第30話 イメージするのは大当たりしている自分
「自分に、祈るんですか……?」
「そうだな」
きょとんとした顔で、ルドヴィカは首を傾げた。あらら、異世界ギャップかな。
「神に祈らずどうして自分に?」
「まぁとりあえず打とう」
パチ屋に来て打つ台が決まったなら1回転でも多く回す、これ常識。
打たなければ始まらない。今日の軍資金1枚目を投入し、遊技開始だ。もはや慣れた手つきでルドヴィカはゲームを回していく。
「手慣れたもんだな」
「えへへ、ずっと打つ練習していたんです」
…………それは、自室でシャドーボクシングならぬシャドー遊技ってことかい?
「それでロマンさん、自分に祈るというのは?」
「んぁ? あぁ、要するに神頼みしても当たらないもんは当たらないんだよ」
「だから自分に祈れ、と?」
「スロットは誰も助けてくれないからな。負け込んでる時に神頼みが一番良くない」
「うっ……耳が痛いです」
あまり他人事ではない。
仕事辞める前の遊技なんて毎回神頼みして勝手に神を恨んでいたもんだ。今でもちょくちょく神を憎んでいるのは内緒だ。
「当たってくれと祈ってる時点で負けに傾いてんのよ。大事なのは想像、イメージだ」
「想像?」
「そう。イメージするのは、大当たりしている自分」
大層なイメージではない。
見える、見えるぞ。あと100ゲームくらいでサクッと当たって出玉の伸びる自分が。
「イメージですか……私は、とにかくいっぱいメダルを出したいです!」
「何枚くらい?」
「そうですねぇ、最初は1000枚くらいでしたし……10万枚くらいでしょうか」
……やはり素質しかないなこの子は。期待を裏切らない。
「ぶっ!」
「わ、私なにか変なこと言いました?」
「……いーや、夢は大きい方が良いに決まってる」
心のどこかで、ルドヴィカが傷つかないよう現実的なイメージを植え付けさせようとしていたのかもしれない。
そうそう、夢は大きい方がいいんだ。
イメージはともかく、200ゲームほど回していると運良くCZに入った。とりあえず天井回避、金も1万程度と必要経費レベルだ。
「小役……小役……」
「あんまり気負うなよ?」
「自分に祈りを────」
指を絡ませて、少女は目を閉じる。
何を願うのか、何を祈るのか、それは分からない。メダルの枚数か、大当たりの回数か、はたまた景品で得られる対価か。
奇跡なしでと言ったんだけどね。
光ってますよ、ルドヴィカさん。
「聖女として、己を律し禁じていました。けれど、今求めるのは純粋な勝利の愉悦です」
……いや、奇跡なしでという前提も間違っていたな。きっとルドヴィカにとって、奇跡ってのは常に在るものだったんだ。
他人のために、誰かのために。
旅の恥はかき捨てなんて言葉もある。出禁がなんだ、こっちは奇跡だ。お行儀よくパチ屋のルールに従って負けたら意味ねぇ。
ぶっちゃけ、1回くらい大勝ちしても出禁にならないだろ多分。やめだやめ、スロットのお勉強なんて打ちながらやるもんじゃない。
打ち始めたらメダルを吐き出させることに全神経を注ぐのだ。
イメージするのは大当たりしている自分なのだから。
「ロマンさん……私、悪い人になりますね」
「前言撤回だ、悪人結構。ここでぶちかまして行け!」




