第34話 代打ち
スマスロリベンジから1週間。
パチ屋・キャメロットにて。
「やっぱりハナを光らせるのは楽しいですね」
「スマスロ偏重にならなくて良かったよ」
またしても……というか、今日も俺とルドヴィカはスロットを打っていた。
開店直後の実践。ラーメン主義の昼営業が終わってからの短時間実践。そして休日のフル実践……と、バイトとスロット三昧の日々。
俺はタダ働きだけどな!
『だってあんた、ルヴィちゃん来てから売上2倍なのよぉ?』
とは、母による。
看板娘ってすごいね…………!
衣食住は提供してやってるんだから家の手伝いをしろと労働を強いられています。なんともまぁ、労働からは逃れられないようで。
「なぁんで無職が働かなくちゃ…………」
「まぁまぁ、楽しいからいいじゃないですか」
順風満帆な生活を送るルドヴィカは、そう言いながらスイカの小役をノールックで揃えた。現代日本に来てから2週間ちょい、慣れた手つきだ。
「やった、また当たりです」
「……………………」
実践開始して30分、すでにビッグボーナス4回。時間的に堅実なノーマル機を卒なく当てるルドヴィカは、着々と資金を増やしていた。
気になることとしては……スロットを打っている時に光り始めているということだが。誰も気にしないけど、見えてないのか?
「どうしました?」
「いや。疲れてないか?」
「全然! 当たりの光を見ると疲れが吹き飛んじゃいます」
それはそれで何かヤバい気がする。
聖眼といい、加護といい、祈りといい、パチンコ屋に適応しているこの状況……進化と言えるのか。
「う〜ん、なんだか喉渇きますね。ロマンさんお茶でいいですか?」
「お、おう……」
空調が効きすぎてんのか?
ここ最近、ほぼ必ずルドヴィカが飲み物買いに行っている。別にスロット打つ時に飲み物買うのは珍しくもないが、なにか違和感。
そして違和感の謎はすぐにわかった。
「おう、お嬢ちゃんこの前はありがとうよ! これお礼ね」
キャメロットでたまに見かける爺さんだった。手にはペットボトルのお茶1本。
「わぁ、ありがとうございます!」
「お嬢ちゃんに7揃えてもらったら、あれから2000枚も出ちゃったよぉ」
「おめでとうございます!」
…………まさか。
じゃあね、と爺さんがそのまま見えなくなるまで、ルヴィは手を振って見送っていた。
「この前私だけで打っていた時にボーナスを揃えてあげたんです」
「代行……」
たまにリールを目で追えない打ち手の代わりにボーナスを揃えることを『代行』と呼ぶ。昔はパチ屋の店員さんがやってくれていたそうだが……まさか異世界少女が代行とは。事実は小説よりも……と言うが奇妙も過ぎると笑えるな。
「お年を召しても打つなんて、みなさんスロットが好きなんですね」
「好きというかのめり込んだ末路というか」
明日は我が身である。
しかし無職生活におけるスロットというのは心のオアシス、そしてアイデンティティ。叶うことなら打ち続けていたいものである。
勿論、そんな資金はどこにもない。ないが…………できそうな人物は隣に座っている。
「やらないけどな」
「何をですか?」
「なにも。ほら、ボーナス消化しないと」
確かルドヴィカは自分の台にしか奇跡を反映できなかったよな?
いや……まさか、な?




