11 ノーマン公爵邸にて3
ノーマン公爵も私の目を見た。金と紫の瞳が交差する。
…それは多分ほんの何秒かだったのだけれど、とても長い時間の様にも思えた。
そうして、ノーマン公爵は話し出す。
「リリアンヌ嬢の気持ちは良く分かった。…私は全面的に、貴女に協力するよ」
そしてその金の瞳を優しげに細めながら続けられた。
「私の力が及ぶ可能な限りの事は貴女の味方でいよう」
これは……!
少し感情的? に自分の考えを話してしまったけれど、納得していただけたって事かしら⁉︎
本当は、前世の話をするつもりはなかったのだ。けれど、その話をせずに私が短期間で思いを吹っ切った経緯が上手く説明出来ない……、そう思ったのだ。
実の所、前世の話をどこまで信じていただけたかは分からない。ちょっと痛い子と思われていても仕方ないと思っておこう。
まあそこを突っ込まれても困るしね。
ここが前世でしていたほぼゲームの世界というのもそうだけど、何せ前世の方が文化や科学が発展しているのだ。
ここは前世の世界でいうと所謂中世位? だと思う。私が前世の文化や科学を詳しく把握出来ている訳ではないけれど、こちらの世界に前世の知識を持ち込む事は、出来る限り慎重になった方がいいと思っている。
あまりに詳しく前世の話をして、その辺りを変に利用されたりしたらこの世界の理がおかしくなってしまうわ。
まあ必要になったら使っちゃうかもだけれど。
「ノーマン公爵様……。ありがとうございます……!」
あ、ダメだ……。ちょっと涙が。
ここの所大分このプレゼンテーションに頭を悩ませていたから感動もひとしおだわ。いや、でも考えていたプレゼンは全くと言っていい程使わなかったわね……。それにせっかくサリアと一緒にマリー嬢の話を聞いてしまった設定の場所まで考えていたのに必要無かったわ……。
でも余計な情報を出してボロが出たらいけないから、これで良かったのよね。
「ああ。…これからカタリーナ嬢のかけられるであろう冤罪の証明を出来る策を考えていこう。
そして兄上には私から徐々に働きかけていくよ」
兄上……。…国王陛下ですか⁉︎
確かに最終的には陛下にも自分の子がしでかしている行動に気付いてもらわなければならない。でも、いきなりラスボスにいくから驚いたわ。
そこでマティアス様も口を開いた。
「アルフレッド様、ありがとうございます。そして、リリアンヌ。…貴女をそんなに追い込んでしまって……本当に申し訳なかった。
私は貴女の言葉に甘えてばかりで貴女の事を何も思いやれていなかった。そしてアルフレッド様にお声かけ頂かないとその事に気付きもしないとは……」
心底申し訳なさそうに言葉を絞り出すマティアス様。
でも私は……。
「マティアス様……。私は貴方に気に病んでなど欲しくはないのです。本当は、私が幸せにして差し上げたかったのですけれど、その役目は私ではない様ですので……」
そこで、ノーマン公爵が吹き出す。
「ッ⁉︎ リリアンヌ嬢が、幸せにしてくれるのかい?
…ふふッ……いや、すまない。リリアンヌ嬢に幸せにしてもらう者は、国1番の果報者となるだろうね」
必死で笑いを堪えている様なノーマン公爵。
…笑いで肩が震えてますわよ……。
「ノーマン公爵様。…からかっておいでですの?」
私は少し睨みながらノーマン公爵に言う。
「からかってなどいない。…本当に、君は最高だよ……」
と、まだ笑いを収められない様子のノーマン公爵、その前で少し苦笑を浮かべるマティアス様なのだった……。
というか、ノーマン公爵はいつまで笑ってらっしゃるのかしら⁉︎
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