第25話 そして財布は空になった
その後もCZには入ることができた。
しかし引けない小役、引けても突破できない戦い、そして資金投入。
「どうして、当たらないんですか……」
「CZの調子は上がってるのにねぇ」
そもそもマリンさんは勝敗に拘泥している様子はなさそうに見えます。私と同じように、敗北の沼に両足を浸しているというのに。
「加護だってやっています、聖眼だってこの台は……」
「カゴ? セイガン?」
そうだった、奇跡のことはロマンさん達しか知らないんだ。
「なんとなく調子がいいと思っていたので⁉︎」
「まぁ天井なんてよくあることだからねぇ」
「よくあるんですか……」
悪夢以外の何者でもありません。嘘だと信じたかった。こんな……こんなことが許されていいものなのでしょうか。
周囲の打ち手を聖眼で見定めると、誰も彼も輝きを失っていました。これがスマスロ、これが、スロットの闇……!
「今日なんてベタピンだろうしねぇ」
「それでも私は……」
負けたくない、負けてはいけない。勝ってロマンさんに会わなくてはいけないのです。
目減りする台のメダル表示と、増える追加投資。奇跡を使わずとも、否が応でも見えてくる未来が、全身に悪寒を走らせました。
業火に焼かれるよりはずっといい。
でも、お金がなくなればもう……
「は……はぁ…………ぐっ」
潤んだ瞳が視界をぼやけさせる。
誰も私を救えないなら、私自身が救わなければいけません。こんな、ところで…………
さらにもう1枚、台に捧げる。
私の奇跡よ、届けと祈りながら。
「ハッ、はぁ……ハッ、おね、がい」
もうなんでもいい、当たってほしい。せめて一度、まともな大当たりをしてこの苦しみから解放してほしいと、ただ願った。
ロマンさんと打っていた時は、あんなにも楽しかったのに、なぜ、どうして。
どうしてこんなにも、胸が苦しいの……?
「やだ、やだ……やだやだやだぁっ!」
「ちょ、ルヴィちゃん大丈夫⁉︎」
祈りは届かず、奇跡は起きず。
常勝の加護は、今その力を失う。
神などいない、戦いとは孤独であると告げるように。
行くも地獄、引くも地獄……いいえ、この時私の頭にはもう『撤退』という文字は消失していました。
そして……気づいた時には、お財布の中に紙のお金はなくなっていました。
「あ……あぁ……っ、そんなっ」
頭の先から爪先まで、スゥっと冷たくなっていくのが分かる。全身の血が抜けるように、狂った熱は急速に冷めていく。
「いんやぁ〜タコ負けだぁ」
「わた、し…………」
終わった。
私の戦いは、呆気なく。
『んじゃもっと大勝ちしないとな』
『任せてください!』
もう終わりだ。なにもかも。
ごめんなさいロマンさん、約束は守れないみたいです。
「うっ…………うぅ……」
「ちょ、ルヴィちゃん⁉︎」
「ごめんなさい、ごめんなさい…………」
ただ恩人に、許しを求める。
敗北の罪を背負いながら。




