われましたの。最初から承知の上ですわ」


 と笑って言われた。

 え……。どんな家ですの、フォートナム公爵家……。普通は娘を王太子の妃にできたのなら、その王太子を押しのけて別の方を王にとは思わないわよね、絶対……。

 それだけ、アルフレッド様に公爵家の方々が惚れ込んでいらっしゃる、という事なのかしら……。

 確かにアルフレッド様は色々とても、素敵な方だから分からないではないけれど……!


 そして、他の御夫人方もとてもパワフルで、皆様所作やなんかもとても美しく、色んな素晴らしい技能をお持ちだった。私も色んな事を学べてとても嬉しい。お話も楽しいしね!


 私は今はまだパーティーに向けて付け焼き刃的に身のこなしを学んでいる状況なのだけれど、ひとつ嬉しかった事がある。それは、カールトン伯爵家で両親は『いつか高位貴族に嫁ぐ』という夢のお告げに従って、私に相当な貴族教育を施してくれていた、ということだった。それを夫人方に褒められて、私は両親に心から感謝をしたし、誇らしかった。


 そんな日々が続いていたけれど、いよいよ明日が陛下の即位お披露目パーティーの日なのだ。

 …とても、緊張しています……。


 そして『王妃教育』で毎日王宮に通っていて1番嬉しいこと、それは、ほぼ毎日陛下にお会い出来るということ! その時間は私の安らぎの時間……。今日は王妃教育の後に陛下と一緒に夕食を取り、その後お茶を楽しんでいるのだ。


「いよいよ明日がパーティーだが、一通りの流れは聞いたかい?」


 陛下が問う。


「はい。一通りは……。でもアルフレッド様? 今度こそ何も隠している事はございませんよね?」


 あの誘拐事件後、陛下は見事にジェダイト王国とのあの戦争寸前までなった攻防戦を私に隠し通した。

 私が事件後に休養や学園に通ったりしていた期間だけではなく、王妃教育で王宮に通うようになり私とほぼ毎日会うようになってからも隠し通したのだ!


 後で聞くと、陛下はそのような自分を知られたら私に嫌われてしまうかもしれないと思ったとそう仰ったのだけれど、私が陛下を嫌う訳がないじゃない!

 そしてその時私達は初めての喧嘩をしたのだ。といっても、私が一方的に怒っていたのだけれど。


「何もかも話す必要はないですけれど、大切な事は必ず話してくださいね? アルフレッド様が正しいと判断された事を知って私が嫌うことなどありませんから。ちょっと、意見はさせていただくかもしれませんけれど」


 それを聞いた陛下はホッとしたように笑顔になられた。


「勿論だよ。リリアンヌ、君の意見を色々聞かせて欲しい。たくさん話をして君をもっと知りたいからね」


 そう言って、陛下は私の手を取られた。…2人は見つめ合う。


「…陛下。明日の準備で朝がお早うございますので本日は早くお休みになられなければ」


 割って入ってきたのは陛下の腹心の部下であるウォード伯爵。

 陛下はウォード伯爵に不機嫌な表情を隠さず言った。


「まだそう遅い時間ではないだろう? 今日はせっかくリリアンヌが明日の準備の為とはいえ王宮に留まるというのに……。もう少し一緒に居てもよいではないか」


 そう、今日はパーティーの準備の為とはいえ、初めて王宮にお泊まりなのです! 我が伯爵家もちゃんとした家だけれど、王宮は高級感が違うわ! 前世でいう高級ホテルのスイートルーム……より凄いわよね、楽しみ!

 そして、同じ敷地内に陛下がいらっしゃるなんて……! 明日は朝が早いのに、今日はドキドキして眠れそうにないわ……!


「何を仰いますか。明日の準備で朝がお早い為に本日お泊まりになられるのですよ? ここで遅くまでおられては本末転倒ではないですか。さあ、リリアンヌ様。ナタリーと護衛が部屋までお送りいたします」


 あら、また2人の攻防戦が始まってしまったわ……。2人は仲が良いとは思うのだけれど、陛下が私に構い過ぎる時? 必ずといっていい程ウォード伯爵が出てきてこうなるのよね……。

 マーガレット様や夫人方、ナタリーもこんな時はとりあえず黙って見ていた方がいいと言っていたので、とりあえず黙っておく。


「それこそ何を言っている。このような早い時間から眠れるはずはないだろう」


「陛下は睡眠時間が短くてもぐっすりと眠れるお方ですから良いでしょうが、普通の者は次の日が早いとこの位から眠る準備をして寝ます」


「…それでは、私がリリアンヌを部屋まで送って行こう」


「まだ正式な婚約発表前の令嬢なのですから、今日はここでお別れなさいませ。送り狼になられても困りますからね」


「なっ……! そのようなことになる訳はないであろう!」


「そうでございますかねぇ……?」


 うん。この手の2人の戦いは、ウォード伯爵がほぼ勝っている。今回もそうなりそうね。

 普通の話ならアルフレッド様がお勝ちになるのだけれどね……。

 

「リリアンヌ様。それではナタリーと衛兵が部屋までお送りいたします。明日はお支度で朝は早いと聞いておりますよ。夫人方も張り切ってらっしゃいました。陛下、明日のリリアンヌ様の装い、楽しみでございますね」


「…本当だね。美しく着飾った君と始めて一緒にパーティーでいられるんだ。明日を楽しみにしているよ」


 そして本日の勝負も無事? ウォード伯爵が勝ち、私は明日に備えて王宮の豪華な客室へ向かうのだった。



 そして、いよいよお披露目パーティーの日がやって来る!

 


お読みいただき、ありがとうございます!


今日もウォード伯爵は2人の正しい距離感を守る為? 頑張っています!


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