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救国の聖女はスロットを打ちたい  作者: ムタムッタ
第2章 聖眼とスロット

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第14話 当たりに囚われた乙女


 お買い物から帰ってきて、ひとまず部屋でひとやすみ。スロットでの聖眼はそこまでだけど、この世界を色々見てちょっぴり疲れちゃいました。


「すごいなぁ……この世界」


 技術は発達してて、飢えている人を見かけない(この国にいないだけかもしれないけど)。むしろ食べ物もあって、娯楽も充実している。しかしなにより────


 あのハナの赤い光が、頭から離れない。


 目を閉じると脳裏に『ボーナス』中に流れた音楽と、あのチカチカ点滅する光源が忘れられない。


「うぅ〜打ちたい…………!」


 初めての感覚。

 祈りに集中することや、鍛錬で精神を研ぎ澄ませることはあったけれど、スロットは別。血の流れない、そして目に見える勝利は快感。気づけば虚空のボタンを押していた。


「あ」


 なんて煩悩に塗れたことかとちょっぴり恥じたけれど、考えてみれば恥じる必要などない。楽しいと思ったことを、純粋に楽しいと思ってお小言を言われる筋合いもないのですから!


「そう……私はただのルドヴィカなんだ」


 誰かを救うなんてこと、私は…………

 見慣れない天井をぼうっと見ていると、扉が乱暴にノックされた。


「ルヴィ、また親父が腰やらかしちまった! 奇跡使ってくれないか⁉︎」

「は、はいっ!」


 どうやらおじさまは、食材の入った箱を持ち上げようとして腰を痛めたようでした。


「いやー悪いねルヴィちゃん!」

「この人ったらもう、ありがとねぇルヴィちゃん」

「い、いえいえ! これくらいいつでも頼ってください」


 やっぱり頼られたら思わず動いちゃいますね。癖は抜けない……けど、気分は良いです。


「あ、そうだルヴィ。明日行くパチ屋のことなんだが……ん?」


 ぶぅ〜ん、と砂粒のような黒いものが視界を過ぎる。この世界にも羽虫はちゃんといるらしい。


「まだ夏は先だってのにィ」

「蚊取り線香あったかしら」


 かとりせんこう? を探しに2人とも消えていく…………どうしておじさまもおばさまも早く捕まえないんだろう?


「鬱陶しいなぁ……で、ルヴィ。明日のパチ屋はキャメロットじゃなくて──」

「──主よ、お許しください」


 ロマンさんの顔面に虫が近寄った瞬間、中指と人差し指で虫を切る。


「いっ⁉︎」

「……罪なき命を奪うことを」


 虫は真っ二つに両断され、床に力なく落ちた。毒や病をもっていてたら大事ですからね、早めの処理も必要です。最後に祈りましょう。


「ふぅ……毎度心が痛みます」

「しゅ…………手刀…………ッ⁉︎」

「叩くと手に体液が付いたりしますからね、ちょっとした知恵です」

「だからって蚊を指で切断する人間はいないぞ……?」


 もしかして私、なにかやってしまいましたか?


「いや、でもこれは…………」

「ロマンさん?」


 虫をティッシュで包んで捨てながら、ロマンさんがぶつぶつと呟いた。


「ルヴィ、動いているものを追視するのって得意か?」

「え? まぁ、人並みには、ですかね」


 飛んでくる矢を掴めないと、聖女は務まりませんでしたからね! 動くものを目で捉えるのは鍛錬したものです。


「ふむ……一考の余地ありだな」

「何か作戦でも?」

「あぁ……明日はキャメロットじゃなくて別の店にいく。昼に話してたアツい日って奴だ」

「激熱ですね⁉︎」

「開店前に行かないと良い台すら座れないからな。今日はきっちり休んでくれ」

「わかりました!」


 激熱、楽しみです……!


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