第18話 戦士に加護を、スロットに加護を
楽しい。
狙った絵を止めて確実に伸びるメダル数と、スロット台の上部に取り付けられた戦況情報の表──スランプグラフというらしいです──の赤い線が右上に伸びていました。
「自分の実力が確かに影響する……素晴らしい台です」
「フル攻略というか強運で捩じ伏せてるというか」
「実力なんですーっ」
気づけばメダルは4箱。
今日もいっぱい稼いじゃってますね。でも……
「ロマンさんどうですか?」
「うーむ、ハマった」
「はま」
「コノダイゼンゼンアタラナイヨ」
なんで片言なんでしょう……?
ハマるというのは当たらないということみたいです。考えてみれば、私の後に当たってからロマンさんは当たっていませんでした。
「クソダイネクソダイ」
「なんとなく口にしてはいけない言葉な気がします」
「よく分かったな、メーカーが心血を注いで作った台をクソ台なんて言っちゃダメだぞ」
そう言うロマンさんの目は虚になりつつありました。劣勢で押されていた時の騎士様──ダフネ様──もこんな表情をしていましたね……
あれはいつだったか……国に喚ばれて間もない頃かな?
凶悪な魔物を征伐の途中、突然の挟撃に遭って騎士団が半壊した時だった気がする。
血だらけの満身創痍で、銀髪の彼女が剣を握った姿も懐かしい。
『くっ……まさか魔物どもが挟み撃ちを仕掛けてくるとは……ルヴィ、貴方だけは死んでも守ります』
『ダメです! ダフネ様も生きて帰るのです!』
そうそう、そこでより強い奇跡が使えるようになったんでした。私の命を削って、その者に強き力を与える加護の奇跡。
──常勝の加護。
……残った騎士団は凄まじい勢いで魔物を蹴散らして、そのまま帝国周辺の魔物を一掃しちゃったんですよね。おかげで聖女として名前が広がっちゃいました。
そういえば、加護はおまじないも込めて新しいお家にも与えていました。住む者に安寧と健康を、と。よくわからないですけど、頑丈になったんですよね、お家が。
あれ…………もしかして?
「はぁ〜クソ台ぃに感謝〜っとぉ」
「ロマンさん」
「どうしたぁ?」
「スロット台に加護を与えてもいいでしょうか?」
「……それってどうなんの?」
「えーと……奇跡の加護を与えられた者は傷が癒えて一時的にとっても強くなります」
「回復とバフか……」
ロマンさんの台はピカピカしていない。ひょっとしたら、時間で光るものじゃなくても私の加護で────
「戦場に立つ者よ、光あれ────」
略式で唱えちゃいます!
するとどうでしょう……聖眼ははっきりと教えてくれました。ロマンさんの台は、神々しくも激熱だと。
「うぉ、当たった⁉︎」
「やっぱり……スロットも、戦士なんだ……!」
打つ者が戦士ならば、打たれる者もまた戦士。ならここは、私にとって全てが加護の対象────!
「おほっ、奇跡ハンパねぇな!」
「じゃあ私の台も……戦場に立つ者よ、光あれ…………あれ?」
ロマンさんと同じように、加護を与えようとしたけれど、何も起きない。聖眼はそのままだし、ロマンさんの台も正常に動いている。
…………自分の台に加護は付与されなかった。
「1台、だけ?」
◇ ◇ ◇
キリのいいところで今日のスロットは終了。交換を終えて、私のお財布にはまたおじさんの紙幣が増えました。
「いやー3万溶けた時は終わったと思ったけど2万5千も出たら加護様様よ」
「…………」
ロマンさんの計算は私を気遣ってのものだと思います。勝ちじゃないです。
加護の精度が全然ダメだった。
付与した者には必勝の未来が待っているはずなのに……どうして。
失敗した。
聖女として役に立てなかった。
よくしてもらっておいて、私は──
「なんだよ〜5万くらい勝っといて不満かぁ?」
「そんなことないです! とっても嬉しいですよ……ただ、ロマンさんを勝たせられなくて……」
「あ? なんだそんなことかよ」
意外というか、ロマンさんはけろっとした顔で歯を見せた。
「3万使って2万5千も返ってくりゃ実質勝ちだよ」
「実質?」
「そう、実質勝ち。俺は負けてない。俺が負けてないと思ったら負けじゃないの」
1万以内は誤差だよ誤差、とロマンさんは笑い飛ばした。その笑顔に……なんだかホッとした。
「奇跡の方はあれだ、スロットにやるのが初めてだからじゃねーか多分」
「ふふ……お気遣いありがとうございます」
私自身、激熱は体験できませんでしたけど、また一歩前進です!




