第23話 天井の景色
全身全霊の加護をスロットに与えて打つことさらにしばらく……入れた金額は2万を超えて3枚目。
「当たりません……」
「運が悪いとねぇ」
聖眼は告げてます、絶好調の台だと。それもそのはず、加護に包まれていますから! それなのに……小役も出てポイントも稼いでいるのに、まったく当たりませんっ⁉︎
「もしかして……壊れてます?」
「正常なんだなぁこれがぁ!!」
そう言うマリンさんも私と同じようにとんでもない回転数に来ていました。なんで楽しそうなのかは分りませんが。
「大丈夫大丈夫、そろそろ天井だからさ」
「天井?」
見上げた空はお店の中。明かりが聖眼を照りつける。
「あはは、お店の天井じゃなくてスロットの天井だよぉ。ある程度回すとね、絶対当たるの」
「ホントですかっ⁉︎」
「まずはCZだけどね」
「ふぇぇ…………」
ここまでお金を入れて当たらないなんて……想像していたよりも過酷です。
そうしてもう少し打っていると、今までにないほどスロット台がざわざわし始めました。
「なにか……違います!」
「そりゃ天井だからね」
かくて〜いと、マリンさんは声高に叫んだ。
天井の景色は……なにか振り切れた世界でした。
……ともかく、なんにも起きない状況は終わりそうです。なぜでしょう、心労が押し寄せてきます。
甲高い音と共に、画面はCZに切り替わりました。ゴーレムのような人型の物体が空中で戦っている光景が映し出されています。なにかの攻防戦のようです。
「まぁ映像はともかく、ここで10回以内に小役を引いて勝てればボーナスだよ」
「が、がんばりますっ」
小役……小役……
余計な感情はいらない。今はただ、勝利のための一手を────
「────神よ」
レバーを叩く。
リールはただいつも通りに回転を始める。ボタンを押せば、絵柄は揃わず。
「まだ」
たった1回転。
されど、貴重な1回転だと知るのはまだ先の話。今にして思えば、3日間の連勝が、私に慢心を抱かせていたのは間違いありません。
「にゃはは〜引けなぁい」
「当たれ、当たれ、当たれ────!」
もう3枚目なんです。
ロマンさんと積み重ねた勝利、ここで繋がなければ、私は…………!
残り1回転。
ようやく青い絵柄を引き当てて、本格的な戦闘の映像が始まる。
「そこでも小役引くと熱いよぉ⁉︎」
「神よ、激熱を我が手に」
加護はもう使った。これは、神への祈り。
国を救った力ならば、私ひとり救わずして、何が奇跡なのですか……!
「えいっ」
刹那、画面はモノクロとなりひび割れた。もちろん、物理的な破壊ではないと理解はしたけれど……
「え」
「あちゃー……リプじゃむずいよねぇ。あたしもスルーだわ〜」
「そ……そん、な…………」
CZとやらの終わりに画面は切り替わり、先ほどまで長らく打ち込んでいた映像に戻ってしまいました。
「ぼ、ボーナスは?」
「ないよぉ?」
さも当然であると、マリンさんはけろっとして打ち始めていました。
「あの、ここからどうすれば」
「もっかいさっきの目指すの」
「天井を⁉︎」
「できれば早めに当てたいよねー。取り返さないとヤバいしぃ」
そうです……入れたお金は当てないと戻ってきません。このまま引き下がるわけには、もういかないのです。
「勝たなきゃ……絶対に……!」
『殺せ! 国を脅かす大罪人を殺すのだ!』
もう誰にも、負けたくない。
負けて全てを失うようなことは……嫌だっ!




