第3話 当たりとヒキと脳汁と
「勝っている、んですか?」
「そーそー、大当たり。さっきみたいに赤いの揃えてみな」
と、ロマンさんは言う。
正直、何がどこに当たっているのかもわからないけれど、彼の言うことは正しいと思う。
点灯した光を見ていると、心が昂る。あなたは戦いに勝っているのだと、神が告げているように。
なぜだろう、私はこの光が好きだ。
神の言葉を聞いたときのような……いいや、そうじゃなくて、もっとこう……頭の中から何かが溢れそうな予感がする。
業火に包まれ、見知らぬ土地に来たと言うのに、私は戦場にいた時のような興奮を覚えている。
「どうしたよ、リール止めな」
「あ、はい!」
りーる? というのはおそらく箱……じゃなくて、スロットの中の回転のこと。ロマンさんの言葉通りなら、さっきと同じように左から絵柄を狙ってボタンを押せば…………
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瞬間、音楽と共に脳は弾けた。
「……………………っ⁉︎」
炸裂する脳内に反して、手は勝手に動く。棒を叩き、回転する絵を無造作に止める。
「か、身体が勝手に……っ!」
「なにそれこわっ」
知らない、分からない。
でも手は止まらない。
勝利で得た銀を求めて。
台の下にコインが少し溜まったところで、音楽は止まってしまった。同時に脳内の溌剌も落ち着いてしまった。
「ロマンさん、なんだかすごいです。頭の中がばぁっとしました!」
「そ、そう……そりゃ良かった」
『ジャグでなるもんなのか』と呟いていましたが、よくわかりません。でもこのスロットという箱の光は好きになりました。
「またあの光、見られますか?」
「ん〜そう簡単には見れないと思う」
「ど、どうしてです⁉︎ この箱にコインを入れたら光るのでは⁉︎」
「そうだったらパチ屋潰れるぜ…………」
…………どうして簡単に光ったらぱちや? が潰れるんでしょう。この世界は謎に満ちています。
「ま、気になるならもう少し打ってみなよ。そのコインはルヴィのもんだし」
「えぇ、やってみます!」
どうせ1度燃えた身、少しくらい遊んでも罰などないでしょう!
さっきより勢いよく棒を叩くと、『ガコッ』という音と一緒に絵柄は回転した。するとロマンさんはこちらを覗き込んだ。
「ちょ、は? マジでっ⁉︎」
「え、え、どうしました?」
「いや……あの、また勝ちです」
若干引き攣った表情でロマンさんが私の台を指差すと、またまた台の灯りが点いていました。
「それじゃあ、もう一度絵柄を揃えればいいんですね!」
「あぁ、うん。そうよ」
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横一列に揃ったのは、またもや同じ絵。
魔族の侵攻に対して真っ先に矢面に立ち突撃した時と同じくらい、脳内は昂る。
「いいんですよね、ロマンさんまた打てばいいんですよね⁉︎」
「打て打て、こんなこと滅多にないんだから」
段々このスロットという装置にも慣れて来ました。音楽が鳴っている間はいっぱいコインが出る! いっぱい出ると頭の中が弾ける!
気づけば台の下にはたくさんのコインが溢れていました。聖女の時でもこんなに銀貨をみることはなかったかも。
「ロマンさん、いっぱいですよ!」
「…………もう1回、回してもらっていいか?」
「何かクルクルさせるんですか?」
「あーいや、そうじゃなくて。レバー叩いてみて」
「……? わかりました」
神ではなく、ロマンさんとの出会いに感謝を込めて。ほんのわずかな力でレバーを下げると…………再び台に光が灯った。
「あ! 勝ちですよね⁉︎」
「い……1ゲーム連……しかも2連続」
「ロマンさん?」
『べたぴんのはずなのに』、とロマンさんは呟いてますがなんのことでしょう?




