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異世界に転移したので今度は魔獣保護官として生きていく  作者: オツタロ
1章 新生活

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第5話 休日

喫茶店の窓越しにショッピングモール内を見ているとひとりの女性と目があった。

相手の女性が近づいてきた。

エルミナ先生だ。

長い髪をなびかせて落ち着いた歩きでこちらに近づいてくる。

窓越しに会釈をして彼女は店内に入ってきた。

「こんなところで会うなんて偶然ですね。ご一緒してもいいですか。」

と言い、私はどうぞと返事をした。

彼女は向かいの席に座りウェイトレスに紅茶を注文した。


「このあたりで休日を過ごすとなるとここくらいしかないですよね。

私も休日になるとここにきて1日過ごしたりしています。」

「私は初めて来ましたが初めて来たって感じではないって感じですね。どこも似たような作りです。」

彼女は微笑むとこちらをじっと見つめていた。


(似ている。)

以前の、仕事が忙しくなる前こうしてよくデートをしていた。

二人で他愛の会話をして過ごす、今にしても思えばとても幸せな日々だった。

彼女の名前は柏木エル。

エルとエルミナ、偶然だろうか。

いやいやエルミナは姓だから名前は別にあるか。

「先生って名前はなんというのでしょうか。」

「え?私の名前ですか。エルカ=エルミナと言います。」

先生はどこか恥ずかしそうに答えてくれた。


エルの髪型はショートヘアだった。詳しい髪型の名前まで知らないが肩くらいの長さだ。

髪で印象が違うような気がするが話していると当時の彼女と重なり懐かしさ胸にこみあげてくる。

しかし本人を目の前にして失礼だがエルミナさんとは10歳は年齢が違うだろう。

エルは当時25歳。

エルミナ先生がいくら美人とはいえその差は必ずある。先生も見た目なら20代で通じるが。

考え事をしていて視線がずっと彼女を見ていることに気が付かなかった。

意識が目の前に戻ってきて彼女と視線が合ったのがとても恥ずかしく感じた。

コーヒーを啜って視線をずらした。

「先生はここで何かの買い物ですか。」

「ほぼウィンドウショッピングですね。

あとは食料品の買い物です。」

「私も帰りに食料品の買い出しをする予定です。」


先生が私の読んでいた本について話を始めた。

先生は魔法学院の卒業生で卒業後そのまま学院の研究員として働いているという。

学院の生徒は由緒ある魔法使いの生徒も多く卒業すると家督を継ぐために家に戻るという。

大戦に負けて土地などの財産も多くが没収された。

多くが一般人として生きている中でも再び財産を築き資産家になっている家庭もある。

大学の進学実績が低いということで心配していたが魔法学校では習わない家独自の魔法というものを習得するために新たな訓練をするのだという。

魔法学院に通うほどの熱心な魔法使いの家は世間の常識とは違う物差しでは測れない。


「先生も有名な魔法の家系なのですか。」

彼女は首を横に振った。

「私は一般人として暮らす魔法使いの家ですね。

その分家独自の縛りがないので自分の興味がある分野を研究することができています。

魔法使いとして一人前になる、一人前と周りから認められるのは”特化型”になる必要があります。

火属性や水属性の魔法を極めるとかですね。

でもその分野に特化してしまうとほかの分野の魔法が使えなくなったりとても弱くなったりするんです。

魔法はイメージによって発現するので特定の分野に特化するとほかの分野のイメージがしづらくなるのだと言われています。」

「魔法って万能ではないんですね。」

「そうですね。私も最初は魔法って万能で空を飛んだり、水も炎もいろんな技を繰り出したり、変身できると思っていました。

知れば知るほど万能とは程遠い存在なのだと実感しましたね。」

はぁと彼女はため息をついた。

やはりそういう感想になるのだな。私もこの世界に抱いている思いと同じだ。


そのまま彼女と一緒に昼ご飯を食べて一緒に食料品の買い物を済ませた。

ショッピングセンターを出て家に帰ろうと道を歩いているが彼女も同じ方向なのかずっと隣を歩いていた。

「先生もこちらの方面なんですか。それとも何か別の用事があったりします?」

「あー、マエダさんって学院の寮に住んでいるんですよね。」

「そうですね。教師でもないのに住まわせてもらっているのは恐縮です。」

「実は私も教師寮に住んでいまして。」

「そうだったんですか。」

驚いて思わず体ごと彼女の方を向いてしまう。

「なので私も今帰宅しているところです。」

「まさか同じ建物に住んでいたとは。」

二人して学院に戻り寮のエントランスのところで別れた。


家に帰りいつものように過ごして日記を書いて床に就く。

夢で元の世界の恋人エルと喫茶店でただおしゃべりするだけの夢を見た。


「ねぇ、話聞いてる?」

「あーごめん。ぼーっとしていた。」

「それでねケンスケさんが今やっているプロジェクトが終わったら少し時間が空くじゃない?

そしたらさ、二人でどこかに旅行に行かない?

温泉にでも漬かってゆっくりしようよ。」

「温泉かー、いいね。

旅館でゆっくりしたいね。」

私は背もたれに預けていた背中を伸ばした。

小気味よく背骨からぽきぽきと音がする。

「最近割り当てられたプロジェクトは同僚が急に辞めてしまって急遽私が引き継ぐことになったんだ。

でも資料を見ると結構前からヤバかったみたい。

プロジェクトの進捗表もプロジェクトメンバーと共有しているものと上司の進捗会議で見せるもので二重に作って偽装していたようで。

関係者には”なんとかするので待っていてください”と口止めをしていたそうだ。」

「ひどい。。。それってケンスケさんがやらないといけないことなの?

他の人は手伝ってくれないの?」

「んー、プロジェクトマネージャーって結構ワンマンプレイなところがあってね。。。

全体を俯瞰してみて必要に応じてメンバー間の調整とかメンバーでない他の業務担当者と調整とかが多いからね。

人数を増やしたらうまく回るかと言えばそうでもない、それどころか連絡のやり取りとか承認ルートが複雑になったりするからデメリットの方が大きいかな。」

エルはどうも歯切れが悪そうな顔をしている。

納得したいが納得したくないという顔つきだ。

私の方は疲れているのか口が重たくなった。

この時期は休日もなく文字通り毎日会社に行っていた。この日も会社に行った帰りのはずだ。

彼女とずっと会えていなくて無理やり仕事を切り上げて時間を作ったのだ。

会えた嬉しさと同じくらい疲れもたまっていた。

「どうしたの?ケンスケさん?大丈夫?」

あー大丈夫、あれ声がでないな。

そういえばこれが最後のデートになったんだった。

それからだんだんと連絡の頻度が少なくなっていって最後にはメッセージが見ても見るのはその日の最後で返信もしなくなっていたな。

彼女から来た最後のメッセージはなんだったっけと思っていると夢から覚めてしまった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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