第21話 お姉さま、三洋真凛
遠征経験から来た道を記憶するのは得意だったので、パチ屋さんであるキャメロットまでの経路は完璧でした。
「いつ見てもおっきいですねぇ」
白亜の城……パチ屋さんたるキャメロットは今日も朝から続々と車が入っていきます。
おっといけません、私もお店に入ります!
激熱の日ではないそうなので、この前来た時と似たような賑わい。スロット台の並ぶ通路までやってきましたが、ちょっと迷っています。
「どれを打ちましょう……?」
女神の聖眼を起動して通路をゆっくり歩きつつ台を見定める。
初めて来た時に打ったランプの光る台。
赤い花の輝く台。
目押しが大事な台……はこちらのお店には無いようです。どれもピカピカとはしていませんが、加護を使えばそれなりに戦えるはず……でもなんというか、もっと別の刺激が欲しいようなないような。
「あれは……」
ふと、通路の一角にある台が目に入る。
綺麗な絵が映る、すますろという台。打ってみたい気持ちがある反面、今挑むべきかやや迷う。
『戦う必要のない相手に無理に挑まなくてもいいってことさ。ま、ルドヴィカの財布に入ってるおじさんが10人は要るかな』
1万円が10枚……昨日の勝ち分を含めてもそこまではないけれど、半分以上はある。それに、これまでのスロットは1枚なくなる前に当たっていますし、決して惨敗するようなことなんて……
でも腕試ししてみたい気持ちもある。
あぁ、いけない。勇足で痛い目に遭ったこともあるのに、私はなんていけないのでしょう。
「──おんやぁ? どうしました〜?」
唐突に間の抜けた声で話しかけられ、思わず振り向く。
私に似た金色の髪ですが、根本のあたりが黒っぽい。細く整った顔立ちに黒いジャージ。猫さんのような鋭い瞳孔のまま、ひとりのお姉さまが笑っていました。
「ひゃい⁉︎」
「ご、ごめんねぇ⁉︎ 可愛い女の子がひとりでパチ屋にいるなんて有り得ないからさぁ。もしかして彼氏待ち?」
「か、か、かかか彼氏はいないです……!」
「えっ⁉︎ マジでソロ打ち? めっずらしぃ」
そういうお姉さまもお一人のようです。
「昨日まで人に教えてもらいながら打っていたんですが、都合が合わなくてひとりで来ました」
「なるほど。で、スマスロに興味あるの?」
「え?」
「だってあっちの方ずっと見てたし」
「あ」
そんなにすますろを見てしまっていたとは……欲に心を奪われてはしたないです。
「よかったら一緒に打ってみる?」
「いいんですか⁉︎」
「久々に地元戻って来たんだけどさ、ここで会ったのもなんかの縁でしょ〜! スロッターの先輩として教えてあげるよぉ」
「ありがとうございますお姉さま!」
なんて心の優しい人なんでしょう!
ロマンさん達だけではなく、こうして手を差し伸べてもらえるなんて感激です。
「お姉さまだなんて気恥ずかしいなぁ、名前で呼んでよぉ」
「あはは、すみません……私、ルドヴィカ=ヴァレンティと言います」
「のぁ⁉︎ ガチの外国人だったんだ……」
「気軽にルヴィとお呼びください」
「ルヴィちゃんね、りょーかい〜」
お姉さまは子供っぽく笑って見せると、わざとらしく咳払いをひとつ。
「あたしは三洋真凛っていうんだ、ルヴィちゃんよろしくねぇ〜!」
「よろしくお願いします、マリンさん!」
ロマンさんとは別の先輩、失礼のないようにしないとっ!
気持ちのこもった挨拶を返すと、マリンさんの様子がちょっぴり変わりました。なんというか、目を上に向けて、背を逸らした姿勢です。
「んぉ〜金髪美少女たまんねぇ〜ッ!」
「……マリンさん?」
「うぇっほん……なんでもないよぉ、ルヴィちゃん。それじゃ、レッツスマスロぉ〜!」




