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救国の聖女はスロットを打ちたい  作者: ムタムッタ
第5章 神に祈るな、己に祈れ

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第33話 パチ屋の聖女


「あー、終わっちゃいました……」

「6000枚か。負け分捲ってむしろプラスに戻ったな」


 神に祈ることだけが全てではなかったみたいです。自分に祈り切り開いた運命は、確実に勝利をもたらしました。


 奇跡は可能性に満ちています。

 元の世界では決して見えなかったものが、この世界で見えるようになって……本当に良かった。


「今日はお祝いですね、ロマンさん!」

「え? あぁ、うん……そうねぇ」

「どうかしました?」


 苦笑いを浮かべたロマンさんの台を見ると、グラフが右肩下がり。凸凹の坂道が私とは対照的です。


「いやースマスロってクソだわ!」

「ロマンさん、私のために…………」


 多分設定4、とロマンさんは粘っています。

 聖眼で見ても輝きはありません。ハイエナというのは、即時撤退だって言っていたのに……私と一緒にいてくれたんですね。


「今日の勝った分、ロマンさんに差し上げます!」

「なんだって?」

「あの日の負け分は取り返しましたし、ずっと隣にいてくれたんですからこれは……」

「馬鹿言うな。これはヒキが悪かっただけの話だ、自惚れてもらっちゃ困る。それはあんたの勝ち分だ」

「でも……」

「じゃ飯奢って」

「それくらいは当然ですっ!」

「えぇ……なら、そこで飲み物買ってきてくれよ。お茶でいいからさ」

「恩返し足りません!」

「んもぅ、ちょっとは勝ちの余韻に浸れよなぁ。ほら行った行った」


 急かされるように席を立たされて、私は自動販売機へ向かった。硬貨を入れて飲み物が出てくるって不思議な箱ですよね。


「中に誰か入っているのでしょうか」


 見覚えのある銘柄を選んで買いつつ、そんなことを考える。不思議な世界、まだまだわからないことだらけです。


「そういえばロマンさん、打ち続けるのかな……」


 悪いことしてしまったかも。ロマンさんの好きなものいっぱい食べてもらいましょう! ロマンさんって、何が好物で…………


「あら?」


 ロマンさんのもとへ戻る道すがら、ノーマルと呼ばれる台でお婆さんが困っていました。


「どうしましたお婆さま?」

「あたったんだけどねぇ、7が揃えられないのよぉ」

「7が」


 くるくると回り続けるリールに垣間見える赤色の図柄。確かにお年寄りには目で追うのも難しいかもしれません。


「いつもは友達がやってくれるんだけどねぇ」

「よかったら揃えましょうか?」

「あらいいのぉ?」

「もちろんです!」


 困っている人を見過ごせないのは、私の性ですね。


 せっかく当たったのですから、楽しめるように祈りましょう。私は勝ちました、貴方も楽しめるように。


「えいっ」


 余分な1回転を与えず、真横に777を揃える。

 

「あら〜ビッグねぇ、ありがとねお嬢ちゃん」

「貴方の幸運を祈ります。それでは!」


 自分だけで噛み締めるのもいいですけど……やっぱり私、根っからのお人よしのようです。悪い人には簡単になれませんね。


「ん? なんか長かったな、迷った?」

「いえ、ちょっと幸運のお裾分けを」

「……? ま、いいや。飯奢ってもらうぜ〜」

「お腹いっぱいにしてあげます!」


 ルドヴィカ=ヴァレンティ、+5500枚。

 主義浪漫、−3000枚。


 本日の実践終了です。

 そして、焼肉を楽しむ私とロマンさん。いっぱい勝って、お腹いっぱいに満たされて、大満足でした。



 しかし、私は知りませんでした。

 幸運のお裾分けをした台が、8000枚出していたことを。




 ────金髪の女の子が7揃えてあげたら爆発したらしいぞ、と。



 そう……『パチ屋の聖女』の噂は、ここから始まりました。


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