第4話 おぉ聖女、人間設定6の少女よ
俺とルドヴィカ打っているスロットは『ノーマル機』に分類される。
ノーマル機……いわゆる1回の大当たりで出玉を獲得するスロットで当たりが連続することは珍しい。大当たり後、1回転目で当たることを『1G連』という。
大当たりする確率自体はあらかじめ店側が調整した『設定』により変動する。設定は1〜6まで、数字が大きいほど当たりやすい。それを看破するのもスロット打ちの醍醐味ではある。
しかしここ、パチンコパーラー『キャメロット碧海店』ではそんな設定予測など不要で万年設定1である。ベタピンで奇跡が起きるなどそうざらにない。
もちろん一定の回転数以内であればなくはない現象だが、これはルドヴィカのツキなのかそれとも……
箱にいそいそとコインを詰め始めたルドヴィカを見ていると、ビギナーズラックと結論づけるにはまだ早い気がする。というか打ってる途中、明らかにトリップしてたよな?
「わぁ銀貨がいっぱい」
「違うからね。お金ではないからね」
大事なことだから。
それに、初見時からリールの絵柄を止めるのが上手い。赤色の7の図柄を横もしくは斜めに揃えて当たりが成立するのだが、躊躇がない。
まるで高速で動く何かを見た経験があるように。…………矢、とか?
「見てくださいロマンさん、箱にみっちりです!」
「大体1万ちょいか…………」
「えっ?」
儲けてますな。
だがやはり初心者。ドル箱(※1)には乱雑にコインが詰められて無駄なスペースが空いていた。まぁ、どうせ崩すから綺麗に入れなくていいんだけど。
「ふぅ」
どうやら大当たりを終えたようだ。
…………まさかとは思うけど、また1回転目で当たったりしないよな?
「それっ」
──ペカっ。
それは、聖女の1打。そして、スロット台の当たりランプには、またまたまた灯りが点く。
「…………ッ⁉︎」
「わぁ〜ロマンさん、光りましたっ!」
パチ屋には、稀に神に愛された存在が現れる。座った途端に当たりを引く豪運、あるいは大敗の見えた戦いをひっくり返すような『奇跡』を起こす存在。
激運の打ち手──ヒキ強だ。
間違いない……ルドヴィカは異世界から来たヒキ強スロッター……自力で台の運命を覆す、人間設定6少女!
「なんて、美しい輝きなんでしょう…………!」
7揃いのリールを眺める顔は、どう見ても蕩けている。パッと見、修道服のような姿ではあるが、きっと気のせいだろう。
……でなければ、果てたような顔などするわけない。
結局この後、ルドヴィカ=ヴァレンティは1G連を7回起こし、ドル箱を重ねたのであった……
ドル箱に入ったコインが計数機へ流されると、レシート1枚に早替わり。
「あれだけあった銀貨が紙1枚になっちゃいました」
「落とさないように。あのコイン分の価値あるからねそれ」
冗談混じりに言ってやると、ルドヴィカはレシートを両手で抱きしめた。
「でもいいんですか? ロマンさんからもらって打ってたのに」
「貸した分はさっき返してもらったろ? それは正真正銘ルヴィの勝ち分だよ」
「勝利…………」
さてと、これからどうするかはともかく。
お待ちかねの景品交換だ。
これをせずして、勝利とは言えない。
※1……パチンコの玉やスロットのコインを入れる箱。人によっては山のように盛ったりする。いっぱい積めると嬉しい。




