第22話 恐怖ッ、溶ける1万円!
「いろんな絵が動いてますね」
「絵? まぁ絵といえば絵だよね、アニメだし」
マリンさんの後ろを歩きつつ、すますろ──スマスロの通路を歩いて行きます。よく見てみると、私が打っていた台──ノーマルタイプというらしいです──よりも、スマスロの方が圧倒的に多く置かれていますね。
「時代はスマスロだからねぇ、メダルって手ェ汚れるし」
「そういうところも気遣ってくださるんですね、パチ屋さんって」
「ま、それもあるけどね。単純な話、スマスロの方が出るんだ〜」
「私にスロットを教えてくれた方は『10万は要る』って言ってました」
「大袈裟だねぇ……間違いじゃないケド」
人によるのでしょうか……?
聖眼でどの台を見ても派手な光はないみたいです。加護もありますし、とりあえず大丈夫でしょう。
「色々種類はあるんだけどネ、とりあえずこれいっとこっか」
「はいっ!」
茶髪の少年の絵がスロット台下部に描かれた台。私にとって、初めてのスマスロになる。
「お金は普通のスロと同じで入れて、ボタン押したら台のトコに1000円分移るの」
「ホントだ……」
数字の形はちょっと異なりますけど、元の世界と同じだと昨日気づきました。
46と表示されたのが枚数、レバーを動かす前のボタンを押すと、3枚減った。
「おぉ……!」
「気づいたらすぐ無くなっちゃうから気をつけなよぉ?」
勝負開始です!
基本は今までと同じように当たりを目指す……のかな?
「マリンさん、当たりのランプが見当たりませんよ?」
「んぁ? にゃはは、ノーマル機と違って当たりまでのルートが違うからねぇ」
「はぁ……?」
どういうことなんでしょう?
光ったら当たり、聖眼からお告げがあれば当たりというふうに考えていましたが、スマスロは違うようです。
「基本的にポイントを貯めるんだよぉ」
「ポイントを」
「そ! で、ポイントが一定数貯まるごとにCZって状態に入る抽選をするわけ」
「ちゃんすぞーん……それ、当たりじゃないんですか?」
「まだなんだなぁ〜それが」
スロット画面の左下に2桁の数字がある。リールを回すごとに、1ずつ加算されているようです。
「CZに入って、そのCZを突破すると当たり」
「どうやって突破するんですか?」
「なにか小役引くとか、当たりが確定してたりかなー。機種によるねぇ」
…………なんだか道のりが長いような。
今の話を噛み砕くと、当たりの前のCZにはいるまで数字を貯めて、CZに入ったら頑張って当てて、そこでようやく私が経験している大当たり……
レバーを叩いて当たりかハズレか、よりもかなり高度な遊技のようです。
「でも、そこを通せばメダルいっぱいウハウハが待ってるんだぁ〜夢あるでしょ〜?」
「夢…………」
そうだ、お金を貯めてロマンさんと遠征するんです! ちょっとした道のりがなんですか、今の私は、スロットに加護だって使えるんですからっ!
「もちろんポイント一気に貯めるチャンスもあるから毎ゲームも気合込めて打たないとダメだよぉ?」
「了解ですっ」
ひとまずは加護なして、普通に遊んでみましょう。1回転ごとに夢への気持ちを込めて……
込めて……
込めて…………
………………………………
「……………………」
しばらくして……数百回転を表示したスロットは、特に何も起きずに平和な絵が映っていました。
いえ、何も起きずにというのは失礼ですね。
よくわかりませんが何か脅威からの襲撃は受けていたんです。でも何回転かしてすぐまた戻っちゃいました。
そして……貸出ボタンを押しても反応がなくなりました。1万円がなくなってしまったのです。
「マリンさん、このスロット故障してます⁉︎」
「ど、どうしたの⁉︎」
「1万円のお金を入れても何も当たらないんです」
「そりゃそうだよぉ、スマスロなんだもん」
元の世界と物価が異なるのは前提として。
ロマンさんとお買い物に行った時、1万円あればお昼ごはんが何度も食べられるくらいの金額だということは分りました。
その1万円が、あっという間に溶けてしまいました。
静かに、背筋に寒気が走った気がします。
間一髪、敵の剣が首を掠めた時のような、凍りつく感覚。
「ルヴィちゃんにスロット教えた人も言ってたでしょ? 10万要るってさぁ〜」
「な、なるほど……」
どうやら私は、とんでもない強敵を相手にしているようです。普通に遊ぶなんて緩んだままでは、一瞬で首を落とされてしまいそうです。
失った1万円、このままやすやすと溶かして終わりにするわけには行きません────
全力の加護を、注ぎ込みます。
「神聖なる戦いに臨む者よ、この祝福は汝に勝利をもたらす光なり────!」
「うは、なにこの光っ」
スマスロさん、貴方は倒すべき敵です。
ここから最速で当ててみせますっ!




