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救国の聖女はスロットを打ちたい  作者: ムタムッタ
ビタ押しは聖女の必須スキルです

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第20話 夢は欠片と砕け落ちる


 ロマンさんの家に帰宅して、夕食とお風呂を済ませると、疲労が遅れてやってきた。


「そりゃ打ちっぱなしで目も疲れるだろ。今日はさっさと寝ろよな」


 お布団に沈んで目を閉じると、今日の光景が浮かんだ。


 海を見た。

 果てまで広がる無限の水。この世界は海の方が多いと聞いてさらにびっくり。海魔もいない平和な海だと聞いてまたまたびっくり。


 ひとつ、夢が叶った。


 火に焼かれる前に、一度は夢見た海……それを見ることができた。


「よかったなぁ……海」


『金貯まったら行ってみるのもありだな』

『ふふっ、ひとつ夢ができました』


 また……ロマンさんと────


「って、何を考えてるのっ」


 ロマンさんは行き場のない私を助けてくれた人であって、決して邪な考えなんて…………!


「なくもない、のかな」


 あたらしい世界で、全く知らないことを教えてくれて……私に別の戦いを、スロットを教えてくれたのだから。現に今日も、私は勝利を手に入れた。


 時折ロマンさんは、どこか遠い目でスロットを打つことがある。それがなぜかは、私には分かりません。


 これだけしてもらったのに、私はロマンさんに何もしてあげられていない。それがちょっぴりもどかしく感じる。


「ずっとつきっきりでいてもらうのも、なんだか悪い気がしちゃいます」


 本音を言うと、つきっきりでいてほしいけど…………じゃなくて!


「もっと勝ちたいなぁ」

  

 もっとこの世界のことを知りたい。

 もっとスロットのことを知りたい。

 もっとロマンさんのことを知りたい。

 

「うぅ〜……だからそうじゃないんだってぇ…………‼︎」


 ひとり足をバタバタさせて、悶々とした夜を過ごすことになりました……



 ◇ ◇ ◇



 翌朝、普段の私ならしない大きなあくびをしていると、ロマンさんが食卓にやってきました。


「おはようルヴィ……って、どうした?」

「い、いえ! ちょっと考え事していたら夜更かししてしまって」

「ほどほどにな」


 おじさまとおばさまはお店の準備で既に出払って、ロマンさんと二人きり…………


「あ、そうだ……ルヴィ」

「ひゃい⁉︎」

「ホントにどうした」


 変なことで頭がいっぱいです…………


「悪いんだけど今日ハロワ──まぁ仕事についての所に行く用事があるんだ。ちょっと時間がかかるから一緒に行動できない」

「そうなんですか」


 保険が〜とロマンさんは面倒そうにスマホ(なんだかすごい板)を睨んでいます。


「ルヴィさえ大丈夫ならひとりでキャメロットに行ってもいいぞ」

「いいんですか⁉︎」

「別に家でゆっくりしててもいいけど、暇だろ? 出かけるにしても街ん中はまだあんまり知らないだろうし」

「単独行動ですね! 昨日に続いてうまく戦ってみせます!」


 ある程度のことは教えてもらいましたし、きっと大丈夫です! キャメロットまでの道は覚えていますし。


「用事が終わったら俺も合流するから、よろしくな」

「はいっ!」


 昨日の勝ちでお金もいっぱいになりましたし、安心して打てますし大丈夫です。聖眼も加護も使える、激熱じゃなくても勝ってみせます!


「じゃあロマンさん、おじさま、おばさま、行ってきます」


 新しいジャージに袖を通して出発です!


 数日経ってようやく慣れてきた世界。

 連戦連勝、まるで運命が味方しているような素敵な日々に心が満たされていました。


「今日は何を打ちましょう」


 その心持が慢心だと知るのはその数時間後。

 私の夢は、白亜の城(キャメロット)で呆気なく砕け散りました。


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