第8話 エルミナ先生
1人の女子生徒はこちらに近づくと会釈をした。
私も会釈をする。
「保護官さんって学校にたまに来ていませんか。」
「あぁ、やっぱり気が付いていたか。実は私は学校の教師寮で暮らさせてもらっていてね。
週に1回はエルミナ先生の研究のサポートをさせてもらっているんだ。」
「え、あのエルミナ先生ですか。」
「そうだよ。いい先生だよね。」
「え?ん?どうなんでしょうか。クラスを受け持っている人ではないので関りはほとんどないので知りませんが。」
「エルミナ先生は授業とかしているの?」
「んー。私は学年が違うのでほとんど関りがないですが研究紹介という学内の研究員の人が研究内容を紹介する授業があって。。。それを聞いたことがあるくらいですね。」
「そういう授業があるのか、やっぱり異世界について話していました?」
「え、なんで異世界なんですか?」
「だってエルミナ先生は異世界の研究をしているから研究紹介なら異世界のことを話すんじゃないかと。」
「ええと、エルミナ先生の専門は異世界分野ではないですね。異世界の研究って聞いたことないです。」
そういうと彼女は振り返り「みんなー」と声をかけた。
4人の生徒がこちらに歩いてきた。
「エルミナ先生の専門って異世界の研究じゃないよね?」
「んー、詳しくないからわかんないけどそれではなかったはず。」
「アプリで見たらいいんじゃない。」
生徒がわいわいと話し合っている。
1人が握っていたスマホで何かのアプリを開く。
「アプリでわかるもんなの?」
素朴な疑問を聞いてみた。
「学院専用のアプリがありまして、このアプリに授業表や出席確認、遅刻早退欠席の連絡ができたりするんです。
生徒同士の連絡にも使われていたりするね。」
そう言ってスマホの画面を見せてくれた。
ハイテクだな。こんなアプリが今はあるのか。
関心していると別の生徒が「あった」と声を上げた。
「やっぱり違うよね。」
生徒同士で頷き合っている。
そして別の生徒が教員紹介ページを見してくれた。
氏名:エルカ=エルミナ 研究分野:精神干渉
と書かれていた。
「精神干渉?」
いやな汗が背筋を流れるのを感じた。
「精神干渉とはですね。人の脳に影響を与えて記憶を消したり、改変したりはたまた人格を変えてしまう研究のことです。」
「そうそう。その発表聞いた時、マッドサイエンティストだーって教室でざわついている人いたよね。
まぁエルミナ先生の雰囲気と合っているよね、どこか怪しげな雰囲気っていうの?」
「本当にエルミナ先生の研究のこと知らなかったんですか?」
「あぁ。初めて知ったよ。」
生徒たちが不審気な様子でこちらを見る。
さっきまでの心地よい感じが吹っ飛び今は寒気すらする。
「それでエルミナ先生とはどんな会話をしているんですか。」
「どんなって、私が前にいた世界での話だ。どんな国だったのかとかね。」
「保護官さん、異世界から来たんですか?」
それはどこか馬鹿にしているような聞き方だった。
他の生徒たちもクスクスと笑っている。
「あぁ。2か月ほど前にね。気が付いたら学院の外廊下で倒れていたんだよ。
警備員に保護されて・・・」
その後の言葉を言おうとして続きが出てこなかった。
あの時駆けつけてくれた人は誰だったか。
社長とエルミナ先生だった。
「・・・エルミナ先生がたまたま学内に居てね。守衛室に来てくれたんだ。」
生徒たちは一応に怪しそうな顔になる。
私もそうだ。
うまくいきすぎている。
「失礼ですが異世界研究というのは聞いたことがないですね。」
「ネットで調べてみてもそういう情報は出てこないですね。」
「そもそも異世界とか本当にあるの?って感じだしー。」
生徒たちがスマホを操作して調べている。
ネットで調べる、こんな単純なことをどうしてしていなかったのか。
傍に専門家がいて質問疑問に答えてくれる、そんな状態だったから自分で調べるということをしていなかった。
「異世界から来たとか、異世界に行ってきたとかネットにはそういうことを書いている人もいますがどれも承認欲求を拗らせているパターンですね。」
「本当なら全国ニュースになっていてもおかしくないレベル。」
「つーか、あのマッドサイエンティストに頭いじられったってオチじゃね?」
生徒たちの声に意識が遠くなりそうだった。
まぁまぁみんな落ち着いてと一人の生徒が全体に話しかける。
「すみません。いろいろ言ってしまって。」
「・・・あぁ・・・別に構わない・・・」
何て返答してよいかわからずテキトーに返した。
「確認するなら先生の研究室に行けばいいんだよ。」
「そうだね。確か旧校舎の2階奥だったはず。」
そう言って彼らは専用アプリから旧校舎のマップを見してくれた。
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