第27話 身体で払ってもらおうか
女性に手をあげるのはよくないと世間は言う。もちろんそうだろう。
今回は例外、正義のチョークスリーパーをプリン頭に極めている。
「ぐぇ〜ぐるじぃ〜⁉︎」
「なーにど素人にスマスロ打たせたんだ、あァン⁉︎」
ハロワの手続きからキャメロットに来て早々、号泣するルドヴィカから話を聞いて理解した。
アホの真凛がルドヴィカを唆してスマスロ打たせてタコ負けさせたのである。打ち手の先輩として、やってはならんことだ。
「だってだって、ルヴィちゃん打ちたそうにしてたんだもん!」
「引き際を教えるのもテメェの役割だろうがッ!」
「ロマンさんやめてください、私が悪いんですっ!」
「それはそう」
パッと真凛の拘束を解いて、ルドヴィカを戒めた。最初のCZの時点で退くこともできたが、退かなかったのはルドヴィカの選択である。そもそも本気で首を絞めてはいないけど。
「このアホに唆されたのも原因だな」
「ごめんよぉ⁉︎」
「それに、ハロワ行ってから一緒に行けば良かったわけだしな。俺の判断ミスでもある」
「そんなことは……」
「ま、今回は負けるべくして負けたってわけだな。中途半端に金が残らなくて逆に良かったかもしれない」
「でも、もうお金は…………」
ルドヴィカの財布には小銭が少し。これじゃ端玉にもならない。が、それはそれでよし。
「金がなくなったんなら自力で軍資金集めないとな。俺も人にやるほど金持ちでもないし」
「うぇ〜? 浪漫くん仕事は?」
「あんなクソブラック企業、とっくに辞めてやったわぃ!」
退職金と失業保険で打つスロット、最高。いや、これは労働の結晶と言っても過言ではない。
俺の渡したメダルから始まった戦いは終わりだ…………だから、自分で始めてもらわないと。
「でも私……この世界でどうお金を稼げば」
ぎっくり腰を一瞬で治すような人間が、果たして世界に何人いることやら。それを考えれば、ルドヴィカがあっという間に碌な目に遭わないのも分かる。
俺が……俺がルドヴィカを守らないと。
というのは冗談として。
「簡単な話だ、負けた対価は身体で払ってもらおうか」
「そんな……私は神に仕える身、ロマンさん…………私────」
「大丈夫大丈夫、辛いのは最初だけだから」
そう、大変なのは最初だけだ。
◇ ◇ ◇
黒いTシャツに白の前掛けをはためかせ、これまた白いタオルで髪をまとめた金髪美少女は活きの良い声を出す。
「ちゅ、注文お願いしますっ! ラーメン1、チャーハン1、ギョウザ1ですっ!」
「あいよー」
サッと麺を茹でつつ、カエシとスープを丼へ流し込み、ラーメンを組み立てて行く。何度も見てきた、手伝わされた親父の動き、目を閉じていてもできる。
麺と具を配置し、ラーメン完成。
カウンター越しのルドヴィカに渡すと、手際よく客に出す。
「ラーメン、おまちどうさまですっ!」
「あ、ありがとう…………」
自宅であるラーメン主義に戻り、現在夕方。
これからピークに差し掛かる店内は既に満席に近い。見慣れない金髪美少女から提供され、男どもはたじたじ。
「おい浪漫、どこで見つけたんだこんな可愛い子!」
「プー太郎がナンパしてんじゃないぞ」
「やかましいわ、食ったらさっさと帰れ!」
お前らこそルドヴィカをナンパしたらシバくぞ!
「って、おい真凛、チャーハンと餃子まだか⁉︎」
「うぇ〜ん、腱鞘炎で働けなくなるぅ」
同じく有り金を溶かした破滅の権化こと三洋真凛が中華鍋を振るう。泣き言を宣っているものの、当店元バイトの手際はそこそこ良い。
そう、敗北の対価は身体で払う。
否、身体で稼ぐのである。
元々いろんな人間を住み込みで働かせてたりしてたからなぁ。今更異世界の人間を働かせても問題はない……が、
「なぁんで俺まで」
「ばっきゃろう、ルヴィちゃんと真凛ちゃんだけ働かせるつもりか! あと麺の茹で時間が3秒長いぞ!」
「誤差だろンなもん……」
カウンターで息子のラーメンを啜る親父がうるさい。ルドヴィカがスロットで金溶かしたから働かせてと言ったらこの様だ。
「おじさま、お水をどうぞ」
「おぅ〜ありがとう。ルヴィちゃんは優しいねぇ」
ちなみにオカンは溜まったテレビ番組を見れると二つ返事で奥に消えてしまった。いいのか、無職にラーメン作らせといて……
ちなみにルヴィは時給1200円。真凛も1200円。俺は……親を手伝える素晴らしい経験だからプライスレスとのこと。
「労働力の搾取、人権無視の非人道的行為……俺はこの環境と戦わねばならない」
「ロマンさん、ラーメン2つお願いしますっ!」
「はいよー」
俺のことはともかく、慌ただしくも楽しそうに働くルドヴィカを見てちょっと安心した。
無くなっちまったものは仕方ない。
金がないなら働けばいいのである。
敗北を糧に、少女はスマスロに再戦を誓うのだ。ただ……再戦まではしばらくバイト漬けだけどな!




