第24話 発狂、追加投資
「はぁ…………はぁ…………」
4枚目の1万円を手にして、指先の震えを感じた。まだ何枚か残っているのに、言いようのない焦燥感が私の背中に張り付いているようでした。
入れてしまった。
4枚目……4万円を入れてしまった。全財産の半分ほど。
加護を使っているのに、台は応えてくれない。聖眼が捉える光は、まやかしとでも言いたいのでしょうか。
「あっ!」
一定数溜まったポイントの抽選にかかったのか、再びCZへ舞い戻った。熱は再び、私の頭の中を駆け巡る。
ここを通さないと、ここを通さないと私に明日はない。
「おぉ〜早めに引いたねぇ」
「当てます、当てないと帰れませんっ」
さっきよりも丁寧に、丁寧に祈る。
精神を研ぎ澄ませ、来るべき子役の到来をひたすらに祈る。
「我が呼びかけに応えよ!」
優しくレバーを叩くと、緑の絵柄が揃った。
「お、スイカ来たねぇ」
「当てます、当たるんです──絶対に!」
ひとつ目の戦いを制し、2度目の戦いに入る。
1戦目よりも遥かに大きな敵が、画面いっぱいに映っていました。
「まだあるんですか⁉︎」
「これ入れてあと2回だね」
「そ……そんな……」
3回勝たないとボーナスにならないなんて……なんて苦しい戦い…………
「弱気になったらダメだよぉ」
「お願い、当たって──!」
半ば目を瞑って奇跡を願う。
するとガラスの砕けるような音はせず、2文字の言葉が出ていた。
「撃破、撃破よルヴィちゃん! あと1回!」
「ほ、ほんとですか⁉︎」
「もうほぼ勝ち確、いけいけぇ〜」
運命を切り開けと言わんばかりに、感情を煽る効果音が両耳を刺激する。Vという絵柄が左右のリールに揃い、真ん中にも同じ絵柄を止めろと、台は叫ぶ。
「お願い……お願いします……当たって…………」
こんなにも必死に何かを願ったのはいつぶりだろう。
国の勝利以来か、
国の安寧以来か、
それとも…………
願いは形に、そして横一閃に「V」の絵柄が並び立ち、虹色の閃光が私を出迎えてくれました。
「おぉ〜! 当たったじゃん〜」
「やった…………やりました……!」
勝利の歓喜というより、安堵のため息が漏れた。そうだ、これでいっぱいメダルが…………
自動的に回転したリールは、左から停止していく。
7 7 ➖
「…………あれ?」
「あちゃーレギュラーだぁ」
分かる。ロマンさんがビッグボーナスではない方と言っていたボーナスだから。でもすますろのレギュラーは知らない。
胸の鼓動が、再び不規則に脈打つ。
「あ、あ、あの……これってどうすれば」
「あーね、これ最終決戦。このボーナス中に勝てれば大当たりだよぉ」
「な」
──パリンッ
頭の中で、何か砕ける音がしました。
何度も傷ついて、その先にある勝利の先で、また戦えと、スマスロはどこまで試練を与えるのでしょう…………
そこからの記憶はすこしぼやけたものでした。
震える手でボタンを止め、鐘の図柄は揃っていく。残り少なかった枚数のメダルが、わずかに……ほんのわずかにだけ増えていきました。
そして気づいた時には、見慣れた平和な画面に。何事もなかったように。
「あちゃ〜突破ならずかぁ」
「お……終わり…………?」
4万円を使って、約100枚。
なにか、悪い夢を見ているようです。そしてその100枚も、あっという間に溶けてしまって、気づけば新たな1万円を握っていました。
「は、はは…………ははは」
不意に漏れたのは、妙な笑いだった。
だ、大丈夫です。
まだ余力はあるのですから、次で当てればいいだけなのですから。私は負けたりしない、負けてはいけない、負けられない。
「はぁ…………はぁ…………負けない、負けたくないッ!」
すべては負けを取り返すために。
過熱した頭に選択肢などなく。
私は5万円目をスロットへ捧げました。




