第10話 パチ屋にハナを咲かせましょう
「この辺りはピカピカです」
「低設定でも当たりやすい台の真実ってか」
ルドヴィカは突然目を光り出したかと思ったら不思議なことを言った。調子の良い人工物は輝いていると。
彼女が示した、台の左右にハイビスカスのランプがついたスロット台を見ても、自分には光っているようにはとても。むしろ返り討ちにされた打ち手の怨嗟が聞こえる。
「ハナが咲くか俺が泣くか……」
しかし昨日の奇跡は真実。スロットを打つ者ならば奇跡の一つ信じずしてどうする。
「……あれ?」
「どうかしたか?」
「そういえばコインがありません⁉︎」
そういやサンドの話してなかったわ。
「右上にお金入れるとこがあってな、そこにまず紙の金入れて、『貸出』ってとこ押すのよ」
「おぉ、ジャラジャラ出てきました」
まだ2日目、ルドヴィカは慣れない手つきでメダルを握りつつ台へ投入していく。
「では!」
早速1回転目。リールはグルっと回り始める。
今回の台も当たりの告知は簡単で、台の左右にあるハイビスカスのランプが光れば当たりだ。
……さすがに1ゲーム目で当たるお座り1発はなかったようだが。
「予習の通りです……!」
「普通はこうなんだよ」
が、女神の聖眼とやらの効果は本物のようで……ルドヴィカより先に、俺の台のハナがチカチカと赤く点灯した。
「24回転目……早いなぁ」
「おめでとうございますっ!」
あぁ、他人の大当たりを祝福できるなど、なんて彼女が汚れていないことか……異世界少女の拍手を噛み締めつつ大当たり図柄の7を狙う。
7 7 ➖
……レギュラーボーナスである。
「うーん」
「大当たりじゃないんですか?」
「大当たり、喜びは小さく……みたいな」
スロットの大当たりにはビッグボーナスとレギュラーボーナスがある。スリーセブンの当たりは良い当たり、77に他の図柄の揃う当たりは嬉しくない当たり。
理由は単純で、当たりの配当に差がある。
この台で言えば、ビッグボーナスは約260枚、レギュラーボーナスは約120枚。ちなみにメダル1枚あたり20円。
さて良い子の諸君、当たりの枚数に20円を掛けてくれるかな? 同じ大当たりでも枚数に差が出れば、いくら金を使ったかで話が変わるわけだ。
「なるほど……7揃いの当たりをいっぱい引く方がお金をもらえるんですね!」
「金額相当の景品ね。景品」
まー使った金が1000円だから今やめれば勝ちではあるんだけども。やはりスロット沼につかる人間としてビッグボーナスはみたいじゃない?
「わわっ、光りました!」
「これが聖眼の効果……」
リールの回転を追視しつつ、ルドヴィカはボタンを押していく。白色の7によるスリーセブン、ビッグボーナスだ。
「はぁぁぁ〜綺麗…………!」
……気のせいだろうか。
ボーナス図柄を眺めるルドヴィカが、なんだか輝いている気がする。オーラというか、闘気というか……見たことないけど。
心なしか聖眼とやらも一段と光を強くしている。マジで眩しくないのだろうか。
「まるで私の脳内にも、この赤い花が咲いたみたいな刺激……」
「…………」
恍惚とした表情をスロット台に向けてルドヴィカは口角を上げる。側からみたらヤバい子にも見えなくない。
ボーナスを消化し終えると、トリップ状態から戻ってきた。
「あ、ピカピカもおさまっちゃいました」
「1回だけか」
「ロマンさんのもですね」
「それを早く言えよ⁉︎」
ボーナス分ほぼ溶けちゃったよ!
「ご、ごめんなさい。大当たりで何も見えなくなってしまってて、つい」
「それはそれで大丈夫なのか」
とはいえ、まだほぼ振り出し。気を取り直して打てば良いのだ。
新たに貸し出しボタンを押そうとすると、聖眼の少女はキョロキョロ周囲を見渡した。
「あ、あれ?」
「お次はなんだ?」
「さっきまでピカピカしてなかった台が、輝いています……これって……!」
調子の良い台、悪い台が入れ替わっている。
そうか……これは波だ!
乗るしかない、このビッグウェーブ。
「ルヴィ、メダルを箱に詰めろ!」
「は、はいっ」
「聖眼でここにハナを咲かせようじゃねぇの〜!」
花咲か爺さんならぬ、ハナ咲か異世界少女である。




